水谷 元雄 理事長、舘野 友美 院長の独自取材記事
水谷医院
(さいたま市浦和区/浦和駅)
最終更新日:2025/01/15

浦和駅から徒歩10分の「水谷医院」は、1947年に開業した歴史ある医院。水谷元雄理事長が父から引き継ぎ、2024年6月に新たに院長に就任したのは娘の舘野友美院長。女性医師としての利点を診療に生かした院長と長く地域の診療を担った理事長とで、今では親子孫の3代、中には4代にわたって家族から相談される、地域に根づいたクリニックとして知られる。患者が相談しやすいクリニックをめざし、患者の訴えに耳を傾け、丁寧に診療。場合によっては適切な専門医療機関を紹介する開業医の役割を重んじる。2人の専門はともに消化器。胃の内視鏡検査では楽に検査が受けられるという経鼻内視鏡を採用し、画像処理に優れた先進的な機器を備える。「地域の健康に役立ちたい」と声をそろえる2人に診療への思いや取り組みについて聞いた。
(取材日2019年8月19日/更新日2024年12月12日)
開業医として大切なのは、患者を怒らないこと
歴史のあるクリニックだと聞きました。成り立ちや現在の患者層についてお聞かせください。

【水谷理事長】当院は1947年に開院。戦後間もなく父がこの地で開き、私が副院長として勤務し始めたのが1986年の頃。父が既に高齢だったこともあり、1993年に医療法人化と同時に代替わりしました。娘の友美が加わったのは2017年の春で、現在は医師2人の体制で診療しています。駅から少し離れていることもあり、患者さんはやはり近くにお住まいの方が多いですね。当院には車6台分を停められる駐車場があるので、中にはお子さんなどを連れて車で来院される方もいらっしゃいます。長く続いているクリニックですから、親子、孫の3代、中には4代にわたって通ってくれるご家族も。主訴は主に風邪や腹痛、生活習慣病など。胃の内視鏡検査やピロリ菌の除菌も行っていますから、それらを求める方もいらっしゃいます。
お父さまから院長を継いだ後、どんなクリニックをめざしてこられたのでしょうか。
【水谷理事長】丁寧に診察と検査をして、当院で治療や経過観察ができる人は引き続き対応する。精密検査や手術などが必要な場合は速やかにふさわしい専門医療機関をご紹介する。言ってしまえば当たり前のことですが、双方の見極めをいかに適切に行うかが開業医として最も重要なことだと思います。その意味でさいたま市ではクリニックと病院との連携がうまくできていますね。連携できる病院が年々増えていますし、私が過去に勤務したこともあるさいたま市立病院では、高齢などで体が不自由な患者さんを抱える家族が家を留守にする時など、場合によっては2週間ほどの短期入院を受け入れるなど柔軟に対応してくれます。体が不自由になった患者さんのフォローはクリニックとしても課題で、当院では微力ながら訪問診療も行っています。
診療時に心がけていることを教えてください。

【水谷理事長】開業医として大切なのは患者さんを怒らないこと。私が過去に怒ったことは片手で数えるくらいで、やっぱり怒ると患者さんは大事なことを話してくれなくなるんですよ。気が小さいから怒れないというのもありますが(笑)。それと、長く通ってくれている患者さんだとその人のお仕事やご家族のこともよく存じ上げていますから、雑談も踏まえながら診療を進めることも多いです。私も話しやすいですし、こちらがそう感じているということはきっと患者さんのほうも同じように思ってくれているのではないでしょうか。
画像処理能力の高い内視鏡を導入し、精密な胃の検査を
舘野院長はいかがでしょうか?

【舘野院長】父が言ったことと重複しますが、患者さんが話しやすい雰囲気にしたいですね。自分の悩みを医師に打ち明けることで心の重荷が軽くなり、場合によっては体に出ていた症状までも軽減することがあります。「ここに来るだけで良くなる」と話される方もいるんです。ですから、患者さんの声に真摯に耳を傾ける姿勢を大切にしています。ただ、本格的にこちらに勤めてからまだ日が浅いので、環境の変化に追いついていないのも正直なところ。クリニックでどこまでできるか、どうであれば病院に紹介したほうがいいかの見極めをしっかりできるようにしたいですね。父やスタッフに聞きながら、患者さんのことを知っていく日々です。
新しくなった点もあるそうですね。
【水谷理事長】そうですね。2023年に内視鏡の機器をより先進のものに一新しました。以前より画像処理の性能が高く、食道がんや胃がんをさらに見つけやすくなりました。検査の方法としては鼻から管を入れる経鼻内視鏡検査を採用しています。口から入れると嘔吐反射を起こす人もいますから、経鼻のほうが比較的楽なんですね。また高齢の患者さんも増えてきましたので入口の扉を手動のものから自動ドアにして負担を軽くしたり、より検査の精度を上げるためにレントゲンも新しくAI診断支援機能搭載の機器を導入しました。外壁も新しく塗装を行いましたのでクリニックが新しくなったと感じる患者さんもいらっしゃるのではないかと思います。これからも地域の方の健康を守っていくために取り入れられるものは取り入れていこうと思っています。
医師としてのお互いの魅力についてはどう考えていますか?

【水谷理事長】先端の医療的な知識を持っていること、それに決断力が高いこと。娘は子どもの頃から自分で物事を決めるほうで、学校のグループでもリーダー役だったことが多かったように思います。医師としても迷った時の判断が優れていると思いますし、クリニックをまとめるのも向いているんじゃないでしょうか。
【舘野院長】子どもの頃は患者さんやスタッフから「先生、先生」と慕われていて、きっと頼りがいのある医者なんだろうと思っていたことを覚えています。実際に医師として見るようになっても同様で、診療が丁寧。手抜きをせず、しっかりと患者さんの話を聞いて診察していることが信頼関係を結べるポイントなのかなと。真似したいですね。
相談しやすいクリニックであることが最も大事
お二人はそれぞれ、なぜ医師を志したのですか?

【水谷理事長】父の背中を見ていたことが大きかったですね。当時から、そして今もそうですが、自宅が診療所に併設されていて、母も診療所で事務の仕事をしていました。家庭の中が医療しかなかったので、医療以外の道を考えづらかったのです。それに、体の良くなった患者さんからお礼を言われる父の姿を見て、医師の仕事に良い印象を持っていました。
【舘野先生】私も父の動機と似ていて、小学校の頃からクリニックの手伝いをしていましたから医療が身近でした。そのまま自然にというのが答えですが、父の代でクリニックがなくなるのが寂しいとも思ったんです。私は4人姉妹の長女で、下の3人は医師ではありません。父も医師になれとは一言も言いませんでしたが、私が医師になって将来的には……との思いもあったんです。
理事長と舘野院長のキャリアがとても似ていますね。印象に残りました。
【水谷理事長】娘は私の大学と病院の後輩なんですよ。岩手医科大学を卒業して、さいたま市立病院に勤めていた。岩手はいい所ですよ。山があり、湖があり、自然が豊か。冬はスキーを楽しめます。
【舘野院長】さいたま市立病院勤務後に岩手の病院に5年勤めてこちらに帰ってきました。岩手の大学に進んだのは父の母校であることも影響していますが、どちらかと言うと一人暮らしがしたかったから(笑)。消化器が専門である点も父と同じです。内視鏡を活用して早期がんの病変部をはぎ取っていくESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を研修中に見て、がんの治療もできる内視鏡の可能性の大きさに魅力を感じたんです。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

【水谷理事長】私は埼玉県医師会の副会長も務めていますから、クリニックの外来患者さんだけでなく、地域の皆さんの健康を考えて医療に取り組んでいきたいです。娘が加わった強みを打ち出していくためにも、将来的には「女性の外来」を設けて、女医ではないと相談しづらいことにもより積極的に対応していきたいですね。また、私も娘も日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・日本消化器病学会消化器病専門医を取得しております。胃と大腸の内視鏡検査ができますので、いずれは大腸の検査も導入したいです。
【舘野院長】より一層、相談しやすいクリニックにしていきたいです。具合がすごく悪くなくても、違和感の原因を知りたかったり、健診を受けたかったりする時に利用されるような。やっぱり来院してもらわないと何が悪いかはわからないので、まずは来院しやすいことが最も大切だと思います。