齋藤 竜太郎 院長の独自取材記事
東西医学ビルクリニック
(さいたま市中央区/大宮駅)
最終更新日:2021/10/12

在来線、新幹線、私鉄各線が乗り入れ、駅前には大型の商業施設も林立し、昼夜を問わず多くの人通りでにぎわう大宮駅。駅西口から徒歩10分、喧騒も薄れて落ち着いた街並みの一角にあるのが「東西医学ビルクリニック」だ。院名が示すように、東洋医学と西洋医学を併用した統合医療を実践しているのが特徴。齋藤竜太郎院長は「西洋医学が病気を診る医療だとすれば、東洋医学は患者さん中心の医療」と語り、漢方薬治療を中心に不快な症状の緩和から体質改善、自然治癒力向上などをめざしている。今回は東洋医学の本質から具体的な治療方法についてまで、たっぷりと語ってもらった。
(取材日2015年6月10日)
東洋医学を柱とした統合医療を実践
まずこちらのクリニックの特色をお聞かせください。

東洋医学の考え方を基本とした医療を実践していることです。西洋医学では、病院を受診するとまず検査を行い、肝臓の数値が悪ければ肝臓に対してさらに詳しい検査を行い病名を確定し、その病気の根治に向けて治療を行うのが一般的な流れ。そのため検査結果に異常がなければ、異常なしと診断されがちです。しかしいくら数値が正常でも、何となくだるい、疲れが取れない、不快感がつきまとうといった症状を訴える方は少なくありません。一方、東洋医学の場合、全人的医療やホリスティックといった表現を使いますが、病気よりも、むしろ患者さんの全体を診ることを主眼とします。体質を根本から改善することで不快な症状を取り除くだけでなく、自然治癒力を高めて病気になりにくい体質にしていくことを目的としているのです。当院では必要に応じて西洋医学的手法と併用しながら、漢方治療を中心とした東洋医学的アプローチを実践しています。
東洋医学と西洋医学ではアプローチの仕方が違うのですね。
同じように肝機能障害と診断されたAさんとBさんがいたとします。西洋医学においては同じ病気で状態や症状も似通った症例であれば、細かい体質や性質の違いにはこだわらず、その病気に対して効果的な薬を両者に同じように処方するのが基本です。一方、東洋医学ではAさんとBさんでは体質はもちろん、物の考え方や性格、生活習慣まで違うということを総合的に勘案し、個々に最適な漢方薬を処方します。さらに大きな違いとして、西洋医学が病気に対して直接的な治療を行うのに対し、東洋医学では血行を良くする、むくみを取るといった間接的アプローチの結果として症状の軽減を図ります。つまり西洋医学の目的は、医療の力で病気を治癒させること。東洋医学は病気の治癒をめざすという点は西洋医学と同じですが、あくまで主役は患者さんであり、体質改善や自然治癒力を高めることで患者さんの本来持つ力を引き出し、病気を改善していくものなのです。
開業当初から統合医療を実践されているのですか?

30年ほど前、日本ではまだ漢方薬を用いた治療が今ほど普及していない時代に、父は周囲から「お前は医者を辞めるつもりなのか」とまで言われながら、漢方治療を目的とした「齋藤医院」を大宮市内に開業しました。それが当院の始まりです。その後1995年に現在地に移転し、このクリニックを立ち上げました。早くから東洋医学を柱とした治療を行ってきた父の意思を引き継ぎ、2005年から私が院長として診療にあたっています。
内科、皮膚科から婦人科、神経内科まで幅広く対応
現在の診療内容を教えてください。

統合医療を実践している分、カバーする範囲が広くなり、現在は内科、皮膚科、婦人科、神経内科、アレルギー科、リハビリテーション科、そして私の専門分野である整形外科の治療も行っています。症例として多いのは、整形外科では脊柱管狭窄症や変形性関節症、皮膚科ではアトピー性皮膚炎、婦人科では月経困難症や更年期障害、不妊症、そして心療内科ではうつ病や不眠症、不安障害などですね。当院の名称は「東西医学ビルクリニック」となっていますが、ビル1階には東西医学ビル若若クリニックがあり、当院と連携して診療を行っています。また4階には有資格者による鍼灸や整体などを受けられるスペースを設けており、鍼灸などが適していると判断した患者さんは、こちらで鍼灸を受けられる体制を整えています。
現在の患者層は?
本当に幅広い患者さんに来ていただいています。地元にお住まいの方が中心ですが、大宮は東北や北信越方面へと伸びる新幹線も乗り入れていますから、遠くは新潟からも患者さんがいらっしゃいます。症状としては慢性疾患を抱えている方が多く、痛みやだるさといった症状のコントロールのために通われている方が多いです。さらに、アトピー性皮膚炎で可能な限りステロイド剤の使用を控えたい、うつ病などの治療で服用されている抗精神病薬を減らしたいといったように、化学合成薬だけに頼らない治療を受けたいと希望される方もよく来院されます。また薬を服用すると発疹やかゆみに襲われる薬疹に代表されるように、化学合成薬に対してアレルギーのある方が漢方薬での治療を希望されて受診される場合もあります。
実際の診療の流れを教えていただけますか?

東洋医学では患者さんの性格や気質、生活習慣などを勘案しながら治療にあたるので、まずはじっくりと患者さんのお話を聞かせていただくことから診療が始まります。もちろん初診時のお話だけで判断するのではなく、2回、3回と診察を重ねる中で現在患者さんが置かれている状況を判断し、さらに今どんな症状で一番困っているのかを伺いながら漢方薬の処方を中心とした具体的な治療に入っていきます。当院にいらっしゃる患者さんの場合、事前に検査などを重ねて病名が明らかになっている方も多いので、西洋医学的な検査は必ずしも必須ではありませんが、必要に応じて行う場合もあります。
より多くの人に、東洋医学の有用性を知ってほしい
漢方薬治療について、もう少し具体的に教えていただけますか。

生薬を煮出した煎じ薬を除き、実は140種類以上の漢方薬に健康保険が適用されます。そして気になる副作用は、一般的な化学合成薬と比較すると発生確率は低いといわれています。ただ、その方の体質との兼ね合いや、化学合成薬との飲み合わせという問題もあります。今は漢方成分を含む市販薬が薬局で手に入りますが、やはり専門医師の指導のもとでご自分の体質に合ったものを服用することが、より高い効果、副作用などのリスク軽減につながるでしょう。一般的に漢方薬は効果が表れるまでに時間がかかると考えられていますが、風邪や花粉症などに対しては鼻づまりや発熱といった急性の症状を抑制するといった短期的な対症療法薬もあります。ただ、東洋医学的アプローチでは、並行して自然治癒力を高め、体質そのものを改善する治療を行うため、継続して服用していただく場合が多いですね。
医師になったのは、やはりお父さまの影響でしょうか。
高校生の頃は夢多き少年で(笑)。獣医になりたいな、農業もしたい、考古学者もいいなと思い、大学は医学部以外の学部も受験したんです。ただ、やはり父の影響でしょうか。小さい頃から自分自身、病気のときには漢方薬を服用していましたし、常に身近な存在だったこともあり、最終的には医学の道を選びました。大学時代は整形外科を専攻していたのですが、その頃からここで診療を手伝いながら多くの方に東洋医学について教えていただいていました。
先生ご自身のストレス解消法は?
元気という字は気が元となっていると書き表すことでもわかるように、東洋医学では気というものを非常に重要視します。私のストレス発散法も、まさに気を変える、つまり気分転換が基本ですね。友人たちと食事を楽しんだり、体を動かして気を発散させたり、野球観戦も楽しみの一つです。今は休日などはもっぱら子どもと遊ぶことで気分転換しています。
最後に読者の方にアドバイスをお願いします。

検査の数値には表れないけれど、何となく体調が優れない、やる気が湧かない、病気そのものより痛み、吐き気といった周辺症状に苦しめられている、また検査をしても特定の原因がないにもかかわらずなかなか子宝に恵まれないといった場合などを含め、今まで何件も病院を回ったけれども一向に症状が改善しない、つまりは西洋医学の守備範囲からこぼれた部分で苦しんでいる方は少なくないと思います。そうした場合には、東洋医学的アプローチで治療をするという選択肢もあることを一人でも多くの方に知っていただきたいですね。