田口 彰則 院長の独自取材記事
島田医院
(さいたま市中央区/与野本町駅)
最終更新日:2026/07/24
「無事に赤ちゃんが家族と帰っていただくまでが、産科の仕事だと思っています」そう穏やかに語る田口彰則院長。1913年の開業以来、100年以上にわたり地域に寄り添い続けてきた「島田医院」の4代目として、父から継承した医院を守りながら、安心・安全なお産と女性の生涯に寄り添う医療をめざしている。妊娠・出産だけでなく、子どもの成長や女性の健康を支え続ける同院。地域に根差した産婦人科の医師として、命と家族に寄り添い続ける田口院長にその思いを聞いた。
(取材日2026年6月25日)
未来へつなぐ産婦人科として地域のお産を守り続ける
島田医院の開業から現在までの歩みについてお聞きします。

島田医院は、大正時代に曽祖父が開業したのが始まりです。「島田医院なのに田口先生なのはなぜ?」とよく聞かれるのですが、もともと島田姓だった曽祖父が医院を開き、その後は代々女系で受け継がれてきたため、名字は変わっても院名だけが残ったのです。母は薬剤師で、父方も医師が多く、医療が身近な環境で育ちました。父は約40年前に当院での産婦人科の診療をスタートさせ、地域のお産を支える側に。私は最初から後を継ぐつもりだったわけではありませんが、産婦人科の医師として経験を積むうちに、ここで医療を提供したいと感じるようになりました。父と二人三脚で診療を続け、2015年に現在の場所へ移転した際に院長を継承しました。祖父母の代から通われている方や、親子3代でご来院くださるご家族も多く、長い歴史と地域とのつながりを実感しています。
地域への思いと、現在の産婦人科医療についてお伺いします。
私は生まれてすぐ埼玉に移り、高校生までこちらで育ったので、ここが地元です。だからこそ、この地域で医療貢献していきたいと考えてきました。少子化が進んでいますし、産科を閉じられる先生のお話を聞くことも増えて、寂しさも感じます。それでも、頼ってくださる患者さんがいる以上、「頑張れるところまでは頑張りたい」という気持ちは変わりません。当院は地域の周産期医療施設の中では小さな部類に入りますが、その分、妊娠初期から出産、産後まで一人の医師が継続して診られます。だからこそ安全なお産を第一に考えながら、リスクがあれば早い段階で基幹病院へご紹介し、必要な医療につなげることも私たちの大切な役割です。地域の先生方と連携し、それぞれの役割を果たすことで、お母さんと赤ちゃんを地域全体で支えていければと思っています。安心して相談できるかかりつけ医として、これからも地域のお産に貢献していきたいです。
大学院で学んだ知識を診療へ生かされてきたのですね。

もともと関連病院で診療をしていたのですが、もう少し深く勉強したいと思い、大学院へ通いながら臨床に携わる日々を送ってきました。私が専門にしてきたのは胎児生理学で、おなかの中で赤ちゃんがどのように発育し、子宮内の環境や病気が成長にどのような影響を与えるのかを研究する分野です。現在も勉強し続けていて、こうした経験は今の診療にも生きています。専門的な視点に基づいた説明や提案ができますので、ご夫婦に寄り添い、納得していただける医療を提供できるよう心がけています。
妊娠から子育てまで寄り添う医療体制づくり
地域の産婦人科だからこその良さ、強みがあるそうですね。

大学病院のように多くの医師が診る体制にも良さがありますが、当院のようなクリニックでは、妊娠初期からお産、産後まで私が一貫して診療しています。その中で患者さんとの関係を築き、不安や疑問にも丁寧にお応えできるのは大きな強みですね。また、良いお産のために、妊婦さんにいくつかご提案をさせていただくこともあります。生活習慣を整えることや、体重を適正に管理すること、日々の体調や気持ちをメモしておくことなどです。大変に感じるかもしれませんが、「妊婦道場に入門した」と思って、退院まで一緒に頑張っていただけたらうれしいですね。何より大切なのは、お母さんと赤ちゃんが安全に出産を迎えることです。その上で、後から振り返った時に「良いお産だったな」と思えるような時間になればいいなと思っています。
スタッフの皆さんとの連携やチーム医療について教えてください。
お産は私一人ではできません。助産師や看護師、事務、清掃、厨房スタッフまで、誰一人欠けても成り立たない仕事です。だからこそ「全員で妊婦さんやご家族を支えていく」という気持ちを大切にしています。大枠の方針はあるものの、患者さんのためになることであれば、現場の判断で柔軟に動けるようにしています。私自身、若い頃は夜中に先輩医師へ相談するのをためらった経験があり、「先生を起こしたら怒られるかな」と思ってしまうことがありました。でも、それでは判断や処置が遅れてしまいます。だから、どれだけ小さなことでもスタッフが気兼ねなく相談し、報告できる雰囲気をつくりたいと思っています。風通しの良い職場であることが、結果として安心・安全な医療につながると考えています。
産前から産後まで切れ目なく支えていく体制なのですね。

開院当初から皮膚科も受け入れていて、現在では叔母が診療を担当しています。赤ちゃんの皮膚トラブルやお母さんの皮膚疾患はもちろん、婦人科と皮膚科のどちらを受診すればいいか迷う症状にも院内で対応できます。皮膚科のみの診療を希望される患者さんも多く、お子さんから大人まで幅広く受け入れているのも特徴です。また、乳児健診や予防接種は、小児科の医師である妻が非常勤で担当しています。もともとは理事長が1ヵ月健診を担っていたのですが、「1ヵ月健診から小児科医に診てもらえると安心」というお声をいただいて、妻が担当することになりました。産科と小児科が連携しながら診療できるので、妊娠・出産だけで終わるのではなく、お子さんの成長まで長く寄り添える体制です。
女性が安心して通える産婦人科をめざして
診療の際に大切にしていることは何ですか?

一番大切にしているのは、患者さんにも病気にも誠実に向き合うことです。目の前の症状だけでなく、その方のこれからの人生も見据えながら治療方針をお話ししたいと思っています。時には負担のかかる検査や治療を提案することもありますが、その理由を丁寧にお伝えし、治療を押しつけるのではなく、一緒に考えながら納得して選択していただくことを大切にしています。一人ひとりに寄り添いたいからこそ、お待たせしてしまうこともありますが、コミュニケーションを大切にしながら診療にあたっています。
安心して出産・受診できる環境づくりについてお聞きします。
ご家族にも出産の喜びを一緒に感じていただきたいと考え、立ち会い分娩を積極的に推奨しています。経腟分娩だけでなく、リスクの少ない帝王切開であれば、パートナーの立ち会いが可能です。また、大切なお母さんと赤ちゃんをお預かりする立場として、院内のセキュリティーにも力を入れています。さらに、産婦人科は妊娠・出産だけではなく、思春期から更年期、老年期まで、女性の健康を支える重要な診療科です。子宮頸がんワクチンや検診をご案内したり、娘さんの受診を勧めたりするなど、婦人科をもっと身近に感じてもらえるよう心がけています。受診に不安がある方にも、一人ひとりに合った診療をご提案し、気軽に相談できる場所でありたいです。
これからの展望と、メッセージをお願いします。

一人ひとりの患者さんと誠実に向き合う姿勢は、これからも変わりません。妊娠・出産だけでなく、思春期から老年期まで、女性の一生に寄り添えるかかりつけ医でありたいと思っています。少子化が進み、地域の産科医療を取り巻く環境は決して平坦ではありませんが、頼ってくださる方がいる限り、安心・安全なお産を支え続けていきたいですね。産科の医師として一番うれしいのは、お母さんと赤ちゃん、そしてご家族が笑顔で退院される瞬間です。お見送りはできるだけ私自身が玄関まで伺うようにし、「ここからが本当のスタートですよ」とお声をかけています。地域の皆さんに長く寄り添い、安心して何でも相談していただけるクリニックであり続けたいと思っています。

