森本 隆介 院長の独自取材記事
森本医院
(さいたま市見沼区/七里駅)
最終更新日:2024/09/11
宇都宮線の東大宮駅と東武野田線の七里駅の2駅が利用できる「森本医院」。院長の森本隆介先生は、日本循環器学会循環器専門医であり、勤務医時代には循環器内科で急性期の患者の診療にあたってきた医師だ。同院の2代目として、先代院長の意思を引き継ぎ、かかりつけ医として地域住民の診療を行っている。建物は開業時から大切にされている一方で、検査機器はホルター心電計やABPI検査機器、超音波検査装置など先進の設備が導入されている。可能な限りどんな患者も断らずに診療する地域のかかりつけ医でありながら、循環器領域としては専門的な医療を提供したいと語る森本院長。控えめながら内に秘めた情熱を感じる院長の医療への思いや、循環器領域の診療など、さまざまな視点から話を聞いた。
(取材日2024年7月25日)
循環器内科として先進の機器を導入
お父さまからクリニックを引き継がれて2年になりますね。
1992年に父が開業し、2022年の4月に私が継承しました。地域のかかりつけ医として診療を行ってきた父の意思をしっかりと引き継ぎ、安心して患者さんが継続して受診できるように努めています。スタッフは先代からの人もいますので、患者さんのことを教えてもらいながら診療にあたっています。私はここへ来る前は海老名総合病院の循環器内科に勤務していたので、継承にあたっては内科疾患全般に加えて、専門である循環器内科を始めました。循環器内科に強みを持ちつつも、ご相談いただいた患者さんはなるべくお断りしないで受け入れられるように心がけています。
循環器は具体的にどの部分の領域を診療するのでしょうか?
心臓を中心とし、冠動脈や大動脈などの血管の病気も診療します。また、心臓疾患自体が高血圧症や脂質異常症、肥満症などの生活習慣病と大きく関わっているので、これらの治療も行っています。勤務医時代は、多くの重症患者さんを診てきました。そのためもっと早く受診をしてくれていたら、重篤な状態にはならなかったのにと感じることもありました。循環器の疾患は通院を続けることが何よりも大事です。自己判断で治療をやめると再発したり、さらに悪い状態になったりすることもあります。当院では患者さんを重症化させないように、しっかりと治療するのが役目だと思っています。私は日本循環器学会循環器専門医の資格も持っていますので、循環器領域については大きな手術が必要な場合を除いて、動悸や胸痛などは当院で解決できると思います。詳しい検査が必要になった時は、疾患によって適切な医療機関を紹介しています。
継承後に新たに導入したものはありますか?
内科疾患全般に加えて、私の専門である循環器内科を始めたため、検査に使用するホルター心電計や、脚と上腕の血圧を同時に測定するABPI検査を行うための機器を導入しました。また最近は先進の超音波検査装置を導入し、さらに精密な検査が見込めます。高齢者の増加に伴って、循環器系の疾患は増加傾向ですが、クリニックレベルでは循環器内科はそれほど多くありません。大きな医療機関に時間をかけて足を運ぶよりも、日頃通っているクリニックで循環器の診療ができれば患者さんの負担も軽減できるかと思います。また、最近では睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査も受けつけています。睡眠時無呼吸症候群は心臓や血管に負担がかかるため、循環器系の疾患の原因にもなります。スクリーニング検査では自宅に送られる検査機器を使ってご自身で測定をしていただくと、その結果を解析機関が分析して、当院にデータが送られるものです。
患者の抱えるどんな思いも引き受けたい
循環器系の病気の改善を図るには、どうすればいいでしょうか。
服薬や食事改善で数値の改善をめざすことが可能です。一方で、症状がないまま進行することも少なくないので、自己判断で放置すると悪化することもあります。そのため定期的な医療機関の受診と家庭での治療が重要になります。生活習慣の改善が必要な場合が多いのですが、急に悪い習慣をすべてやめてくださいと言ってもなかなか続きません。そのため例えば禁煙が必要な場合は徐々に本数を減らしたり、肥満の改善をめざす時は食事のバランスや塩分を少しずつ見直したり、何よりも継続することが大切だと思っています。また診察室で測る「診察室血圧」に加えて、自宅で測る「家庭血圧」も重要です。一日の中でも時間帯や季節によって血圧は変わるので、血圧を測る習慣がとても大事ですね。当院でも気が向いたらすぐに測れるように待合室に血圧計を設置しています。
患者さんと接している中で大事にしていることは何ですか?
来院する患者さんは何かしらの思いを抱えて、当院にいらしています。具体的な症状だけでなく、病気に対する不安や疑問など、どんなものであれ、私たちを頼って来てくださっているので、なるべくその思いに応えたいと思っています。一人ひとりが抱えている悩みや疑問を、医療者の立場から解決に導くことが大事です。そこは患者さんの気持ちを第一に考えるようにしています。今は私が検査や処置を1人で行っています。その分、患者さんと接している時間は長く、話すことも多いので、その中から患者さんが望んでいることをくみ取るようにしています。
受診の目安や初期症状はあるのでしょうか。
生活習慣病は普段は異変がなく、ある時に急激に症状が出ます。そうするとみるみるうちにQOLが下がってしまうのです。そのためどこも痛まないから大丈夫と放っておかないで、定期的な健康診断が大事です。健康診断で再検査になったら、必ず受診をしてほしいです。血圧や血糖値などの数値が悪いまま放置すると、動脈硬化につながり、ある瞬間に大がかりな治療が必要になってしまうということがあります。近年はインターネットで症状を検索していらっしゃる患者さんも多いです。ただ、インターネットの情報が全部適切とは限りません。「この病気ではないか」と思い込んでいる患者さんでも、検査をするとまったく違うこともあります。こうした患者さんの思い込みを医療者の視点から修正することも、クリニックの役目だと思っています。
予約はアプリにも対応されているのですね。
専用のアプリにてご予約をいただけるほか、アプリを通せばキャッシュレス決済もできるようになりました。もちろん、これまでどおりお電話でのご予約も可能ですし、予約なしで直接来ていただいても診察します。また発熱や感冒症状のある方は、引き続きお電話にて予約をお願いしています。
循環器科のダイナミックさに興味を持つ
先生が医師になろうと思ったきっかけを教えてください。
父の影響が大きいと思います。私が物心ついたときにはすでに父は当院での診療を行っていたので、それを見て育ちました。私には弟と妹がいます。2人とも医療の世界に進んでいるので、将来、一緒に診療ができたらいいですね。
なぜ循環器に興味を持ったのですか?
初期研修の時に回った循環器科で、そのダイナミズムに圧倒されました。例えば心筋梗塞では、今まで元気だった人が急に倒れることがあります。しかしすぐに処置をし、血液の再灌流を図るための心臓カテーテル手術を行うことができます。また循環器の診断は、不整脈は心電図検査、心不全も胸部エックス線検査や心臓で生成され分泌されるBNPというホルモンの値の測定で対応します。心筋梗塞や狭心症も、カテーテル検査や冠動脈CT検査で診断がつきます。こうした明快な面に惹かれましたね。
ところで、休日はどのように過ごされていますか? ご自身の勉強法についても教えてください。
あまり趣味らしい趣味はないのですが、たまに映画を見に行くくらいでしょうか。勉強については、医師会主催の症例検討会やセミナーが定期的に行われているので、そこに参加しています。日本循環器学会循環器専門医の資格を取得しましたので、休日や休み時間の合間を縫って勉強しました。より専門性に基づいた診察が可能になっています。
今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。
父の代からのかかりつけ医としての役割を受け継ぎ、患者さんが安心して通えるクリニックにしていくのと、私が培ってきた循環器内科の治療を、多くの患者さんに還元していきたいですね。循環器疾患は胸痛から始まることが多いのですが、心臓の疾患以外でも胸痛を感じることがあります。検査をしたら心臓の問題ではないケースも考えられるので、気になる症状があれば受診してください。今後も患者さんの声を聞きながら、いろいろと改善し、時代に合ったクリニックにしていきたいと思っています。