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田島 なつき 院長の独自取材記事

伊利医院

(坂戸市/北坂戸駅)

最終更新日:2022/12/06

田島なつき院長 伊利医院 main

1916年の開院から100年以上、坂戸エリアの地域医療を担ってきた「伊利医院」。放射線科医師として画像診断を中心に診療の経験を積んだ田島なつき先生は、祖父の代から続く同院を1998年に継承、3代目院長となった。目標とする「身近な施設で高いレベルの診療」を実践するため、歴史を感じる趣のある施設内には、CTやDXA型骨密度測定装置などの先進の設備がそろう。先端医療の提供のみならず、ケアマネジャーの資格も持ち介護制度にも精通している田島先生のモットーは「困っている人たちのお手伝いをする」。その考えにスタッフも賛同し、地域の高齢者を支えている。常にアップデートをしながら、かかりつけ医として地域医療に携わる田島先生に、同院の歴史から今試みていることまで話を聞いた。

(取材日2019年11月21日)

患者に寄り添う医療を実践したい

100年以上続く医院だとお聞きしました。

田島なつき院長 伊利医院1

当院は1916年、大正時代に開院しました。祖父が初代院長で、父が2代目を継ぎ、私が3代目になります。開院以来、この坂戸エリアに根差し、地域医療に携わってきました。患者さんの中には親子孫ひ孫4代にわたって来院される方も少なくありません。私もこの場所で生まれ育ったので、小さい頃を知っている患者さんも多く、「なつき先生」と呼んで慕ってくださっています。ただ長く通い続けてくださる方と、最近になってこのエリアに転居されて来た方では、考え方や医師に求める内容に違いがあるようですので、それぞれの患者さんの期待に沿えるように配慮しています。

医療が身近にある環境の中で、医師をめざすきっかけとなったことはありますか?

祖父が開院した当初は、まだ医療保険制度がなく、患者さんの中には謝礼が払えない方もいたそうです。そんな時祖父は「払える時でいいですよ」と無償で医療を提供していたと聞きました。父は肺結核という大きな病気を経験していたので、患者さんの気持ちをよくわかっていたのでしょう。とても穏やかに患者さんに接し、「医者の仕事は人助け」とよく言っていました。このような環境の中で育ちましたので、医師になることは福祉の一端を担うと自然と感じていました。私はアートも好きなので、そちらの方面を考えた時期もありましたが、祖父や父の姿勢から医師の重要性を感じ、今の道に進むことにしたのです。

先生のご経歴、専門の分野を教えてください。

田島なつき院長 伊利医院2

日本医科大学を卒業後は、大学院に進みました。その後は大学病院の放射線科の医師としてCT・MRIなどの、体を外から診るだけでは気づかない体内の様子を画像に映し出して診断する画像診断を中心に診療しておりました。今でこそ画像診断は診療に不可欠ですが、当時はここまで発展するとは考えられていませんでした。私が日本医科大学放射線科に入局した当時、女性の放射線科医師はまだ珍しく、周囲からは「なぜそんな科に行くのか」といぶかしく思われていましたが、新しい領域だからこそ女性でもできる部分が多いのではと考えたのです。今になってみると大正解だったと思います。また、スウェーデン、ストックホルムにあるカロリンスカ大学病院への留学も経験しました。スウェーデンは福祉先進国といわれており、この留学で患者さんに寄り添う医療を体験し、これを生まれ育った地域医療で実践したいと考えるに至りました。

地域のニーズに応じた診療を

最近目立つ疾患には、どのようなものがありますか?

田島なつき院長 伊利医院3

睡眠時無呼吸症候群は病気そのものが一般に知られるようになったこともあり、受診される方が急に増えてきました。認知度が上がったことに加え、機械で鼻から気道に空気を送り込み、睡眠中の無呼吸を防止するCPAP治療が確立された点も大きいと思います。また高齢化に伴い、骨粗しょう症、排尿障害なども目立ってまいりました。骨粗しょう症は、当院通院中の方が専門治療を中断することで骨折された経験が何回かあり、当院でも積極的に取り組むこととしました。排尿障害は、なかなか相談しにくいこともあり、十分な治療がなされていたとは言い難い状況でした。いずれの疾患も、従来は加齢に伴う避けがたいものと考えられてきましたが、診断・治療の進歩が目覚ましく、新しい医療が患者さんのお役に立てるようになってきたと思います。

高齢の方が多いエリアですが、介護の分野についてはどのようにお考えですか?

今日の医療では他施設や介護分野との連携が重要と考えています。100年以上続く歴史の中で、紹介先の医療機関は当院のことをよくご存じですので、非常にスムーズな連携が行えます。一方で患者さんの生活を支えるという点で、介護制度は医療制度と車の両輪のような位置づけだと思います。私自身もケアマネジャーの資格を持っておりますので、介護制度への理解不足から受け入れを拒否された際などには、橋渡しの役割を担うことが多くあります。またスタッフには介護や栄養関連など各種知識や経験を持つ者もおり、患者さんのニーズに応じた幅広いサービスを提供しています。

ケアマネジャーの資格や知識が診療に生かされることはありますか?

田島なつき院長 伊利医院4

そうですね、ただ資格だけでなく親切であろうと心がけているためか、行政や地域の方々が困っているときにご相談を受けることも少なくありません。例えば依頼を受けてとある高齢者のご自宅に伺ってみたところ、その方は荒廃した薄暗い室内で、床を這いながら生活をしていたのです。当院のモットーは「困っている方のお手伝いをする」ですので、使命を感じた瞬間でした。

ほかに印象深い患者さんとのエピソードを教えていただけますか?

当院で発見されたがんの手術の後、退院時のその足で「おかげさまで帰ってきました」と伝えに来てくださる方もいます。脳梗塞や心筋梗塞で高次医療機関に救急搬送した方や、不整脈や弁膜症に対する新しい治療を受けた方なども同様に感謝を伝えに来てくださいます。こうしたエピソードは私だけではなくスタッフにとってもやりがいになっています。

親子3代でめざす、身近な施設でレベルの高い医療

設備がとても充実していますが、何か特徴はありますか?

田島なつき院長 伊利医院5

放射線科の経験を生かして、幅広い疾患に対応しております。放射線科の画像診断は大学病院ですと全科を担当するので、とても視野が広いんですよ。画像診断により初めて疾患が確定することは実は極めて多く、適切な診断がついてこそ初めて適切な治療へと進めます。超音波検査やCT検査、動脈硬化の検査、経鼻内視鏡検査などさまざまな検査も行えますし、骨粗しょう症の診断には欠かせないDXA型骨密度測定装置も導入しました。また、医学の進歩は極めて早いので、大学病院から非常勤医師・技師を招くなど常にアップデートを心がけています。

先生のお休みの日の過ごし方は?

祖父や父は朝から晩まで休診日でも一日中仕事か勉強をしていて、それが医師の生活として当たり前と思っておりましたので、私も今だにそれに近い状態です。仕事と家庭の両立をずっとめざしてまいりましたが、特に子育ての時期はそれだけで精いっぱいでした。仕事を続けてこられたことに関して、支えてくださった周囲の方々や全面的に協力してくれる家族には感謝しています。娘には十分な時間を割いてやれず、いまだに申し訳なく思っていますが、当人が「自由でかえって良かったよ」と言ってくれるのがせめてもの救いです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

田島なつき院長 伊利医院6

親身の医療と高い診療レベルをめざし、親子3代にわたって地域医療に貢献してまいりました。高いレベルの医療を身近な施設で受けられることが当初からの目標です。生活習慣病などの一般診療に加え、加齢に伴う疾患にも積極的に取り組んでおります。診療の際には常に「自分だったら」「自分の家族だったら」という視点を持つようにしており、患者さんのお話をよく聞くのはもちろんですが、十分にわかりやすく説明をして、お互いの了解に基づいた親身の医療を提供します。また、どうしても重くなってしまう疾患のお話の際なども、明るく接すようにしておりますので「元気をもらった」と言っていただけるとうれしいです。

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