小室 順義 院長の独自取材記事
医療法人社団 小室医院
(入間市/入間市駅)
最終更新日:2025/06/18

入間市駅の北口から徒歩約10分。幹線道路から少し奥に入った住宅街に位置する「小室医院」。明るく広い待合室は安心感があり、開放的な気分にさせてくれる。院長の小室順義先生は、祖父の代から90年以上続く歴史あるクリニックの3代目になる。地域の医療に忙しく携わっていた祖父や父を見て、自然と医師の道を志したという小室院長。年齢とともに現れる女性の体のさまざまな不調に対して「症状に応じて個別に指導を行い、一つ一つ解決に導いていくようにしています」と話す。クリニックでの診療とは別に医師会での活動にも忙しく動く小室院長。どのような診療に力を入れているのかも含めて、詳しく話を聞いた。
(取材日2025年2月18日)
若い世代から高齢者まで地域の女性の健康を支え続ける
歴史のあるクリニックだそうですね。

私の先祖は代々毛呂山町で医業を営んでいて、この診療所は1933年に私の祖父が、地元の皆さまの要請を受けて開設しました。以来、90年以上、地域の女性の健康を支え続けています。祖父の時代は医師も少なかったため、人力車を利用してずいぶん遠くまで往診をしていたと聞いています。父の代も祖父同様に非常に忙しく診療をしていました。父は警察の嘱託医も務めていましたので、不審死が報告されると、夜間や休日でも呼び出されるということが度々あったのを覚えています。さらに、私が通っていた幼稚園の園医や小学校の校医も受け持っていたので、地域との結びつきは非常に強いものがありました。そこで、この地で生まれ育った私も、祖父や父の思いを受け継いで地域の方々の医療に貢献したいと思っています。
医師を志したのは、おじいさまやお父さまの影響が大きいのですね。
母の実家も代々医業を営む家系でしたから、小さい頃から医師をめざすのに何ら抵抗はありませんでした。戦後の混乱期に、地域の産婦人科医として身を粉にして働く祖父や父の姿を目の当たりにしてきましたから、自然と自分も将来医師になるものだと思い、それ以外の職業は思いつきませんでした。産婦人科を選んだのも、外科や内科に関連した総合的知識が求められ、学生時代から奥の深い診療科だと感じていたからです。1971年に東京慈恵会医科大学を卒業すると同時に産婦人科教室に籍を置き、足かけ23年、周産期医療を中心に講師や助教授の職務を果たしながら大学にお世話になり、1993年に父の後を継ぐかたちで開業医となりました。
日々の診療で大切にしていることは何ですか?

医療の発展は日進月歩なので、新たな知識や技術の習得が常に求められます。従って、可能な限り医師会などが主催する勉強会、講演会に積極的に参加し、質の高い情報を得るようにしています。また、医師会で他科の先生方と交流して見識を深め、地区の中核病院の先生方とも意見交換を通じて互いに顔の見える関係を築き、必要があった場合に、円滑に患者さんを送ることができる体制づくりを整えるようにしています。また、診療時はできるだけ患者さんに寄り添い、治療や検査の内容をわかりやすい言葉で伝えることを意識しています。
年齢や生活背景を考慮して、一人ひとりに合った治療を
クリニックでの診療の特徴をお教えください。

産婦人科領域は、妊娠や出産を扱う周産期、子宮がん検診、子宮筋腫などの管理を行う腫瘍部門、不妊症や不育症に対する生殖内分泌、さらに、月経に関するトラブルや更年期の不調を解消するためのヘルスケア医療といった具合に大きく4つの分野から成り立っています。現在、当院はお産の取り扱いを停止していますが、思春期を含む若い世代から老年期に至るまで、年齢による女性の体の変化を切れ目なくサポートしているのが特徴です。開業から90年以上培ってきた臨床経験の積み重ねが、多くの患者さんから支持されているのだと思います。
更年期障害で悩む患者さんも多いのではないですか?
更年期とは、卵巣から分泌される女性ホルモンが減少し始める時期を指し、一般的には閉経年齢といわれる50歳を中心とした前後5年間をいいます。この時期は女性ホルモンが急激に減るため、ほてりやのぼせ、急に汗をかくなどのホットフラッシュ症状が出て、生活に支障を来すこともあります。また、気分の落ち込みや疲れやすいといった不調も現れ、日常生活の質を低下させてしまうだけでなく、家庭環境や社会的な立場、経済的な面にまで影響が及ぶといわれています。治療では、減少した女性ホルモンを補うホルモン補充療法、漢方薬、向精神薬、プラセンタ治療などがあり、患者さんの症状やご要望、生活スタイルを考慮して判断し、提案させていただいています。
近年は生理に関する悩みも多いとお聞きしました。

若い世代は、生理不順や生理痛、月経前症候群(PMS)をはじめとする生理に関する悩みが多く見られます。仕事や学校生活に影響が出るほどの生理痛は、決して我慢せずに受診をしてください。2024年の経済産業省の報告では、生理痛やPMSによる労働のパフォーマンスは約40%低下すると報告されています。一方、生理不順に悩まされる女性も少なくありません。初経から数年は、排卵状態が整わないため生理不順になることがありますが、最近は、各種ストレスの影響から生理不順になる方が多くいらっしゃいます。このような場合は、血液検査を行ってどのホルモンが不足しているかを確かめてから、適切な対応を行います。また、PMSについても、頭痛やだるさといった個別の症状に対しては漢方薬などを活用する手立てもありますので、早めにチェックを受けると良いでしょう。
年齢に応じて、女性の一生を支えているのが産婦人科
その他には、どのような悩みを持った患者さんが多いのでしょうか。

年齢層を問わない症状としては、おりものや外陰部のかゆみを訴えらえる方が多いですね。これらは腟の中に菌が増殖した炎症(腟炎)が引き金になるので、原因菌を特定した上で、菌種に応じた薬を使用します。高齢の方は、ホルモンが減少したために生じる萎縮性腟炎が考えられます。また、子宮をはじめとする骨盤内臓器が下降する子宮脱や膀胱脱も、この世代に多くあるトラブルです。他にも、生理とは異なる出血を訴える方も多く、この場合は多くの原因が考えられるため、細胞診検査を行います。婦人科疾患には、子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮頸管ポリープ、子宮内膜ポリープなど、自覚症状がほとんどない疾患も多いので、病気の予防や早期発見のためにも定期的な婦人科検診をお勧めします。
先生は医師会の活動にも尽力されているとお聞きしました。
現在、入間地区医師会会長を務めています。子宮がん検診や特定健診、乳がん検診から、新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ感染症、子宮頸がん予防ワクチン、帯状疱疹ワクチンなどのワクチン接種など、多くの事業を通じて、行政と密接に連携し、市民の健康づくりのお手伝いをしています。最近の産婦人科の話題としては、子宮頸がん予防ワクチン接種事業があります。子宮頸がんは、20〜30代の若い世代の発症が多く、初期はまったく症状がありません。ワクチンですべての発がん性ウイルスの感染を防げるわけではありませんが、子宮頸がんの予防において、ワクチンの接種と定期的な検診はとても重要な役割を果たします。そのための啓発活動も研修会などで適時行っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

産婦人科は、女性の健康に関わる問題に対処する診療科です。不定愁訴など、体についてのさまざまな悩みはもちろん、妊娠された方、出産を控えた方、また、子宮頸がん予防ワクチンの接種でいらっしゃる若い世代の方も多く、女性の一生を支えている診療科だということを、あらためて実感しています。よく、閉経を迎えると婦人科は卒業といわれる方もいますが、そんなことはありません。閉経後をいかに健康で過ごせるかで、人生のクオリティーが決まるといっても良いでしょう。年齢に応じて現れる女性の体の悩みは遠慮なくご相談ください。毎日をアクティブに過ごせるお手伝いをさせていただきます。