齊藤 秀行 院長の独自取材記事
斉藤耳鼻咽喉科医院
(所沢市/所沢駅)
最終更新日:2021/10/12
西武新宿線と西武池袋線の所沢駅西口から徒歩約8分の「斉藤耳鼻咽喉科医院」は1941年の開院以来、70年以上にわたり地域の患者を支えてきた歴史ある医院だ。3代目院長の齊藤秀行先生は耳鼻咽喉科の専門家で、耳だれ、耳・鼻詰まり、睡眠時無呼吸症候群の治療を得意とし、小児耳鼻科の経験も豊富。補聴器の外来にも力を入れていて、新たに言語聴覚士による「聞く・話す」といった機能のサポートもスタートした。「患者の不安を少しでも和らげ、納得してもらえるような説明を心がけている」という齊藤院長に、診療に対する思いをたっぷり語ってもらった。
(取材日2020年9月18日)
言語聴覚士が加わり、より良い聞こえのサポートに注力
こちらのクリニックの特徴を教えてください。
1年ほど前から言語聴覚士の方に来てもらい、「話すこと」と「聞こえ」に関する検査・リハビリテーションを担当してもらっています。聞こえが悪くなった方や、口などの病気でうまく言葉が話せなくなった方などのコミュニケーションに関わる機能のサポートをお願いしています。当院に来ている言語聴覚士さんは、補聴器についてもかなり詳しく、補聴器の調整が院内でも可能となりました。一般的な聴力検査は通常ヘッドフォンをして行うのですが、補聴器をつけたままだとハウリングが起きてしまうので検査をすることができません。そこで当院では、スピーカーから出た音で検査をする「音声検査」と言う聴力検査を採用しています。この方法であれば、補聴器をしたままで検査を受けることができ、その結果を見ながら補聴器自体を調整することが可能となるため、患者さん一人ひとりに合ったより良い聞こえをめざして調節していくことができるようになったんですよ。
こちらでは、アレルギーの方に舌下免疫療法を行っているそうですね。
舌下免疫療法というのは、アレルゲンを含む治療薬を舌の下に投与するというスギ花粉症の治療法です。これまでの耳鼻科での花粉症治療では、目のかゆみを抑えるということが難しく、例えばステロイドを使う治療の場合は眼科で目の検査を受けていただいてから処方していました。それがこの舌下免疫療法では、目のかゆみを含めたスギ花粉症の症状全般に対応していて、眼科の検査を受けなくても耳鼻科を受診していただくだけで処方ができますので、とても便利になりました。
先生は近隣の大きな病院で手術を行うこともあるそうですね。
慢性中耳炎や、副鼻腔炎、鼻中隔の手術などを行う場合に、患者さんと一緒に総合病院へ行き、そこで私が手術を行うこともあります。これは、地域の医師が病院を利用する「オープンシステム」と呼ばれる方式で、これまでは高田馬場近くの聖母病院で手術をさせてもらっていたのですが、現在は小手指にある西埼玉中央病院でも行っています。総合病院なら設備もスタッフの数も整っていますからね。患者さんにとっても、僕自身が手術に関わっていたほうが術前から術後までトータルに話ができ、信頼関係が保てるのではないかと思っています。今後は、軽い副鼻腔炎、副鼻腔真菌症の手術など、局所麻酔で済む簡単な手術に関しては、当院でもできるようにと準備を進めているところです。この地域の手術も行える耳鼻科のクリニックとして、より患者さんの役に立っていきたいと考えています。
早回りはせず、丁寧な診療で患者の安心につなげていく
先生が得意とする治療は何ですか?
耳だれ、耳・鼻詰まり、そして睡眠時無呼吸症候群の治療に力を入れています。耳だれや、耳・鼻詰まりというのは、いろいろな病気が原因で起こり、その原因によって使う薬や治療法が違ってきますので、まず原因を突き止めることが大切です。的確に診断がされず、漫然と同じ治療が行われて一向に改善しない患者さんなども診てきました。薬や手術でも、改善しない、症状を繰り返すなどの場合は、適宜、他に原因がないか見直していく必要があります。また、開業直前まで勤務していた母校の慶応義塾大学病院で小児の外来を担当した際には、小児難聴を数多く診察したり、形成外科とチームで口唇口蓋裂の治療を行うなどしてきました。小児の睡眠時無呼吸症候群にも関心があり、長く勉強をしてきました。
先生の診療ポリシーについて教えてください。
正確に診断していくこと、そして決して早回りしないこと、この2つに努めています。薬でまったく副作用がないものはありませんから、なかなか改善しないのに使い続ければかえって逆効果となる場合もあります。治療前に適切なのかをしっかり見極めることが大事です。問診票で状態を理解し、さらに診察室で直接患者さんからお話を聞きます。検査は、もしかしたら必要ないかもしれないと思っても、万全を期して行うこともあります。結果を急ぐと正しい診断結果が導けないこともありますので、患者さんをお待たせすることになっても、そこは大切にしています。
患者さんとの対話の中で工夫されていることはありますか?
開業して感じたのは、言葉で説明するだけでは伝わりにくく、写真を見るだけでも実感が薄いということです。喉を内視鏡で診察して「異常ないですよ」と言うだけでは安心できないんですね。そこで、その場で実際の様子をモニターで見てもらいながら説明するようにしています。また、医師は診断が確定してからでないと患者さんに説明をしないことが多いものですが、診察している段階で、どの病気か確定できないが除外できる病気が出てきたり、可能性が多い・少ないなどの見立てができてきます。それをなるべく途中で説明するようにしていますね。そうしないと、いろいろな可能性が患者さんの頭の中で膨らんで、不安になるからです。
より良い治療のためには、些細なこともまずは相談を
ところで、こちらの医院は約80年前の1941年に開業され、先生は3代目だそうですね。
祖父が開院し、父、私と引き継いできました。もともとは通りの反対側にあったのですが、父が院長をしていた2004年に道路拡張工事のため移転し、私が院長になった2012年にも内部を全面改装しています。待合室は温かい印象になるよう、暖色系にしました。感染症の患者さんも来院されますので、患者さん同士の接触が極力少ないように、診療を待つ患者さんの人数が多くならないように、スペースを広く取り、およその待ち人数と時間がわかる診療予約システムを導入しています。また、当院ではキッズコーナーはあえて設けていません。おもちゃを触ったり、なめたりすると、衛生上問題があると考えているからです。
先生が耳鼻咽喉科の医師になられたのは、やはりごく自然なことだったのですか?
周囲の期待や雰囲気を何となく感じてはいましたが、父からはっきりと勧められたことはありません。他になりたいものもなかったため医学部を受験し、入ってからも、耳鼻咽喉科の医師になろうと思ったわけではないんです。いろいろ勉強してみて面白い領域もありましたしね。分野を決める段階になり、耳鼻咽喉科は比較的、治療の選択の幅が広くて自由にできる印象があったので、やりがいがありそうだと考えて選びました。中耳炎の子どもから老人性難聴の高齢者まで世代、性別関係なく診ることができますし、内科的・外科的治療の両方ができます。幅広くできることに魅力を感じました。父と同じ分野を診ることになったと気づいたのは、医師になってからなんですよ(笑)。
最後に、今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。
患者さんの中には、何科を受診すれば良いのかわからないという方も多いので、そういう方々にとっての受け皿のような役割も、力を抜かずにやっていきたいと思います。今は新型コロナウイルス感染症の影響で受診を控える方もいますが、発熱があるからといってすべての患者さんをお断りしているわけではありません。出入り口を別にしたり、別部屋で診療をしたりなどできる限り対応していますので、まずはお電話でご相談ください。特に、2歳未満の中耳炎などは薬を飲まないと悪化することもありますから、通院を控えずに来ていただきたいですね。病気の治療というのは適切なタイミングで始めることが大切ですので、自分で判断するのではなく、まずは医師に症状を詳しく話し、しっかりとした診断を受けていただきたいと思います。また、病気にならないだけでなく、なってしまった病気を早く治すためにも「十分な睡眠と休養」を心がけることも大切ですね。