茂木 智和 院長の独自取材記事
こころとからだのクリニック
(高崎市/吉井駅)
最終更新日:2026/06/24
県道71号から少し東へ。高崎市役所吉井支所から程近い住宅街にある「こころとからだのクリニック」。もとは整形外科医院だったこの建物を引き継ぎ、茂木智和院長が2025年4月に開院した。茂木院長は、群馬県藤岡市出身。福島県立医科大学を卒業後、福島県内の基幹病院や群馬大学医学部附属病院などで精神科医として研鑽を積んできた。在学中よりMRIを活用したうつ病の研究にも携わり、その成果を診療に生かしている。同院では複数医師による診療体制を敷き、精神科の訪問診療も実施。個々の患者のニーズに応じたフレキシブルな対応を持ち味としている。取材中、何度も「地域のために」と口にした茂木院長に、その思いを聞いた。
(取材日2026年5月25日)
5つの診療科目の診療に加え、精神科の訪問診療も実施
開業までの経緯を教えてください。

医師になったきっかけとして、母が看護師だったことは大きいと思います。僕は福島県立医科大学の出身で、卒業の年に東日本大震災が起きました。卒業後は福島県内の病院で臨床研修医として勤務を始めましたが、避難地域からカルテがない人も診察に来ている状態でした。臨床研修では一通りの科を回るのですが、内科や外科は希望する先生がたくさんいたので、あまり希望者がいない精神科にしようかな、と。患者さんと話すことが苦にならなかったですし、震災後の不安感が色濃く出ていた時期でもありましたので、精神科の分野で力を発揮できたらと考えました。患者さんの家庭環境や背景、仕事の話をきちんと聞きつつ、ご本人が幸せになっていけるよう治療をすることは、自分にとても向いているなと思いましたし、今もそれがやりがいです。長年精神科医として勤務してきましたが、「心と体を総合的に支える医療を提供したい」と考え、開業に至りました。
クリニックの特徴をお聞かせください。
この建物は、2代にわたって整形外科医院をされていた先生とのご縁から引き継ぐことになりました。クリニックの特徴としては、内科・消化器内科・整形外科・婦人科・精神科と、たくさんの科があることです。非常勤を含めて5人の医師が、曜日ごとに各担当科の外来で診察しています。前身の整形外科医院の先生にも、引き続き当院で整形外科を担当していただいており、各科の患者さんが幅広くいらっしゃいます。僕の担当は精神科と内科ですが、この地域には精神科を標榜しているクリニックが少なく、また、精神科の訪問医療・在宅医療を実施しているのも、この地域ではとても希少なんです。家の外に出るとパニックになる、知的障害や発達障害があり、待合で待つことができないなどの場合に、施設やご自宅を訪問して診察しています。実は僕自身、働きながら祖父母を介護している母を見ていたので、在宅サポートの必要性を感じたんですよ。
複数の診療科があることのメリットは大きいですね。

心の不調を訴えている患者さんが体調にも異常を来した場合、何科を受診したらいいかわからないというケースは多いと思います。統計では最初に受診するのは内科や婦人科で、そこで体の検査結果は問題がないからと精神科を訪れる方が多いようです。当院ではこの3つの科の一通りの診療が一度に可能です。消化器や女性の更年期の不調と精神科は大きなつながりがあるので、心配な方はまず消化器内科や婦人科の診療日に来ていただいて、検査をして、やはり精神的なものが原因かもしれないと考えられる場合は、精神科の診療を受けていただきます。
受診する科を迷った際に気軽に相談できる診療体制
精神科にはどのような症状の患者さんがいらっしゃいますか?

仕事のストレスなどで眠れなくなったり、落ち込んでしまったり、不安感が出たりという人が多いですね。いきなり精神科を受診するのはハードルが高いと思いますが、当院では最初に内科で診療することが可能ですので、来院しやすいと思います。また、精神科にかかっていることを知られたくない方もいますが、待合室にはほかの科の患者さんもたくさんいて何科を受診しに来たかはわかりませんから、そういう意味でも受診のハードルが少しでも低くなればと思います。不調の原因が身体なのか精神なのか、ご自身では判断がつかないと思いますから、医師に気兼ねなくご相談いただきたいですね。
精神科と心療内科の違いを教えてください。
グラデーションな部分もありますが、心療内科は、ストレスなどの精神的要因からくる身体の不調や内科的疾患、血圧なども含めて体の治療がメインです。一方精神科は、統合失調症やうつ病など、精神的な疾患の治療がメインとなります。例えば、不眠という症状に対して明確に原因となるストレスがある場合は、精神的な治療が優先されます。体の痛みや血液検査の結果に異常がなければ、心療内科的な治療を優先することをお勧めします。精神的要因にアプローチすることで生活習慣も整えば、症状の改善が見込めることもあるので、初期的な診療から始めて、最終的には糖尿病の血糖や血圧のコントロールを一緒にできるところまでをめざしています。そういう意味では僕の診療は、心療内科的な内容が多いかもしれません。近年心療内科が認知されてきて、予約が取りづらいという話も耳にします。当院では比較的スムーズにご予約いただけると思います
訪問診療についてお聞きします。

基本的には僕が訪問して一通りの診療を行っています。僕の専門は精神科ですが、内科的な処置もしますし、看取りも対応いたします。それ以外の所見があれば、適宜専門の先生に聞いて薬を処方し、場合によっては直接訪問してフィードバックしてもらいます。ご本人やご家族の希望があって、こちらから出向いて診療できてしまえば、診断して必要な治療を特定することで、福祉や行政サービスが受けられることもあります。患者さんのメリットになることが多いですね。ただ、訪問診療は、患者さんの顔が見られないと診療になりません。市役所と連携して困っている方を何度も訪問したけれど、チャイムを鳴らしても電話しても応答がなくて終了した、というケースもあります。そういう人たちをどうやったら診療につなげられるかが今の課題ですね。
地域の患者のニーズにフレキシブルに対応
診療時に心がけていることはありますか?

患者さんの中には、「治療でこういうことをやっていきましょう」という精神療法的なアドバイスをすることで安心される方もいらっしゃいます。精神的な問題は家族や友人にはなかなか話せない部分もあるので、精神科医やカウンセラーに話してアドバイスを受けることで、気持ちが楽になるのではないかと思います。僕は、患者さんそれぞれが困っていることにしっかりと着目して、少しでも気持ちが楽になるように心がけています。そして「この症状ならこの対処」と型にはまった対応をするのではなく、患者さんの背景に合わせた治療をすることで、少しずつでも良くなっていただけたらと思っています。
医師としてのやりがいを感じるのはどんなときですか?
訪問診療を始めるまでは、褥瘡の処置をしたことがなかったのですが、日々新しいことを学ぶことができるのは楽しく、やりがいがあります。また、訪問診療をすると家での様子やご家族との関係性もわかり、診察室だけではわからない患者さんの背景が見えるので、新たな発見があります。そういうところもやりがいと言いますか、訪問診療の良いところだと思っています。逆に、診療していて難しいなと思うのは、治療上厳しいことを言わなければならない場合です。特にアルコール依存症の患者さんには、指導として厳しめに話をしなければならないこともあります。ただ、患者さん本人に自分が病気だという自覚がないこともあるので、結果的に指導が治療につながらなかったときはつらいですね。
今後の展望をお聞かせください。

検診で来院し、内視鏡検査も婦人科のがん検診などもすべて1ヵ所で完結できるということは、患者さんにとってとても便利なことだと、この1年で痛感しました。将来的には標榜科目をさらに増やして、当院である程度の診療が決着できること、そしてより専門的な診療が必要な場合は大きな病院につなぐというルートを確立することが理想です。さらに、通院が困難な場合には、こちらから診療に出向くという動線が整備できるといいなと思っています。クリニックでありながら小さな病院というイメージですね。そういうクリニックがあることは地域にとって有益だと思いますし、これからも地域に必要なことは何かを考えながら、患者さんのニーズにフレキシブルに対応する診療を行っていきたいですね。

