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菅野 俊一 院長の独自取材記事

かんの産婦人科クリニック

(取手市/藤代駅)

最終更新日:2024/04/02

菅野俊一院長 かんの産婦人科クリニック main

藤代駅から徒歩約7分の場所にある「医療法人社団寿幸会 かんの産婦人科クリニック」。2006年前身の「医療法人緑生会 橋本産婦人科クリニック」の副院長だった菅野俊一先生が院長となった後に経営権を引き継ぎ、現在の名称で開院した。少子化の影響で産科のクリニックが年々その数を減らしている中、同院では産科をメインに診療を続け、取手市内はもちろん、近隣の市町村からも多くの妊婦が来院する。産科にこだわるのは「安心して出産できる場を提供したい」という強い思いがあるからだという菅野院長に、その診察方針やモットーを聞いた。

(取材日2024年3月13日)

茨城県南部で分娩をメインに地域医療を支える

先生がこちらのクリニックを開院するまでの経歴を教えてください。

菅野俊一院長 かんの産婦人科クリニック1

もともとは父が地元の栃木で産科もある診療所を運営していたので、そこに戻るつもりで産科を選びました。大学卒業後は東邦大学医療センター大橋病院などで学びを深めながら、大学では助産師になる方への講義を受け持っていました。その後埼玉県の羽生総合病院で産婦人科の医長をしばらく務め、一旦大学に戻ってから、今度は長野県にある吉田病院に勤務しました。その時に乳業会社の方に、当院の前身である橋本産婦人科クリニックを紹介されたんです。僕は赤ちゃんの誕生という大切な瞬間をお手伝いできる産科が好きで、ずっと仕事をしてきたものですから、産科が主体のクリニックを引き継ぐことは、自分の方向性と一致していたんです。それで2000年11月から引き継ぎを前提に副院長に就任して、翌年6月から院長になりました。2006年6月からは名称変更して、現在の状況になっているという流れになります。

産科がメインとのことですが、患者さんの層とお産の特徴はどういったものですか?

割合としては全体の3分の2くらいが産科を受診される方で、出産年齡とされる10代後半から40代前半までの方が多いです。もちろん更年期障害など婦人科を受診される50代以上の方や、当院で生まれてワクチン接種などで来院する赤ちゃんもいます。出産される方は里帰り出産が5%くらいで、あとは取手市内のほか近隣の守谷市、龍ヶ崎市、河内町、利根町といった近隣にお住まいの方がほとんどです。出産方法は橋本産婦人科クリニックの当時から、橋本明先生が考案した中国の気功の呼吸法を利用した「リーブ法」での自然分娩を行っています。それにより体がリラックスした状態をめざすことで、赤ちゃんへの酸素の供給が良くなることが見込めると考えているからです。出産前の計2回の講習で、リラックス法といきみ方をお教えしています。比較的、過換気になりにくく、妊婦さんがお産に向けて集中することができるいい方法だと感じます。

麻酔を使った無痛分娩を選択する妊婦さんも増えているそうですね。

菅野俊一院長 かんの産婦人科クリニック2

日本の全国的な平均では無痛分娩は全体の10%に届いていないとされています。そんな中で当院では2021年には全体の約20%、去年が約33%と、無痛分娩での出産数が年々増えています。当院では無痛分娩を知ってもらうために、産前に講習会も開いています。麻酔は背中からの処置になるので、妊娠10ヵ月に入る段階に患者さんの背中を見せてもらったり、実際に使う麻酔の針などをお見せしたりと、事前の説明をした上で患者さんに選択してもらう形を取っています。自分で産む感覚はちゃんとありつつも痛みの軽減が望めるので、そのほかのことに集中できるというメリットもあると思っています。

患者のメリットになることを考えた手厚いサービス

豪華なお食事や産前産後の各種教室、託児所の併設など、妊婦さんに寄り添ったサービスが充実していますね。

菅野俊一院長 かんの産婦人科クリニック3

入院中は妊婦さんの体に合ったお食事を用意しています。退院前には「お祝い膳」というディナーも出しています。新型コロナウイルス感染症が流行する前はご家族にも一緒に食べてもらっていたのですが、今はそれができないのが残念です。教室については妊娠中クラスを2つ、産後クラスを3つ設けています。そうした取り組みをすることで、患者さんにメリットがある形で、いいお産をしていただきたいという想いです。託児所を設けているのは、経産婦さんだと通院の際に上のお子さんがいるので、就学以前のお子さんたちの預け先がネックになります。できるだけ利便性を図りたいので、当院で診察する間は託児所で無料でお預かりしています。また、お仕事をされている方に少しでもメリットがあればと思い、外来では土曜と日曜日午前中の診療が可能です。

周産期の外来では、先生の診察のほかに助産師相談も対応しているそうですね。

システム的には妊婦さんの周産期健診で12週以降になったら、必ず1回、助産師と話をしてもらっています。それによって患者さんのニーズや困っていることを聞き取って、それからわれわれ医師のほうで診察するようにしています。助産師が聞き取ったことは電子カルテ上で共有されるので、診察の際にそれを反映させることができます。女性同士なので話しやすいこともあるでしょうし、医師にはなかなか言いにくいけど助産師さんなら……ということもあると思いますので、そういった形を取っています。

緊急手術が必要になった場合はどのように対応するのでしょうか。

菅野俊一院長 かんの産婦人科クリニック4

1年ほど前から、市内のJAとりで総合医療センターと病診連携をしています。限られた看護スタッフの数では緊急手術に対応できない状況があり、そういったことが必要な場合はJAとりで総合医療センターに搬送します。ですので、当院の患者さんには9ヵ月目の段階で一度、JAとりで総合医療センターで受診してもらっています。そうすることで当院での診察データなどを向こうにお渡しできるので、何かあって搬送された時に、向こうの電子カルテを開けばすぐにデータを見ることができるようになります。以前は患者さんのお名前から生年月日、既往歴までを全部病院へ伝えた上で手術になっていたのが、今はそれをしなくても、最近の経過と搬送の理由だけお話しすれば大丈夫というシステムになっています。

モットーは患者への丁寧な説明

先生が患者さんを診察するときに、一番大事にしていることはなんですか?

菅野俊一院長 かんの産婦人科クリニック5

お産にあたり、患者さんにわかっていただかないと困ることというのがあります。検査のこと、赤ちゃんの発育のこと、お産に対しての準備。その説明をできるだけきちんとしてあげたいという思いが僕にはあるんです。例えば、検査データも毎回きちんと全部、説明したい。でも、それをやるがために待ち時間が長いというお声がどうしても出てしまって。そこがジレンマです。説明を早く終わらせればいいのかもしれないですが、僕自身が診療するにあたって、そこは時間をかけてやりたいところになっています。赤ちゃんの誕生に関して知っておくべきことというのはたくさんありますし、医師として患者さんに伝えておきたいことは丁寧に伝えていきたいと思っています。

今お話ししていただいた、患者さんに伝えておきたいこととは具体的にはどのようなことですか?

妊婦さんの状態だったり、赤ちゃんの発育状況です。それをしっかり把握しお伝えするための一つの方法として、赤ちゃんの状態をきちんと見るということをコンセプトに、20週から24週のところで超音波検査による胎児スクリーニングをしています。頭のてっぺんから足先までを全部チェックするんです。周産期を専門にしている医師に毎週火曜日と月の最後の週の日曜日に来てもらうので、そこに合わせて患者さんに診察を受けてもらっています。それで何か問題が見つかって、手術が必要な症例だった場合は転院していただくことになります。必要なことをしっかりと調べてお伝えすることで、いいお産につながったらと思いますね。

今後の展望と、読者の方へのメッセージをお願いします。

菅野俊一院長 かんの産婦人科クリニック6

患者さんのニーズには、今後も応えられる範囲ではお応えしたいです。先ほどもお話ししたとおり、患者さんへの説明を重要視している分、待ち時間が長くなるというデメリットはあります。ただそれは家族が増えることに対しての準備を、皆さんでしっかりしてもらいたいという思いがあるからなのです。われわれはそれにちょっとだけお手伝いをする存在だと思っています。もちろん、そのために僕がやれるだけのことはやりたいです。自分の体と気持ちとの勝負ではありますが(笑)。でもそうして無事に赤ちゃんが生まれてくれたら、エネルギーがもらえますから。それは産科を続けるモチベーションとして、すごく大事なことだと僕は思っています。

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