渡邉 淨司 院長、渡邉 ありさ 副院長の独自取材記事
米子中海クリニック
(米子市/河崎口駅)
最終更新日:2024/03/12

地域医療の窓口として、診療科の枠を超え、地域住民のさまざまな健康問題に多面的に取り組む「米子中海クリニック」。今年で開院67年目を迎える同院は、2022年に渡邉淨司(じょうじ)院長と、妻の渡邉ありさ副院長を新たに迎えて、新たなスタートを切った。健康診断や検診の受診へのハードルを払拭したいと、院内に検査専用フロアを設けたほか、健康診断後のフォローアップにも注力し、利用者の健康寿命の延伸のための心強いパートナーをめざす。自治医科大学を卒業後、へき地医療に長く携わってきたという二人だからこそできる地域の患者目線の診療に、これまで受診を躊躇してきた人でも「このクリニックなら」と重い腰を上げられるのではないだろうか。
(取材日2024年2月6日)
長年にわたる地域医療で培った幅広い診療経験
そもそもお二人はなぜ医師をめざされたのですか。

【ありさ副院長】私は、祖父母が自宅で開業医をしていたんです。そんな二人を近くで見て育ったので、専門性の高い医療というよりは「地域医療を支えるような医師になりたい」と当初から思っていました。それから、高校3年生の夏休みに虫垂炎になって1週間ほど入院した時、お世話になった医療従事者の方々を見てやっぱり医療の世界っていいなと思ったことが大きいですね。
【淨司院長】私も父が医師をしており、幼少期には父が勤める自治医科大学の近くに一家で住んでいたこともありました。学校のグラウンドによく遊びに行ったりと、すっかり慣れ親しんだものですから、いつしか「自分もこの大学に通うんだ」と思うように(笑)。私も、ありさ副院長も、自治医科大学で学んだのですが、同大学で研鑽した地域医療やへき地医療の経験は当院の診療でも多く生かされていると感じますね。
地域医療やへき地医療を行う医師としてご研鑽を積んでいらっしゃったのですね。
【淨司院長】自治医科大学は地域医療やへき地医療の担い手となる、総合診療に従事する医師の育成に力を入れている大学なんです。私たちも、自分の専門領域にとらわれることなく何でも診る医師としてこれまでさまざまな疾患の治療にあたってきました。内科や外科だけではなく、ときには皮膚科や泌尿器科の疾患を診ることもありましたね。米子市には多数の医療機関がありますから、決して医療資源に乏しいエリアではないのですが、患者さんの多くが複数の疾患を抱えていらっしゃる中で、あちこちの医療機関へ行かずに済むように、当院では幅広い診療に対応しつつ、多角的に皆さんの健康のためのサポートをさせていただいています。
お二人は消化器領域のスペシャリストでもあるとお伺いしました。

【淨司院長】内科でも外科でも消化器の病気は非常に多いんですよ。診療していると高頻度で遭遇する疾患ですから、総合診療を担う医師として消化器を専門にしたのは自然な流れだったんです。外科を選んだのは、外科的な技術を身につければさらに幅広い疾患に対応できると思ったからです。
【ありさ副院長】消化器の診療に対応できるようにと、大学のOB・OGの先生方からも「初期研修のうちに胃カメラはできるようになっておいたほうがいいよ」との助言を多く受けましたね。初めてへき地に派遣された時、消化管出血で一時危険な状態になった患者さんがいらっしゃったのですが、自分が止血をして対処したことがありました。その時、スタッフの力や、医師にしっかりした技術があればへき地でも高いレベルで医療を提供することができるのだと実感しました。そうした経験もあり、内視鏡検査の手技と精度向上により一層研鑽を重ねていきました。
日常の些細な不調から健康を守る手伝いを
新たに「ハイドロリリース」という治療を始められたそうですね。

【淨司院長】クリニックは「何か病気になったら行く場所」というイメージが強いですが、身体をより良い状態、つまり「健康になるための場所」にしていきたいと考えています。「ハイドロリリース」は、肩凝りや腰痛といった筋膜に痛みがある症状に対して、超音波診断装置で観察しながら患部に薬剤などを注射して、痛みの緩和を図る治療法です。体の負担が少ないとされる新しい治療法ですが、当院では「悩まれている方に治療を受けていただきたい」との思いで保険適用で行っています。当院の患者さんは近隣にお住まいの方が多い印象ですが、このハイドロリリースに関しては県外から受けにいらっしゃる方も見られますね。
検診専用フロア「ヘルスケアセンター」の話もお聞きしたいです。
【淨司院長】昨今は先進医療という名のもとに多額の医療費が費やされ、過酷ともいえる治療が行われていますが、できることなら定期的に検診を受けていただき、なるべく早く病気を見つけ、「お金のかからないうちに治してしまう」、あるいは「元気でいられる時間を延ばすことに注力する」ほうが、その人らしい生き方になるのではないかと私たちは考えています。そこで、当院では検査専用フロア「ヘルスケアセンター」を設けて、ありさ副院長を中心に健康診断や人間ドックにも対応しています。医師の診察が必要な場合はその領域に強い医師が担当する外来日をお伝えしたり、血圧手帳をお渡しして記入していただくなど、結果だけを伝えることがないよう検査後のフォローアップにも注力しています。
検査のハードルを払拭するために、どのような工夫を行っていますか。

【ありさ副院長】例えば、内視鏡検査、いわゆる胃カメラや大腸カメラでは、なるべく短時間で苦痛の少ない検査を心がけ、かつ小さな病変を見逃さないように細心の注意を払って行っています。大腸カメラは、患者さんによっては時間がかかったり、痛みが出やすかったりする方も多い検査です。リラックスしていただけるようにお話をしながら、一緒に画面を見て検査を進めています。異常がないかの確認のほか、検査時に見つけたポリープの切除まで対応しています。私は内視鏡検査を得意としていますので、「以前の検査で大変な思いをされた」「癒着があって検査を諦めている」といった方もご相談くださるとうれしいです。
患者や利用者の健康を多角的にサポートする
今までの多岐にわたる診療経験を、どのように地域医療に生かしていきたいとお考えでしょうか。

【ありさ副院長】さまざまな経験がつながって、地域医療に還元できてきているのかなと感じています。例えば、鳥取大学の地域医療学講座から、へき地診療の経験を学生に伝えるために教壇に立ってみませんかと声をかけていただきました。教員時代には、地域医療体験実習を県内の各医療機関にお願いする立場だったのが、現在では実習をお引き受けする立場に変わったことにご縁を感じていますね。
【淨司院長】培った知識や技術が診療に生かされていることはもちろんですが、同世代の医師ができないことを数多く経験させてもらえたことで、人生に幅が出ましたし、全体を俯瞰する力も身についたと感じています。私は医療法人の理事長も兼任していますので、責任者としてそうした見方ができるようになったのは幸いでした。
今後の展望をお聞かせください。
【淨司院長】当法人「厚生会」では「あなたの元気をトータルサポート」というフレーズを掲げています。クリニックのほか、デイケアやグループホームなども運営しています。人生のさまざまなステージを総合的にサポートするために、医療や介護、福祉などの垣根を越えて地元の企業やさまざまな職種の方と連携したりすることで、当法人の施設を利用の方はもちろん、地域の皆さまにとっても大きなメリットにつながるような取り組みを企画できたらと思っています。例えば、企業に赴いて健康に関する出前講座を開いたり、施設に専門家を招いて認知症予防に取り組んだり、医療的な観点を取り入れたレストランやフィットネスを併設したりなど、チャレンジしたいことがたくさんありますね(笑)。
読者へのメッセージをお願いします。

【淨司院長】元気で自分らしく生きていくために、お悩みの方がいらっしゃれば、何でも相談してください。外来は4人の医師が当番制で対応しているため、けがや腰痛などの外科的なトラブルから、内科全般、健康診断後の精密検査まで幅広く対応しています。また、週に1度循環器内科の先生にもお越しいただいているので、胸の症状や心臓に関するご相談もお受けできます。当番表をご確認の上いらっしゃってください。地域に根差し、地域に必要とされる医療機関となれるよう、これからも力を尽くしてまいります。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック/4万4000円