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山田 健悟 院長の独自取材記事

さとう糖尿病・訪問診療クリニック

(桑名市/西桑名駅)

最終更新日:2021/10/12

山田健悟院長 さとう糖尿病・訪問診療クリニック main

桑名駅から車で約10分。「さとう糖尿病・訪問診療クリニック」は目抜き通り沿いにあり、看板も大きくわかりやすい。山田健悟院長は勤務医時代に複雑な想いを募らせ、開業。糖尿病専門の医師として地域医療に貢献し、クリニックとしては訪問診療にも力を注ぐ。柔和な人柄から、患者はもちろんスタッフとのコミュニケーションも円滑であることを感じる一方、厳しい現実も伝える率直な語り口が印象的。今や日本の国民病ともいわれる糖尿病のリアルな話を聞いた。

(取材日2020年7月20日)

万病のもとである糖尿病と向き合い続けて

開業の経緯をお聞かせください。

山田健悟院長 さとう糖尿病・訪問診療クリニック1

僕は市立四日市病院や中京病院、稲沢市民病院など地域の基幹病院に勤務してきて、その地域の開業医の皆さんが治療は難しいと判断された患者さんをご紹介いただいてきました。しかし実際には、それだと手遅れなことが多いんですね。糖尿病については最近よくメタボリックドミノといわれ、最初に生活習慣がうまくいかなくなり、体脂肪、内臓脂肪が増え、内臓脂肪から各種の悪い症状が出てきます。肥満そのものが問題だと血管にダメージを及ぼし、最終的には糖尿病の合併症が起こることも。合併症の治療は悪化を防ぐことが主な目的となり、現在の医学では合併症を治療してゼロに戻すことは難しいのです。だから、健やかな生活を送っていただくためには、健康診断で異常が出たらすぐ専門的な治療に取り組んでいただくのがベストじゃないかと。患者さんの健康状態を保つためには気軽に通いやすい医療を行って細かく生活指導するのが理想だと思い、開業に至りました。

糖尿病を専門になさった経緯は?

「万病のもと」だからですね。がんの治療を志す先生の中には、最終的にがんを切り取らなければ良くならないということで内科から外科に転向するケースがあるんですけど、やはり根本から治療したいと思うものなんです。研修医時代から内科をいろいろ回ってみても、心筋梗塞や脳梗塞というのは結局、行きつく先だと感じました。小さな病気が積み重なって、最終的に爆発した状態。そうであれば、もっと早期から介入することもできると思うんです。患者さんが助かることを考えていたら、この道を選んでいました。

もう一つの柱、訪問診療を利用されるのはどういった方が多いですか。

山田健悟院長 さとう糖尿病・訪問診療クリニック2

人数的には施設に入っている方が多いですね。おそらく三重県の地域事情なんですが、ご自宅で最期を看取ることが全然普及していなくて。病院に入居されたり介護老人保健施設で晩年を過ごされたり、おうちでのケアがままならなくなるとサービスつき高齢者住宅などを利用される方が多いと思うんです。だから当初は、そういった施設とタイアップして治療することが多かったです。でも最近、当院の佐藤沙未先生が特に頑張っているんですが、がん末期の患者さんを自宅に帰したいという想いがあるんですよ。もともとこのクリニックは訪問診療を掲げていたので、それを彼女が実践しています。

患者一人ひとりの生活や心情に配慮する

診療方針や心がけていることを教えてください。

山田健悟院長 さとう糖尿病・訪問診療クリニック3

診療の垣根を低くして、通いやすい環境や雰囲気をつくることですね。また、患者さんと横並びで付き合えるようなフラットな関係でいたいとも思っています。それから、医療費が高くなってしまうことってありますよね。ですから、それだけのお金を払って通おうと思っていただけるような、「行って良かった」という心情的なお土産を持ち帰っていただけるような、あるいは、体の中の悩みを一つでも消していただけるような何かが必要だと思うんです。例えば、これから暑くなるので脱水症状にならないよう「こんなことを注意しましょう」「飲み物はお茶かお水にしましょう」といったことをアドバイスする。今であれば、新型コロナウイルス感染症予防の注意喚起もしますね。皆さん基礎疾患があるため質問も多いので、知っていることには応え、不安解消に努めています。

糖尿病治療の難しさは?

いわゆる教科書的ではない、オーダーメイドのような治療をめざさないといけないんですよね。患者さん一人ひとり体が違いますから、糖尿病治療の決定版はあり得ないと思うんです。「食べるな、運動しろ」と言われることも多いと思いますが、これはできないですよね。まず指示が具体的じゃないし、何に注意したらいいのかもわからない。それに糖尿病の方は努力しているんだけど、努力する方法を間違っていることも多い。努力が正しいのか間違っているのか。患者さんの話も聞いてデータを精査し、頑張った分と結果が出る方法を結びつけるのが医師の役目だと考えています。

予防の観点で気をつけるべきことはありますか。

山田健悟院長 さとう糖尿病・訪問診療クリニック4

出産を経験した方で、妊娠糖尿病といって妊娠時のおしっこに糖が出た方もいると思うんですが、放っておくとその多くが後年、糖尿病になります。だから血糖値が正常に戻っても、年に一度の健康診断を受けることが大事。お子さんで手一杯かもしれませんが、ご自身の体も大切にしてほしいですね。女性の場合はもう一つ、無理なダイエットをしないこと。食事を抜いて体重が落ちると、脂肪も筋肉も落ちます。筋肉が落ちると基礎代謝も落ちるので、普段の生活に戻した時、相対的に食べ過ぎとなることも。スタイルを良く見せたいなら、やるべきは筋トレ。体脂肪率計測つき体重計など利用して、それを結果で追いかけてほしいんです。体重は同じでも、体脂肪が減れば筋肉は増えていてプロポーションも良くなるはず。「見える化」を図るとモチベーションも上がり、間違った方向にも行きにくいですよ。

通いやすい環境、選ばれるクリニック

検査設備も充実していますね。

山田健悟院長 さとう糖尿病・訪問診療クリニック5

当日に結果が出せるだけでなく、時間も気にしているんですよ。糖尿病という病気だけであれば血糖値、ヘモグロビン、尿を定期的に測り、3ヵ月から半年に1回のペースで他の検査も詳しく行います。血糖値、ヘモグロビン、尿の検査は約5分で結果が出ますから、次の患者さんと間隔が空いていれば、採血しながら雑談をして、結果が出たら診察に入ります。患者さんにとって時間が読めないのは一番の苦痛でしょう。そこが少しでも解消されると動きやすくなり、忙しくても通院しやすくなると思います。特に働き盛りの方の糖尿病治療は、時間的負担をかけないこともこつ。糖尿病は、当初は痛くもかゆくもないので、通わなくても平気なんですよ。でも水面下では病気が進んでいくので、実は困ることが出てくる。働かないと周りに迷惑をかけるとか、仕事をしている方には目の前の悩みがあり、自分のことを後回しにしてしまうので、少しでも通いやすくすることが大事です。

糖尿病の一番怖い点は何でしょうか。

合併症という言葉はよく耳にするでしょうけど、どういう状態かわかりますか。糖尿病は血管の病気でもあるので全身に関わります。目の血管が悪くなれば網膜症を発症することがありますし、腎臓の血管が悪くなれば人工透析が必要になることもあるほか、手や足の血管が悪くなれば壊死につながってしまうこともあります。そうなって困るのは誰だと思いますか。家族のためを思って頑張って、糖尿病の治療をせず一生懸命働いても、結果的に家族を苦しめる行動だったということにもなってしまいかねません。大きな病院まで行ってしまった患者さんにこういった話をするのはつら過ぎます。僕たち医師としても、それを事前に防ぐため患者さんと向き合って、最悪の事態を避け、命を大切にしていくことが今のモットーですね。

今後の展望をお聞かせください。

山田健悟院長 さとう糖尿病・訪問診療クリニック6

もっと知名度を上げて、最初の段階で来ていただけるクリニックになることですね。僕も手の届く範囲しか対応できないので、その範囲を少しでも広げようと。こちらから患者さんを追いかけることはできませんから、健康診断をきちんと受け止め、自らの足で適切な医療機関として選んでいただけるケースを増やしたいですね。患者さんには「この程度の症状だから、この医師でいいだろう」ではなく、確かな目をもってクリニックを選んでほしい。先を見据えている医師かどうか、見極める目を持っていただけたらいいなと思います。

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