伊坂 聡子 副院長の独自取材記事
さとこ整形外科 三浦内科 みちこ小児科クリニック
(丸亀市/宇多津駅)
最終更新日:2025/05/19

丸亀市の中心市街地に構える「さとこ整形外科 三浦内科 みちこ小児科クリニック」は、内科医師の三浦卓二先生と、妻で小児科医師の三浦美智子先生が2008年に開業したクリニックだ。2017年からは、夫妻の娘で整形外科医師の伊坂聡子副院長と夫の伊坂陽先生も加わり、子どもから大人まで通うことができる「家族のかかりつけ医」として診療。また2022年には、現在の医院名へと名称変更も行っている。ハキハキとした受け答えが気持ちの良い伊坂副院長は、専門である小児整形の分野から、女性ならではの整形外科疾患まで対応。近年は「運動器美容」という概念を提唱し、運動器疾患の予防医療にも力を注ぐ。しなやかに、そして軽やかに数々のアプローチを打ち出しながら、地域の健康寿命延伸に取り組む姿がまぶしい伊坂副院長を取材した。
(取材日2021年11月25日/情報更新日2025年4月8日)
女性医師として、女性に多い整形外科疾患に対応
副院長に就任されるまでの経緯をお聞かせいただけますか?

私は丸亀市の生まれで、東京の順天堂大学医学部に進学しました。卒業した後は大学の付属病院に勤務し、大学院などを経て、2017年に帰郷。当院の副院長に就任しました。ここはもともと、私の両親が開業したクリニックです。当初は丸亀市内の別の場所で開業していたのですが、2008年にこちらで移転・開業。私と夫が帰ってきた後は、整形外科を主体としながら、内科・小児科と3科で連携する体制を取っています。私は小児整形と骨粗しょう症、夫はケガやスポーツ障害、変形性関節症などが専門分野です。互いの専門性を生かしながら、ご家族皆さんのかかりつけ医をめざしています。
いつ頃から、医師という職業を意識されたのでしょうか。
小学校2年生の頃からでしょうか。当時は学校から病院に行き、そこで宿題をしたり、病院から習い事まで移動したり。そうやって、両親や母方の祖父の働く姿を間近で見るうちに、自然と「お医者さん」が憧れの職業になりました。最初に進もうと思ったのは、父と同じ内科です。けれども外科の研修で、手術を受けた後にとても喜んでいる患者さんを見て、「こんなふうに、患者さんの気持ちを元気にできるような診療がしたい」「外科医になりたい」と思うようになりました。
整形外科に進んで良かったと思われるのは、どのような点ですか?

一番良かったなと思うのは、幅広い年齢層の方々を診られるという点ですね。当院にも幼児から高齢者の方まで、さまざまな年代の方がおみえになります。それから、女性であることを生かせるのも良いところだと思っています。整形外科は男性医師が多いのですが、整形外科にかかる女性の患者さんはたくさんいらっしゃいますし、女性ならではの疾患も多いんです。更年期に入った女性は、四十肩や五十肩、肩凝り、腰痛などに加えて、骨粗しょう症なども起きやすくなります。指の第一関節に腫れや変形が生じる、へバーデン結節も多いですね。当院では同じ女性の整形外科医師という立場から、こうした揺らぎ世代の方々のお悩みに寄り添うことが可能です。「指が腫れて指輪が入らない」なんてお悩みも、女性相手なら話しやすいのではないでしょうか。皆さんが日常生活を快適に過ごせるようサポートしますので、不安に思われている方はご相談にいらしてください。
整備した環境下で「運動器美容」を提唱
2024年の7月にはリハビリ室を拡張し、ピラティス専用ルームを作られました。

こちらへ帰ってきた当初から、リハビリにピラティスを応用したいと考えていました。ですが場所が限られていて、体を十分に動かしたり、専用の器具をまとめて設置したりといったことができなかったんです。そこで約1年かけて増改築工事を行って、エックス線検査の操作室や骨密度検査室、内視鏡検査室を移動させ、リハビリ室の一区画に、ピラティス専用ルームをオープンしました。このお部屋には専用のロッカースペースや、運動後に身だしなみを整えられる手洗い場も用意しています。皆さんをポジティブな気持ちにできるような、明るい空間を作りましたので、気持ち良くピラティスに取り組んでいただければ幸いです。
リハビリにピラティスを応用すると、どう変わるのでしょうか?
通常のリハビリでは筋肉をやわらかくして、関節の滑りを良くするための局所的な治療を行うのですが、これに正しい体の動きを意識するピラティスを応用すれば、体全体のバランスを整えられると考えています。整形外科の疾患は、その原因となった体の動きや癖を改善しないと、再発を繰り返してしまうものが多いんです。自分の間違いを正しく理解して、リハビリが終わった後も、修正した体の使い方を維持していく。「モーターコントロール」をするために有用なのが、ピラティスのメソッドだと思っています。加えて最近では、もっと予防的な観点からもピラティスを取り入れたいと思うようになりました。健康寿命を縮める原因の多くは、運動器疾患です。運動器疾患を未然に予防して、健康寿命と平均寿命の差を縮めていくためには、未病の段階から運動器にアプローチすることが必要なのではないでしょうか。
「運動器美容」という、新しい概念も考案されました。

予防の観点から「運動器」という言葉を広めていくために、「運動器美容」というコンセプトを立ち上げました。体が動きにくくなってから整形外科に行くのではなくて、40代、50代、60代のうちから運動器に興味を持っていただくこと。その年代から、「運動器を美しく健康に保つ」ために必要な食事や運動について理解をしていただくこと。今はそれを目的とした活動に力を注いでいます。ピラティスも、「運動器美容」につながる運動の一種です。ピラティスで正しく自然な体の使い方を身につけられれば、膝や腰などの痛みの出現を遅らせて、健康寿命を延ばせるかもしれません。ピラティスにはマットとマシン、2通りのやり方がありますが、初心者には体の左右差を確かめやすい、マシンを使ったピラティスがお勧めです。当院ではリハビリなども担当しているスタッフが丁寧に指導しますので、初心者の方でも安心して取り組めると思いますよ。
さらに医学的根拠に基づいたアプローチを
先生のご専門である、小児整形のお話も伺いたいです。

小児整形の分野では、近年2つの問題があると感じています。1つは小学生を中心とした、「運動の二極化」です。今日はサッカー、明日は水泳と毎日のように運動をする子がいる一方で、家に帰ったらスマートフォンを見たりゲームをしたりと、まったく運動しない子も増えています。運動をしない子は、体が硬くなったり骨折しやすくなったりします。高齢者の運動機能の衰えを表した、「ロコモティブシンドローム」という言葉がありますが、実はお子さんにも同じような現象が起こっているんですね。子どものうちから丈夫な体をつくることが、将来的な健康寿命の延伸にもつながりますから、こうした「子どもロコモ」の問題についてもしっかりと訴えていきたいです。
もう1つの問題は何ですか?
ビタミンDの摂取不足や、外遊びの減少などから体内のビタミンDが十分に生成されず、骨がやわらかくなってしまう「くる病」です。近年は、乳幼児期にくる病を発症するお子さんが増加傾向にあります。1歳半くらいで、O脚が目立つ場合はくる病の疑いが持たれますので、早めに整形外科を受診するようにしてください。ちなみに、ビタミンDが不足しがちなのはお子さんだけではありません。「日本人の98%はビタミンD不足」という国内の報告もあります。特に、更年期の女性は女性ホルモンの分泌量が低下することで、骨粗しょう症のリスクが高まりますので、サプリメントなどでのビタミンDの摂取や、定期的な骨密度検査がお勧めです。
最後に今後の展望と、読者へのメッセージをお聞かせください。

「運動器美容」についての情報発信を強化しながら、運動面でも栄養面でも、さらに医学的な根拠に基づいたアドバイスやアプローチを提供していければと思っています。薬や手術、リハビリで受け身の治療をして終わるのではなく、誰でもない自分の意思で、もっと根本的な原因を見直していきましょう。人間は必ず年を取っていきますが、大切なのは自分が何歳まで、どんなふうに生きるのか、その具体的なイメージを持つということです。当院では定期的なイベント開催やピラティスのレッスン、栄養指導などを通して、これからも皆さんが骨や筋肉、関節、神経などの運動器を美しく健康に保ち、そして人生の最後まで、楽しく自立した日常生活を送るためのサポートを続けていきたいと思います。