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石川 智司 院長の独自取材記事

嶺井第一病院

(浦添市)

最終更新日:2021/10/12

石川智司院長 嶺井第一病院 main

他院との「顔の見える連携」を大切に脳神経外科疾患の回復期治療を行う「嶺井第一病院」。4代目院長の石川智司先生は、急性期病院を回ってきた経験とコネクションを生かし、患者からも医療者からも選ばれる病院づくりに取り組んでいる。治療では、脳血管疾患・頭部外傷・脳腫瘍の術後の後遺症に対するリハビリテーションや、整形外科手術後の運動機能障害に対するリハビリに注力し、MRI、マルチスライスCT、脳血流装置などの医療機器を充実。脳疾患の早期発見を目的とした「脳ドック」にも力を入れる。「患者さんやご家族から『嶺井第一病院を選んで良かった』と思われたい」と語る石川院長に、リハビリに対する思いや、急性期の病院との連携、脳ドックについて話を聞いた。

(取材日2020年7月10日)

「顔の見える連携」を心がけ、回復期のリハビリに注力

まずは、嶺井第一病院の歩みと、先生のご経歴を教えてください。

石川智司院長 嶺井第一病院1

当院は1976年に嶺井進先生が「脳神経外科嶺井病院」として創設し、脳神経系の疾患に特化した、急性期の治療を一手に引き受けてきました。近年は時代の変化やニーズに対応して、回復期のリハビリに力を入れています。病床数は103床で、うち特殊疾患病床を含む一般病棟が25床、回復期リハビリ病棟は78床となっています。私は1994年に琉球大学を卒業後、急性期の脳の血管障害を中心に、大浜第一病院、沖縄県立八重山病院、南部病院など那覇南部地区の病院で、急性期の脳疾患治療に携わり、2016年にご縁があって前任の大城隆前院長の後任とし就任しました。

こちらではどのような治療が受けられますか? また診療で大切にしていることもお聞かせください。

現在は、県下の急性期病院や療養型病院などと連携し、脳血管疾患や頭部外傷、脳腫瘍の術後の後遺症に対するリハビリや、整形外科術後の運動機能障害に対するリハビリをメインに行っています。日々の診療で意識していることは「顔の見える連携」です。私が急性期にいた頃、治療した患者さんを回復期治療の病院へ送り出す度に「あれからどうなっただろう?」と気になっていたので、現在は急性期の先生に対し「ここまで回復したよ」と報告をするようにしています。先生方からは「励みになる」と喜ばれていますよ。また、脳外科の先生から紹介があった場合は断らず、すぐに受け入れる旨を伝え、スタッフがその病院へ患者さんの状態を確認に行くことを徹底しています。

どのような患者さんがいらっしゃいますか?

石川智司院長 嶺井第一病院2

基本的に中高年や高齢の方が多いですね。また、当院は「MRI・マルチスライスCT・脳血流装置」などの医療機器を充実させているため、急性期病院からの紹介のほか、近隣のクリニックから「MRIを撮ってほしい」という依頼もあります。症状では「頭痛がする」「手足に力が入らない」「手足がしびれる」など。頭痛はほとんどの場合、MRIで調べると片頭痛や緊張型頭痛といった「機能性頭痛」ですが、中には動脈解離が見られることもありますので、必要に応じて専門の急性期の病院を紹介しています。このほか小児では「頭を打った」「転んでけがをした」などの外傷、小学校高学年からは頭痛で受診する子もいます。若年層の頭痛には、脳に血液を送る太い血管の終末部分がふさがっていく「もやもや病」が隠れていることもあるので、注意しながらMRI検査画像をもとに判断していくこともあります。

「現実」と「次の段階」を見据えたリハビリ

こちらで行っているリハビリについて教えてください。

石川智司院長 嶺井第一病院3

スタッフや介護・看護のプロなどの多職種で、一人の患者さんのリハビリをどのように進めていくか、目標をどこに持っていくかを考えながら進めています。例えば、脳卒中のリハビリは発症してから2~3ヵ月が勝負といわれています。その間に集中的に行い、後半では患者さんが「自宅に帰る」のか、介護サービスを受けられる「施設で過ごす」のかで方向性を定めます。自宅に帰るならリハビリを徹底的に、これ以上の改善が難しい場合はケースワーカーさんなども入れて、次のステップに向けた治療に切り替える。患者さんにとって一番良い方法を皆で考え「良いと思うことはやって。最後は私が責任を取るから」と伝えています。

日々のリハビリで心がけていることは何でしょうか?

患者さんやご家族から「嶺井第一病院を選んで良かった」と思ってもらえるよう、現実と次の段階を見据えた対応を心がけています。しっかり画像を分析し、治る方には「歩ける可能性は十分にあります」とお伝えしどんどんリハビリをしてもらいます。一方、回復が厳しい場合は「この部分が破壊されているから」と理由をお話しした上で、「病気の右手も、元気な左手もあなたの手。左手で一緒に頑張りましょう」のようにお伝えします。もちろん、私たちの予測を超えて驚くような回復を見せる方もいらっしゃいますので、スタッフの意見を聞きながら慎重に進めています。リハビリの目的は自宅に帰ることであり、最終目標は社会復帰。急に体の自由が利かなくなり落ち込んでいる患者さんとご家族のためにも、嘘はつかず方向性を定めていきたいですね。

脳ドックにも力を入れていらっしゃいますね。

石川智司院長 嶺井第一病院4

沖縄県は若い方の脳卒中が多いので、健康診断と同じような感覚で脳ドックを受けてほしいと考えています。当院の脳ドックではMRIとマルチスライスCT、そして脳血流装置で脳疾患の早期発見に努めるとともに、診断結果はできるだけ対面でお伝えし、書面でも「このような症状が見つかったので、定期的に検査を受けましょう」「小さな動脈瘤で破裂率は数%ですから、定期的に検査をしていきましょう」など、ただ脅すのではなく予後やリスクについても説明を加えるようにしています。また、異常が見つかった場合は、必要に応じて県下の急性期病院にも紹介をしています。多くの方が受けられるよう費用を抑え、市の助成もあることから毎年、予防を兼ねて受ける方もいらっしゃいますよ。

患者からも医療者からも「選ばれる病院」をめざす

スタッフをとても大切にされていますね。

石川智司院長 嶺井第一病院5

嶺井進先生から教わった「職員が幸せな気持ちで、気持ちよく働ける環境づくり」を大切にしています。スタッフが不満を抱えていると自然と表情に出て、結果的に患者さんもストレスを感じることになってしまうので、スタッフにはいつも「何かあれば言って」と伝えています。また、リハビリの現場にも顔を出し、定期的に多職種で意見を述べ合う機会も設けています。私自身、驚いたのですが当院はスタッフの定着がとてもいいんです。医療職も介護職も、しっかり定年まで勤めてくれる方が多いおかげで、経験と技術を高く維持していくことにつなげられ、ベテランと若手のバランスも良い。これは当院の自慢で、次の代にもこの体制を引き継いでいきたいですね。

先生が医師を志したきっかけを教えてください。

中学3年生の時に、脳出血で倒れた父の影響が大きいですね。49歳で倒れ手術を受けたのですが、当時はまだリハビリという考えが浸透しておらず、大阪までリハビリを受けに行きました。あの頃は自宅介護も大変で、私は母の苦労をずっと傍らで見てきました。残念ながら父は2回目の出血で亡くなりましたが、当時の経験から脳外科の医師を志し25年以上、脳の血管障害の治療に携わっています。こうした経験から、突然日常を奪われた患者さんの気持ち、そしてご家族のショックや戸惑いも理解しているつもりです。これからも父のことを忘れず、患者さんやご家族の心に寄り添いたいと思っています。

今後の展望をお聞かせください。

石川智司院長 嶺井第一病院6

これからも急性期病院を回ってきた経験とコネクションを生かし、患者さんからも医療者からも選ばれる病院をめざします。「顔の見える連携」により、対応可能な疾患は責任を持って診療し、全身麻酔が必要なものは専門の医療機関に紹介するなど、患者さんにとってベストな医療を提供していきたいですね。また、私自身も現場を行き来しながら情報交換や報告をこまめに行い、急性期の先生にも時間があるときは、自身が担当した患者さんを見に来てもらうことで、言いたいことが言い合える信頼関係を築いていきます。学生時代に脳外科の初代教授から教わった言葉「脳外科の医師は見えない廊下でつながっている。先輩や後輩が困っている時は、皆で助け合ってやっていきなさい」を胸に刻み、これからも診療を続けていきます。

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