輿石 薫 院長の独自取材記事
かおり子どもクリニック
(世田谷区/駒沢大学駅)
最終更新日:2025/09/26
駒沢大学駅から徒歩約7分の駒沢公園通り沿いで、子どもとママのための診療に取り組んでいるのが、「かおり子どもクリニック」だ。ライオンの親子のかわいらしいロゴマークが印象的な同院。輿石薫(こしいし・かおり)院長は、小児科が専門の医師としての長年のキャリアと大学院で学んだ心理学、3人の子育て経験を生かし、小児科一般から予防接種、乳幼児健診、育児・発達相談、思春期内科まで、子どもの病気や健康の維持、悩みまで幅広く対応している。「お子さんの病気はもちろん、お母さんが子育てを通して抱える不安や悩みについても一緒に考えていきたいですね」と、優しい笑顔で語る輿石院長に、診療の取り組みや地域の小児医療への思いなどを聞いた。
(取材日2025年6月30日)
子どもの病気や子育ての悩みに幅広く対応
親子のライオンのロゴマークがかわいいですね。

ライオンをテーマにしているのは、実はトラがきっかけです。私が寅年生まれであること。そして、トラはお母さんが一人で子育てをする動物なので、子育てを頑張るお母さんのイメージにぴったりだと思ったのです。ただ、トラにしてしまうとお父さんが仲間外れになってしまうので、家族の象徴としてライオンを選びました。受付カウンターのライオンは、大理石を薄く切った上に直接描いてもらったもので、お子さんたちが触ったり蹴ったりしても大丈夫です。また、お母さんが安心して過ごせるクリニックにしたいと考え、院内の色合いもお母さんが安らげる優しい色を選びました。待合室におもちゃを置いていないのは、感染症のリスクを考慮してのこと。代わりに絵本を用意しています。なるべくお待たせしないように心がけていますが、待ち時間にはお母さんと一緒に絵本を読んだり、お話をしたりして過ごしていただければと思います。
どのような患者さんが利用していますか?
赤ちゃんから未就学のお子さんが多く来院されます。私自身、育児で苦労した経験があるので、赤ちゃんとそのお母さんに来ていただけると、とてもうれしいです。診療内容としては、風邪などの一般診療のほかに、皮膚症状や食物アレルギー、チック症、夜泣き、さらには、心理的な問題の相談もあります。また、予防接種や乳幼児健診も行っており、一般診療とは別に専用の時間枠を設けているため、待合室で病気の患者さんと一緒になる心配がありません。土曜日であれば、保護者の予定に合わせて予防接種の計画も立てやすいと思います。さらに、土曜の午後には心理や発達の相談も行っており、思春期のお子さんの不調にお悩みの方の来院が多いですね。
診療方針を教えてください。

風邪や発熱、鼻水、腹痛などの小児科一般診療から、気管支炎や喘息などの呼吸器疾患、湿疹やあせもなどの皮膚疾患、アレルギー疾患に加え、予防接種や乳幼児健診、育児や発達の相談、思春期内科まで、子どもの病気や子育ての悩みに幅広く対応しています。ここ数年は、新型コロナウイルスをはじめ、手足口病など多くの感染症が流行し、これらの診断と治療で本当に慌ただしい日々が続きましたが、最近ようやく落ち着いてきました。そのため、これまで手薄になりがちだった食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、心身症の診療に、あらためて力を入れていきたいと考えています。例えば、食物アレルギーの食物経口負荷試験や食事指導をしっかりと行い、スギ花粉やダニに対する舌下免疫療法を積極的に勧め、これまで皮膚科医院に任せがちだったアトピー性皮膚炎の治療も、あらためて私自身が丁寧に診ていこうと思っています。
心理相談や予防接種、漢方薬を活用した診療に注力
心理相談について、もう少し詳しく教えてもらえますか?

大学院で学んだ心理学や、米国スタンフォード大学で発達障害を研究した経験を生かし、土曜の午後のみですが、思春期内科として心理相談を行っています。最近では、夜眠れない、朝だけおなかが痛くなるといった心身の不調を抱える子どもが増えています。背景には、スマートフォンの普及による昼夜逆転や不登校、分離不安など、家庭や学校での環境の変化が大きく影響していると考えられます。発達障害も症状が強く現れ、お母さんたちが対応に苦慮しているケースが目立つようになってきました。そのため、これまで以上にしっかりと取り組んでいかなければならないと感じています。一方で、「子どもが学校に行きたがらない」といった相談をお母さんから受けることもありますが、まずは家庭内で解決策を話し合ってみることも大切です。それでも解決が難しい場合には、医師としてカウンセリングや薬の処方など、必要な医学的サポートを惜しまず提供しています。
漢方薬も活用していると伺いました。
開院当初から漢方薬を使っており、特に最近になって手応えを感じています。例えば、イライラや不眠、腹痛などで心理的な要因が関係していると考えられる場合や、頭痛やめまいといった症状も、西洋薬だけではなかなか改善しにくいことがありますが、そうした場合に漢方薬を処方しています。漢方薬は味に独特なものもあり、飲みにくいと感じることもありますが、小さい頃から少しずつ慣れさせておくと、だんだんと受け入れやすくなります。味覚に敏感な子には、甘くて飲みやすい漢方薬を選ぶ工夫もしていますので、気になることがあれば気軽に何でもご相談ください。
予防接種にも力を入れているのですね。

ひと昔前、予防接種が今ほど普及していなかった時代には、赤ちゃんの髄膜炎や肺炎がとても多く見られました。しかし、予防接種が広まった今は、たとえ高熱が出ても、ある程度は安心して様子を見ていられるようになってきたと思います。当院では、平日の午前中は11〜12時、午後は2〜3時を予約制で予防接種専用の時間としています。通常の診療時間内でも接種は可能で、感染の心配なく受けていただけるよう、一般診療のお子さんと接触しないような動線を確保し、「隔離室」で接種を行っています。男子の子宮頸がんワクチンも公費で接種できるようになりました。お子さんの健康を守るためにも、定期接種だけでなく、百日咳やポリオ、髄膜炎菌、B型肝炎などの予防接種にも目を向けてもらえるとうれしいです。
家族を丸ごと支える診療を大切に
診療の際に心がけていることはありますか?

お子さんの病気を診るだけでなく、その家族を丸ごと支えることを大切にしています。何よりも大事なのは、親御さんが安心して帰れることです。私自身、医師になって40年近くがたち子育ての経験もありますが、これらの経験をもとに、必要なことは丁寧に説明し、わからないことは無理に断言しないことを心がけています。子どもだけでなく、ご家族全体の暮らしが安心につながる診療を、これからも続けていきたいと思っています。また、必要以上に検査をしないことも大切にしています。検査を希望される親御さんもいらっしゃいますが、例えば熱が出たからといって、すぐに検査をしても意味がない場合もあります。むやみに血液検査やウイルス検査を繰り返すよりも、これまでの経験を踏まえ、「大丈夫です」「もう少し様子を見ましょう」とお伝えすることのほうが、かえってお母さんたちの安心につながることも多いと感じています。
話は変わりますが、先生はなぜ医師を志したのですか?
専業主婦だった母からは、小さい頃から「自分一人で生きていけるように」と言われて育ちました。それで、小学2年生くらいの時に、一人で生きていける仕事を考えて思い浮かんだのが医師か弁護士だったんです。だったら医師になろうと決めました。小児科を選んだのは、次代を担う子どもたちの役に立ちたいと思ったからです。心理学を学びたいという気持ちは以前からありましたが、実際に自分が子どもを出産して育児をする中で不安を感じ、「もっといろいろなことを知りたい」と強く思うようになりました。それで、医師になって8年目に大学院に入り、心理学を学ぶことにしたのです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

目の前の患者さんにベストを尽くし、より良い医療を提供する日々を積み重ねていきたいと思っています。繰り返しになりますが、お子さんと同じくらいお母さんを応援したいと考えています。お子さんの体調だけでなく、子育て中の悩みや気になることがあれば、どうぞ気軽に相談しにいらしてください。お子さんはもちろん、お母さんの心も元気になっていただけるよう、これからも努力を続けていきたいと思っています。

