蘇我孟志 院長の独自取材記事
そが眼科クリニック
(世田谷区/豪徳寺駅)
最終更新日:2021/10/12
小田急線豪徳寺駅から徒歩2分。日差しがさんさんと降り注ぐ明るい待合室が印象的な「そが眼科クリニック」は2014年1月に開院したばかりのフレッシュなクリニックだ。蘇我孟志院長自らがショールームに足を運び、選んだというこだわりの壁紙や床材は清潔感に溢れている。130余年の伝統があり、「『眼』の総合病院」として名高い「お茶の水・井上眼科クリニック」で研さんを積んだ蘇我院長の専門は白内障や緑内障、眼瞼下垂、網膜硝子体、涙道閉塞と豊富。「一日約100人診察していたので、眼科の疾患に関してはまんべんなく診られます」と自信を見せる。検査機器も大学病院と同等のものを導入し、疾患の早期発見、確実な診断に努めている。「患者さんの不安を取り除き、地域に根ざしたホームドクターをめざしたい」と語る蘇我院長は、開業から日数が浅いにもかかわらず、すでに地域の患者から厚い信頼を得ている。そんな先生に話を伺った。
(取材日2014年4月14日)
毎日100人を診察した勤務医時代、眼科医として一通りの技術を取得
なぜ医師をめざされたのですか。また、眼科医を選ばれた理由は?
父が小児科医ということもあって、小さい頃は医師かパイロットになりたいと思っていました。でも、小学校6年生で卒業文集に将来の夢を書く時に、あらためてよく考えたら人の苦しみを取りのぞける医師のほうが魅力的だと思ったのです。実は、私は子どもの頃、病院にかかったことがありませんでした。具合が悪くなっても、いつも父が適切に治療してくれたおかげです。苦しんでいる時に、目の前で何かをしてあげることで、苦しみから開放してあげるというのは子供ながらにすごいことだと思っていました。それを毎回、体感していましたから、幼心にも医師はかっこいい職業だなという気持ちがありました。なかでも、眼科をめざしたのは、顕微鏡を使う細かいオペへの学問的好奇心と、手術の結果がすぐに劇的な変化をもたらして患者さんに喜ばれるという理由ですね。
実際に眼科医になられていかがですか。
人間は情報の80%を視覚から得ていると言われています。もしも、後天的に見えなくなると、単純に考えて80%の情報が入ってこなくなってしまい、一気に生活しにくくなります。それを防いでさしあげることができるのだから、幸せな職業だなと思います。実は、「もしも、見えなくなったら怖い」と来院される高齢者のかたは結構いらっしゃるんですよ。そういう方や、日々の診療を通して、見ることというのは人間にとってとても大事なことだということを痛感しています。眼科医になってよかったなと思いますね。
開院の経緯を教えていただけますか?
医師になった時から、いつかは開院したいと考えていました。もともと患者さんの苦しみをその場ですぐに対処してやわらげてあげるというのが、私にとっての医師のイメージでした。地域に根ざし、どんな些細なことでも相談してもらえるような「ホームドクター」になりたいと思っていたのです。大学卒業後、東邦大学医療センター大橋病院で眼科専修医として勤務した後、「『眼』の総合病院」であり、創業130年の歴史がある「お茶の水・井上眼科クリニック」に勤務したのですが、その頃気付いたことがあります。それは軽い疾患でも、半日近くを費やして、わざわざ大きな病院を受診されるかたが数多くいらっしゃるということです。おそらく、大病院なら安心だというイメージで受診されていると思うのですが、半日がかりというのは、やはり患者さんの負担ですよね。そんな負担は負ってもらわなくても済むように、「地域のクリニックでも大病院と変わらない医療を受けられる」という安心感を提供していきたいと考えています。軽い病気の治療は当クリニックで完結できて、どうしても入院や手術が必要な専門性が高い疾患に関しては、井上眼科クリニックと医療連携をして、信頼できる医師をご紹介していきたいと思っています。現在も非常勤医師として週1回、診療を行っていますので、スムーズに連携できることも、当クリニックの強みですね。
井上眼科クリニックでは、多くの患者を診察されていたそうですね。
緑内障やまぶた、角膜などと専門が細かく分かれていて、そこをローテーションするので、一通りの疾患は診ることができます。専門としては、白内障や緑内障、眼瞼下垂、涙道閉塞なのですが、井上眼科クリニックではまんべんなく診ることができるように多くのことを勉強させていただきました。常勤だった頃は一日約100人の患者さんを診ていましたので、目に関するさまざまな疾患の患者さんを診てきたと自負しています。白内障の手術も、医師になって早い段階からやらせていただいていました。さまざまな疾患の治療にあたり、また、多くの患者さんを診察させていただくことで、眼科医としての自信がつきましたね。
正しい情報を伝えることで、不要な不安を減らす
患者の訴える症状や治療法を教えてください。
今のところ患者さんは地域の高齢者の方が全体の8割くらいで、症状としては「かすむ」「ぼやける」「乾く」といった症状を訴えられる方が多いです。疾患名で挙げるとすれば、白内障や緑内障、ドライアイなどですね。白内障の治療は、目薬で治療する場合と、視力が落ちて、日常生活に不自由を感じていらっしゃる場合には手術をすすめます。ただ、開院してからの3ヶ月間で手術が必要な方は、まだまだ多くありません。そこまで症状が悪化しないうちに来院されることが多いようで安心しています。緑内障も目薬での治療が主です。点眼でコントロールできることが圧倒的に多いですね。緑内障は原因が完全には解明されていないこともあって、完治はまだできないのですが、点眼でコントロールできるようになるので症状が軽いうちに発見できたほうがいいです。早期発見、早期治療が大切な疾患となるので、40才以上の方には眼科健診をすすめています。
患者と接するときに心がけていることはどんなことでしょうか。
患者さん自身に自分の状態を正確に把握し、理解してもらって、不要な不安は減らしてさしあげるということです。インターネットで調べたり、周囲の人に聞いたりして、間違った知識を得て、不安がっているケースがあるんです。緑内障イコール失明、白内障イコール手術などと必要以上に心配される人も多くいらっしゃいます。そういう方には、失明する人は全体の何パーセントというデータを示したり、手術のタイミングなどを正しく理解してもらうよう努めています。また、同じ緑内障でも進行度合いによって症状はまったく違っていて、生活のしやすさや、ものの見えやすさは全然違います。そういうことも、なるべくわかりやすい言葉で、「今はこの段階で、今後はこうなっていきます」と具体的に伝えるようにしています。
最新の検査機器を導入されているようですね。
はい。さきほども申し上げましたが、「地域のクリニックでも大病院と変わらない医療を提供したい」という考えで開院しましたので、大学病院と同等の機器を導入しました。特徴的なものといえば、網膜の断面を観察するための「OCT(光干渉断層計)」です。これは、緑内障の超早期発見や、黄斑疾患などの診断を可能にします。ほかにも、直接、眼に触れることなく、眼圧を測定できる「ノンコンタクトトノメーター」や、緑内障の早期発見や診断、経過観察に欠かせない「ハンフリー視野計」、眼底の細部を確認できる「眼底カメラ」なども配備しました。これらを駆使して、疾患の早期発見に努めたいと考えています。
患者本位の治療を行い、症状の悪化を防ぐ
印象に残る患者さんとのエピソードを教えていただけますか。
ある時、緑内障の70代女性が、私が処方した目薬が合わないと言って来院されました。目薬を差すとかすんでしまって、物がまぶしく見えてしまうということでした。お話をよく伺い、診察しましたが、目の表面が荒れるとか、まぶたがただれるといった薬の副作用の所見はありませんでしたので、今の症状には、やはりこの薬がいいと、詳しく説明しました。患者さんにも納得していただいて、そのまま同じ薬を継続してもらうことになりました。その時、そのかたが「こんなことなら、もっと早く相談すればよかった。話を聞いてもらったから、安心して薬を使えます」とおっしゃったのです。それは、とてもうれしかったですね。緑内障の場合、薬を使わないと進行していってしまうので、医師が気付かないうちに薬を中断されてしまうというのが一番怖いのです。患者さんの立場に立った治療をしたいということが私のモットーですから、薬を処方したことだけで満足してしまい、実は患者さんのほうで自己中断してて症状が悪化していたら意味がないです。もし薬が合わないと感じたり、何か不安なことがあったりすれば、納得がいくまで説明をして、それでも納得いただけない場合は、その方の使いやすい薬を処方していきたいと思っています。
お忙しい毎日だと思いますが、どのようにリフレッシュされていますか。
妻が小児外科の勤務医で、二人とも比較的時間がとりやすい日曜日には、2歳10ヶ月の長女と9ヶ月の長男と一緒に公園で遊んだり、外食を楽しんだりして家族で過ごす時間を大切にしています。最近は運動する時間がなかなか取れないので、できるだけ毎日30分程度は、家でトレーニングをするように心がけています。今のプライベートでのささやかな夢は、家族で旅行に行きたいですね。働き出してからはまとまった休みがほとんど取れていないし、家内と休みがなかなか合わないことが多いので、子どもたちがもう少し大きくなったら、ぜひ行きたいです。今から楽しみですね。
最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
自覚症状がない方でも、40歳以上なら年に1、2回は眼科の健康診断を受けていただきたいですね。何らかの違和感があるなら、自己判断せず、一刻も早く眼科を受診してもらいたいですね。それから、子どもの目の病気ということですと、斜視が気になっています。立体的に物を見る力が育たなくなったり、弱視の原因になったりしてしまうので、ちょっとずれているかなと思ったら早いうちに受診していただきたいですね。子どもは、自分ではおかしいということに気が付きません。親が気付いてあげるか、学校の検診で指摘されるくらいしか、斜視を発見する機会はありませんので様子をよく見てあげましょう。例えば、テレビを見ている時に左右の目の位置がずれているとか、物を見る時に顔を傾けている、近い距離から見ている、片目をつぶって見ている場合は、斜視に限らず、何かしら異常があるサインですから、見逃さないように、くれぐれも軽視しないようにしてあげてください。