小塙 幸司 院長の独自取材記事
こばなわ神田整形外科
(千代田区/神田駅)
最終更新日:2024/12/03

神田駅東口から徒歩1分という好アクセスの場所にある「こばなわ神田整形外科」。ジャズミュージックが流れる院内は、ブラウンとベージュを基調にしたカフェのようなモダンな空間だ。肩、腰、膝はもちろん、その他全身の疾患を診るオールラウンダーとして診療にあたる小塙幸司(こばなわ・こうじ)院長。「大切なのは、体の使い方を覚えること。そうすることで、腰痛や肩凝りなどの症状が起こりにくくなるのです」と穏やかに話す。通常であれば理学療法士が行うような指導も自ら率先して行うという小塙院長に、医院のことや地域のこと、また専門である整形外科領域のことなどについてたっぷりと話を聞いた。
(取材日2022年4月13日)
患者にリラックスしてもらうため椅子の高さも調節
ダウンライトの明かりがあって、落ち着ける院内ですね。

開業するにあたり、いかにも病院という内装は避けたいと思っていました。病院の殺風景な空間というのは、患者さんの緊張を招きやすいですしね。また私は以前、カフェのマスターになりたいという夢があったものですから、内装にはこだわりました。その一つが椅子ですね。最近の椅子は、肘掛けの位置が低いものが多いため、良肢位(りょうしい)といって体にとって良いバランスで座るのが難しいんです。当院で使用している椅子は購入時、外国製のため肘掛けの位置は良くても若干高さがある状態でした。それで、自分で椅子の足をわずかにカットしたんです。当院を選んできてくれた患者さんには、できる限りリラックスできる空間を提供したかったのです。
なぜ神田で開業されたのですか。
開業する際の候補として、迷わずこちらを選びました。というのも、亡くなった私の父が長年、神田駅の西口で「こばなわ歯科」を開業していたので、私にとってここはなじみ深い土地だったのです。私は中野で生まれ育ちましたが、神田は出身の大学もあり、第二の故郷のような存在ですね。そのため、働くなら土地勘がある場所が良いと思い、神田駿河台の杏雲堂病院でも整形外科部長を務めていました。ちなみに開業する際に、父の医院で使用していた電話番号を下4桁だけ引き継ぎました。この番号があることで父からの「思い」を引き継ぎ、地域の方に貢献していきたいという思いを込めています。
どのような患者さんが多いですか。

神田という場所柄、周辺の企業で働くビジネスパーソンの方が過半数です。そういった方はデスクワークに従事することが多いため、肩や腰の痛みを訴えて来られますね。それと、当院は特定の疾患に偏らずあらゆる症状を診ることを心がけていますので、ちょっとした風邪や予防接種を希望している方などもいらっしゃいます。ホームページを見て来られる方もいますが、ご紹介の方も多いですね。開業前は神田駿河台の杏雲堂病院と御茶ノ水の順天堂大学でスポーツ整形が得意で思春期の側湾症症を専門に診ていたので、10代の患者さんが来ることも多いですよ。また、スポーツ整形で来る患者さんはお子さんが実は多いので、必然的に小児整形が多くなるんです。お子さんから大人の方まで安心して通っていただけているのであれば、うれしいですね。
デスクワークによる肩や腰の痛みを訴える人には、どんなアドバイスをするのでしょう。
長時間のパソコン作業は肩凝りのみならず、全身の疲労感や、睡眠不足の原因となります。パソコンの作業を行う場合は肘をつき、首へかかる負荷を軽減するのが理想です。手首の痛みが出やすい方は特に負担を分散させることが大切です。作業中は知らぬ間に猫背になりやすいので、意識して両肩の位置を後ろにぐっと引くと自然と良い姿勢になると思います。最近はリモートワークで体に合わない椅子や机で作業をすることで、不調を感じる人もいるようです。枕が変わると寝苦しいのと一緒ですね。そんな方には、机や椅子の高さなどを見直すようにアドバイスします。
関節や骨を守るため「体の使い方」を覚えることが大切
先生の診療のポリシーを聞かせてください。

治療と併せて適切な体の使い方やメンテナンス方法をアドバイスするようにしています。ちょっとした動作に気をつけることで、骨や関節の持ちはずっと良くしていけるんですよ。体の使い方やメンテナンス方法を間違えたまま、膝や肩など局所の痛みの治療ばかりを行っていても根本的な解決には至りません。例えば、健康のために毎日運動する人もいると思いますが、運動のやりすぎもよくないんです。一度運動したら、次は48時間ほど空けるのがベストでしょう。リフレッシュのために毎日運動したいなら、「今日は上半身、明日は下半身」というようにパーツを変えたり、強度の高いトレーニングをした翌日は軽めのストレッチにしたりするのがお勧めです。こういった指導は理学療法士が行うことが多いのですが、当院ではできる限り私が直接患者さんを指導するようにしています。
先生自ら指導されるのですか。
はい。私自身、腰痛も四十肩も経験していますから、患者さんの気持ちがよくわかるんです。また、指導だけでなくエックス線画像の撮影なども可能な限り自分で行っていますよ。エックス線画像というのは撮影時の微妙なポジショニングによって写りが変わってくるんです。腰椎であれば寝た状態でなく、実際の荷重がかかる立位の状態で撮影したほうが評価がしやすくなるし、頸椎を撮影する際には首の位置や角度によって画像が異なってくるので微調整が必要になります。そういった調整は自分でないとできませんからね。
地域のプライマリケアも担っていると聞きました。

当院は地域のプライマリケアに貢献することを目的の一つに掲げ、どんな症状の患者さんが来ても的確な診断を行うよう心がけています。「こんな症状があるんだけど、どこに行ったらいいかわからない」という患者さんも受け入れ、速やかに適切な診断を行う地域のかかりつけ医としての役割も担っています。その後こちらで治療を行ったり、必要があれば大学病院などに紹介をしたりといった方法を取ります。ちょうど私の同輩や後輩が大学病院で教授などを務めているので、手術などが必要な場合は、そういった信頼する医師を紹介することができます。
オールラウンダーとして幅広い疾患の診断を
幅広い疾患の診断が可能なのですね。

当院は、整形外科・リウマチ科・内科・リハビリテーション科を標榜していますが、基本的には幅広い疾患の患者さんを対象としています。私は順天堂大学の整形外科に所属していましたが、教授の教えの一つに「スペシャリストたるな、ゼネラリストたれ」という言葉があります。これは、専門ばかりを極めずに幅広い疾患を診られるような医師になれという教えです。大学病院にいた頃は、主として脊椎外科とリウマチ・関節外科の専門医療に携わっていましたが、開業してからは全身をオールラウンドに診ることのできるかかりつけ医としてのスタンスで診療を行っています。特に超音波診断には力を入れており、細かい疾患や他の検査で原因がわからなかった症状は超音波で診断をしています。
女性特有の悩みにも対応していると聞きました。
更年期になると指がこわばったり、関節が腫れたり痛みを感じたりという症状が出る方もいらっしゃいます。そういう症状があって受診しても、血液検査や画像検査で異常がない場合、更年期障害を起因としている可能性もあります。「更年期の治療イコール婦人科」と思う方も多いと思いますが、肩凝り・腰痛・関節痛などがあれば、整形外科にも目を向けていただきたいですね。
最後に読者にメッセージをお願いします。

体の使い方を覚えたり足型に合わせたインソールを用いたり、ちょっとしたヒントを取り入れるだけで、その後の人生はずっと生活がしやすくなるはずです。整形外科疾患のいくつかの原因は、普段の誤った生活動作の積み重ねによるものなのです。人は年齢とともに健康を害しやすくなりがちですが、そうなる前に基本的な体の使い方を覚えておくことで、中高年期以降の関節や骨の疾患リスクをぐっと減らすことも期待できます。肩凝りや腰痛を当たり前のことと思わず、体からのサインと考えて早めに来院していただければうれしいですね。普段の生活が楽になる方法を一緒に考えていければと思います。また、患者さんに最適な治療を提案できるよう、先端の技術についても学んでいます。例えば股関節の人工関節は、最近はスポーツにも耐え得るくらい進化しているのです。そういった説明もできますので、セカンドオピニオンも含め、気軽に来院してくださいね。