山口 宏也 院長の独自取材記事
ひろ・やまクリニック
(港区/大門駅)
最終更新日:2024/12/02

大門駅から徒歩3分・浜松町駅から徒歩5分の「ひろ・やまクリニック」は、一般的な耳鼻咽喉科疾患の診療から、音声障害の診療やめまいの治療といった専門的な診療まで幅広く行っている。院長の山口宏也先生は、ベテランながら親しみやすく紳士的な笑顔が特徴だ。専門でもある音声障害の診療では、投薬による治療以外に、喉に負担をかけない発声方法を指導し、声質の改善・回復をめざしている。「患者さんの生活に合わせた治療がモットーです」と話す山口院長。同じ症状であっても患者ごとに生活スタイルが違うため柔軟な対応が必要だという。勤務医時代から長く港区で診療を続ける山口院長に、得意分野である音声障害に対する診療やめまいの治療のほか、診療の心がけをじっくり聞いた。
(取材日2024年9月6日)
めまいと声の診療を専門に日常的な疾患にも対応
こちらのクリニックの特徴について教えてください。

2025年1月で開業して20年になります。開業前には、東京専売病院(現・国際医療福祉大学三田病院)に20年以上勤務していました。私の専門は、ガラガラ声やしわがれ声、高い音が出ないなど、声の質の障害の診療とめまいの治療ですが、勤務医時代は鼻も耳もあらゆる部分を診てきました。今も専門分野はもちろん、風邪や花粉症などのアレルギーなど幅広く診療にあたっています。病院時代に治療してきた患者さんのアフターケアも引き続きすることも多いですし、そのお子さんやお孫さんが来てくれることも。困ったときに気軽に相談できるような家族の相談役でありたいと思います。
患者層や目立つ主訴はいかがでしょうか。
一般耳鼻咽喉科疾患から声やめまいの相談はもちろん、最近では新型コロナウイルス感染症の罹患後に長引いている嗅覚障害や味覚障害、インバウンド旅行者の一時的な不調の相談も多いです。私は以前はよく渡米していたので英語は苦になりません。音声に特化した診療を行っているクリニックはまだ珍しいので、声の不調で悩んでおられる方も来られます。どんな方でも真摯に向き合って治療しています。おかげさまで病院時代からお付き合いのある患者さんなどは、耳鼻咽喉科と関係ない不調でも相談してくれます。頭が痛いとか、足をくじいたとかちょっと体調が悪いとか。どんなことでも頼ってくださるのは、長年にわたって患者さんとの信頼関係を積み重ねてきた結果だとうれしく感じます。
先生のご専門である「声の質と障害の診療」とはどんなことをするのですか?

仕事などで声を使い過ぎてかれてしまった、心的なストレスで声が出ない、声の質が悪くなってしまったなど、本来の声に戻すための診療です。音声障害の診療には手術や薬物療法のほかに、発声方法の指導を行うことがあり、私はこれを渡米して学びました。声の使い方の工夫、例えば大勢の人と話す時にマイクを使うことや部屋の中央から声を出すといったことや、のどに負担のかからない発声方法などをアドバイスします。精神的な緊張や睡眠不足も関係するので診療では日頃の生活スタイルを聞くことも心がけます。無理な声の出し方を続けると声の質はどんどん悪くなってしまいます。甲高い声を出したり、大声で笑いながら話したりするのは良くありません。本来の声に比べて高過ぎても低過ぎても駄目で、その方の本来の声を取り戻せるように声の大きさや高さを指導していきます。声がかれて1ヵ月以上たつ場合は、悪性腫瘍の可能性もあるので、ご相談ください。
同じ症状でも患者に合わせて治療方法を柔軟に変える
力を入れているめまいの治療について教えてください。

めまいの治療は、耳鼻咽喉科の中では唯一「患部が見えない」部分の治療です。ほかの耳鼻咽喉科疾患の多くは、患部を見れば炎症や傷ついた部分を直に診ることができ、その部分に直接治療ができます。めまいは主に内耳の疾患で、耳を見てもわからないので難しいですが、はじめに聴力検査、脳神経症状の有無、眼球運動など、長年の経験を頼りに検査をしながら診断をつけていきます。めまいの診療で大切なことは、原因が内耳か脳かを区別することです。脳からくるめまいには危険な病気が隠れていて、急を要することもあります。聞こえが悪くてめまいがある場合の多くは耳鼻咽喉科ですが、聞こえは良くてめまいがあるパターンは脳の可能性もあります。注意を払って診療し、危険な病気が疑われる場合はMRIやCTの精密検査を受けていただいたり、専門の病院に紹介したりします。
すぐに受診したほうがいい危険なサインはありますか?
日常の危険なサインは、激しい頭痛・吐気・嘔吐や体の麻痺が続く、もしくはバランスが取れず真っすぐに立てない・歩けない状態などです。単なる内耳から来るめまいでも、一時的に類似した症状が出ることがありますが、数日で良くなります。めまいの診療では、脳神経症状の有無をみます。患者さんの頬を触って感覚があるか、目をつぶる反射があるか、手がしっかり動かせるかどうかなどを確認。次に聞こえの検査や、赤外線を利用した眼振計という機器で眼球の動きを見る検査などを行います。仕事が忙しくて放置してしまう人がいますが、不調が続いているときは早めに受診してください。早期診断・治療が大切です。過労やストレスはめまいの原因になります。仕事上休めない人でも、せめて土日はゆっくりお休みを取って好きなことをしてみましょう。楽しいことをしているとめまいは起こらないことが多いんですよ。
診療で心がけていることは何でしょうか。

患者さんの生活様式や希望に合った治療方法や薬の処方を見つけることを心がけています。同じような症状でもアプローチは個々に合わせて変えなくてはいけません。この地域はビジネスパーソンが多いので、適切な診断と治療で、なるべく早く元の生活に戻してあげることが一番だと考えています。ほかには、医師と患者という壁を作らず、友人のように患者さんに接するようにしています。言葉遣いを変えてみたり話しやすい雰囲気をつくったり。そういう態度が、患者さんとの良好な関係を築くコツだと思います。
違和感があればできるだけ早く受診を
医師をめざしたきっかけやご経歴をお伺いします。

私の父が医師だったので、後を継ぐのが当たり前だと考えていました。ある程度医師という仕事にイメージはありましたが、実際に医師になってからはこんなことができる、ということにたくさん巡り合いました。良い先輩方にめぐり合い、こうすれば良いんだとか、上手な人の手術を見て感動したことも数えきれません。医師という職業は私の性分に合った仕事だと思っています。
診療のポイントはありますか?
めまい以外の耳鼻咽喉科疾患では、まず患部を見ることが大切です。患者さんには別々の症状に思えても、耳、鼻、喉はつながっているので、2ヵ所か3ヵ所診ると実は1つの病気にたどり着きます。鼻やのどは内視鏡で撮影した映像を患者さんにお見せしながら状態や経過を説明します。映像をお見せすることは患者さんの理解や治そうという意欲の向上にもつながります。たとえ専門分野の病気でなくても、患者さんにとって少しでも良い方向にもって行くことができればと考えています。耳鼻咽喉科以外の専門機関と連携しながら総合的に患者さんを診て、患者さんにとって良い結果をもたらせるようにしていきたいです。私たち医師にとってはやはり一番大事なのは、病気を治すことですから。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

今後も専門分野を中心に家族ぐるみで受診できるかかりつけクリニックをめざしていきます。初診で患者さんの話を聞くと、前にかかって治療した病気を繰り返していることがよくあります。「治ったから大丈夫」と思わずに受診することが大切です。症状は同じでも原因が違うこともありますし、念のため検査しておくことをお勧めします。初診のときは、直近の人間ドックや健康診断の結果、お薬手帳をお持ちください。何十年も服用している薬が声の異常の原因になっていることもあります。お薬手帳などがあるとスムーズな診断につながります。当クリニックでは、患者さんに合わせた柔軟な対応を心がけています。それぞれの事情を考慮して治療しますので、少しでも困ったことがあれば気軽にご相談ください。