北村 新 院長の独自取材記事
プリンスビル歯科
(多摩市/京王多摩センター駅)
最終更新日:2022/01/14
小田急多摩センター駅・京王多摩センター駅からそれぞれ徒歩3分のところにある「プリンスビル歯科」。ガラス張りの明るい外観、清潔感のある院内からは、開院から30年以上という年月をまったく感じさせない。自身を好奇心旺盛と語る北村新(きたむら・しん)院長は、常に新しい技術、居心地の良い院内環境を追及しアンテナを張る、診療に熱心な歯科医師。2年前に咽頭がんを患った際に、帽子を贈ってくれたり、涙を流す患者がいたりしたというエピソードに、北村院長と患者との熱い信頼関係が感じられる。そんな北村院長に今回、診療や患者にかける思いをたっぷりと語ってもらった。
(取材日2019年4月19日)
院長は、専門分野の歯科医師と患者の間の架け橋に
初めに、歯科医師をめざしたきっかけを伺えますか?
祖父、父が歯科医師という環境で育った影響が大きく、自然と歯科医師をめざすようになりました。大学では卓球部に所属し、学生時代は部活動にも熱中していました。部活動を通して人脈を形成することができ、卒業後は卓球部の先輩のクリニックに勤めました。そこで先輩から、患者さんのために治療を行う姿勢を学び、その時の教えは、現在私が歯科医師として診療を行う上での礎となっています。そして3年ほどたった頃、父の友人から新しい歯科医院を任せたいという話をいただいたのです。その時は驚きましたが、これも縁だと思い、お引き受けすることにしました。開院当初はどうしたら患者さんに来ていただけるか、すごく悩みましたが、来てくださる患者さん一人ひとりに目を向け、大切にしていくことの積み重ねしかないと悟りまして、それからは徐々に来院する患者さんが増えていきました。
現在はどのような診療体制を取っていますか?
最初は1人で始めたこのクリニックも、現在はインプラント、歯列矯正、口腔外科と各専門分野の歯科医師が非常勤で在籍しています。基本的に私が治療を行いますが、専門的な治療が必要な場合、技術的な部分は専門の歯科医師に任せ、自分は診療の責任者として、専門の歯科医師から得た治療に関する情報を患者さんにかみ砕いてご説明し、専門の歯科医師と患者さんの橋渡しをする、コンシェルジュのような役割をしたいと考えています。開院より33年が過ぎ、たくさんの患者さんと出会ってきましたが、その経験から現在の診療スタイルができあがってきました。
診療におけるゴールとは何でしょうか?
歯の痛みを取る、虫歯の歯を削って詰める等のいわゆる歯科治療ももちろん行いますが、それは二の次で、私にとって治療のゴールとは、歯科治療しなくて済む口腔内環境を患者さんがご自身で維持できるように導くことだと思っています。お口には、それぞれ「お口の雰囲気」というものがあります。それはお口のお手入れを含め、どのような生活をしていらっしゃるかが如実に表れます。患者さんにはまず、現在の雰囲気をお伝えし、その変化をつかめるようになっていただきたいと思います。その感覚をつかめるようになれば、自ずとお口の健康管理に取り組まれるのではないでしょうか。診療では、お口の現状や推測される危険性などをお伝えしますが、その方の生活に立ち入ることはあまりしません。強制するのでなく、患者さんご自身で改善に向けて生活習慣をカスタマイズできるように、情報提供をさせていただく立場だと考えています。
予防歯科において大切なのは、患者自身の気持ち
では、口腔ケアに関するアドバイスはありますか?
多くの方が、歯ブラシで取らなければならないのは食べかすだと思っていらっしゃるのですが、そうではなくて、ターゲットは歯垢なのです。予防歯科において重要なのはいかに「歯垢を育てず、取り除くか」になります。歯ブラシについても、どのようなものを使ったら良いか聞かれることが多いのですが、きれいに歯垢を取り除こうという気持ちが何よりも大切で、テクニックは後からついてきます。自分の歯の模型が目の前にあって、それをきれいするのであれば、それほど難しくないはずです。口の中にあるから少々面倒なだけで、本来歯磨きはそんなに難しいことではありません。ただ、磨いているだけでは駄目です。磨けていなければいけません。そこがポイントです。
予防歯科において、患者さん自身の気持ちが大切という気づきを得たきっかけがあったのでしょうか?
インプラント治療を受けた患者さんの多くが、特別な指導もしないのに本当に歯磨きが上手になります。「これ以上歯を失いたくない、インプラントを長持ちさせたい」と本気になるからですが、このことを目の当たりにして、予防歯科とはテクニックや理論の伝達ではなく、患者さんをいかに本気にさせるかだと悟ったのです。食べ方・歯の磨き方や、そのタイミングなどどういう生活習慣が原因で、何が効果的なのか分析し患者さんの意識が予防に向かうよう、患者さんの心に響くようにお伝えすることが私の仕事です。「良いことを聞いた、ためになった」と患者さんに納得してもらい、それによって、本気で楽しく予防に取り組んでくれたらうれしいですね。そうした気持ちを思い出してもらうためにも、定期的に検診にいらしていただきたいと思っています。
学校歯科医もつとめているのですね。
私が学校歯科医を務めている小学校では、卒業間近の6年生に歯の授業をします。虫歯になる原因を話し、何か起きてから歯医者に行くのではなく「自分が歯を守るのだ」という意識を持ってもらえるようにしています。授業では、500mlの水に、炭酸飲料に含まれているのと同じ量のスティックシュガー約20袋を入れて砂糖水と炭酸飲料を飲み比べる実験をし、「炭酸飲料はおいしいでしょ。でも、こんなにお砂糖が入っているんだよ」と話します。この授業はもう7~8年続けていますが、子どもたちによって受け取り方が違うことも実感できるので、それが診療にもフィードバックされます。
歯を通してつながった、患者との縁を大切にしたい
先生が、患者さんに熱い思いを持って診療に取り組む動機とは何でしょうか。
実は、2年前に咽頭がんを患いました。それを機に、患者さんには生涯、自分の歯で食べられるようであってほしい、という思いが一層強くなりました。治療期間中の4ヵ月間胃ろうを開けて生活していたため、食べる喜びを失い、退院後も嚥下障害が続き、そのつらさを身をもって体験し、これまで治療を行う立場にいましたが、摂食障害がある患者さんのお気持ちがよくわかりました。以前ホスピスの院長先生にお会いした時に、人は亡くなる直前に好きな物を食べてから終末を迎えたいと訴える、という話を伺いましたが、歯の状況でその満足感は大きく変わってくるはずです。働き盛り世代は毎日忙しく歯科検診は後回しになりがちかもしれませんが、その頃のちょっとした気遣いの差が、60歳代以降のお口の健康状態、ひいては全身の健康状態にの差に大きく現れてくると思います。患者さんと出会ったのも何かの縁ですから、お口の管理の大切さをお伝えしていきたいです。
続いて、診療時間外の過ごし方を伺えますか?
本を読んでいますね。読書を通して、自分の経験できないことを知ることができるのが面白いです。それから、尊敬する政治家の朝食勉強会にも毎月通っています。そうした場に限らず、診療を通して患者さんからお話を伺うこともとても楽しいですし、日々学ぶことが多くありますね。特に志を持った方に憧れます。 私もまだまだ未熟ですが、いろいろな生き様を持たれている患者さんに、正面からきちんと向き合えるよう何かを持った人間に成長したいと思っています。
最後に、患者へのメッセージをお願いします。
お口の状況は、患者さんの生活環境によって変わります。例えば、決まった時間に食事を取るのが難しい仕事をされている方は、お口の雰囲気が悪くなりやすいです。お子さんの場合だと、塾に通いだす等、生活リズムが変わり食生活も変化すると当然お口の雰囲気が変わります。特にお子さんはお口の状態が変動しやすいので、3、4ヵ月に一度、成人の方は少なくとも半年に一度の来院をお勧めしています。私はこれからも治療をコーディネートする役割を果たしながら、患者さんが知恵を身につけ、ご自分の口腔内環境の改善、健康維持を図っていただけるような診療を行っていきたいと思います。そして患者さんとは歯科医院を通してお会いするのですが、ここが患者さんと歯科医師を超えたお付き合いをできるような、コミュニケーションの場になれたら良いな、と思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/1本44万円~
歯列矯正(子ども)/27万5000円~
※詳しくはクリニックまでお問い合わせください。