飯森 洋史 院長の独自取材記事
飯森クリニック
(小金井市/武蔵小金井駅)
最終更新日:2024/08/09

JR中央線・武蔵小金井駅から徒歩2分。「飯森クリニック」は開業以来20年以上、心と体の両面から患者をサポートしてきたクリニックだ。院長の飯森洋史先生は国立大学の理工学部を卒業後、医学部に入学したという異色の経歴のドクター。多くの病院で経験を積み、その豊富な臨床経験が今の診療に生かされているという。不調のある個々のパーツだけではなく、患者の全体を視野に入れた全人的医療がその特徴だ。飯森院長に、診療にかける思いを聞いた。
(取材日2024年2月1日)
心身の両面から治療する心療内科
こちらの診療の特徴を教えてください。

人間の身体的な面、精神的な面はもちろん、仕事や趣味、生活習慣などまで含め、トータルな視点から診て、その患者さんに合った医療を提供しています。最近の医学は専門分野に特化して、消化器なら消化器、循環器なら循環器、あるいは精神的な面なら精神的な面だけというように、体の特定の部位を限定して診る傾向があります。そういった分化は、学問を進化させるためには必要なことですが、実際には人間の心と体、体の部位と部位は相互に関係し合っています。精神的なストレスが体の不調につながることもありますし、逆に体の不調が精神に大きな影響を及ぼすこともあります。そういった関係性を考慮に入れて、人を全体的に診ていくのが心療内科なのです。
具体的にはどういった疾患、症状がありますか?
例えば、うつ病には精神症状と身体症状があります。精神症状としては、気分が落ち込む、やる気が起きないなどがあり、身体的には、よく眠れない、食欲不振、肩凝り、頭痛などさまざまな症状が起こります。ここではそういった症状に対して、心身の両面から同時に治療していきます。例えばうつが原因で腹痛が起きる場合、うつ病の治療薬を飲めばおなかの不快感が解決するかというと、病態はそれ独自で進行していきますから、そうはいかない場合がある。抗うつ薬にプラスしておなかの治療も進めるというように、生身の人間を全部ひっくるめた総体として診ていくようにしています。
体の症状の原因が、心にある場合もあるのですか?

そうなんです。例えば、味覚障害のある方が「どこへ行っても治らない」と受診された場合、いろいろな検査をした結果、うつ病が考えられたら、抗うつ薬を処方しますが、うつ病と味覚障害が関連していることも考えられるのです。その一方で、仮面うつ病といって精神的な症状はまったくないのに、身体的に症状が出るということもあるんです。ですからご自身で判断しないで、ちょっとしたことでも不調を感じたら、医療機関を受診なさることをお勧めしたいですね。当院では客観的な検査を重ね、さまざまな側面から症状を考えますので、いくつものクリニックを回らずに済むと思います。
客観的な検査と言いますと?
血液検査、立位の心電図、加速度脈波、心理テスト、面談など、さまざまな検査をし、そのデータを読み取り、患者さんとしっかりお話をしながら診察もした上で診断をします。診断にはこれまでの多くの臨床経験が役立っていると思います。患者さんへのご説明も、データを示しながら、「こういうことが考えられる」とお話しするようにしています。患者さんのお話を聞く、わかりやすく説明をするといった診療のプロセスにおいて、コミュニケーションは特に大切だと考えています。
投薬は個々に適した必要量を見極め、漢方も活用
投薬についてはどのようにお考えですか?

精神科の医師の中には十分な量の投薬をためらう人もいるようですが、私は、定期的に飲む薬は骨折した人に巻くギプスのようなものだと考えています。しっかりしたギプスを巻かないと、きちんと骨がくっついていかない。その際薬を1錠飲むか、2錠飲むか、3錠飲むかの違いがあるのは、病気の重症度によるのではなく、その症状を軽減するために必要な量に個人差があるからです。また、うつ病の患者さんは「気分が落ち込む」などの精神症状だけでなく、肩凝りや頭痛などの身体症状に悩まされる方が多い。そういった症状をも含めて全体として改善されなければ、本当の治療とは言えないのではないでしょうか。精神症状、身体症状、どちらの処方ができるのも当院の特徴です。
漢方薬も処方してくださるそうですね。
当院では西洋医学と東洋医学をミックスした治療を行っています。西洋医学で対応しきれない部分を、漢方薬で補完をしているのもその一つです。例えば、抑うつ感や意識低下などの症状は西洋薬を用いたほうが、改善が期待できます。しかし、冷え性やほてりなどの症状の改善を図る薬は西洋薬にはないんですね。そもそも西洋薬と漢方薬では考え方がまったく異なります。両方のメリット、デメリットを考慮し、内科的、精神科的処方に漢方を併用することは患者さんのQOLを高める上で、とても大切な方法と考えています。お互いで補完しながら、全体を良くしていきたいですね。
管理栄養士による栄養指導の他、心理カウンセリングも行っていますね。

毎週月曜と土曜の午前中に管理栄養士による栄養指導を実施し、生活習慣病などで栄養管理が必要な患者さんの、食事の内容、バランスなど細かく診てもらっています。より集中的な管理が必要なときは、運動の指導も併せて行っています。また、医師の指示のもと、カウンセラーがカウンセリングを行います。医師、管理栄養士、カウンセラーが一つのチームとして情報を共有しながら治療に取り組み、治療では投薬治療の他、催眠療法や自律訓練法、認知行動療法などを患者さんに合わせて行っていきます。
診療の際、どのようなことを心がけていらっしゃいますか?
心療内科で最も大切なのは、人と人とのつながりです。そのために、先ほどもお話ししたように、患者さんとできるだけ多くの会話を交わすようにしています。話題は何でもいいんですよ。雑談や笑い話でも構わない。ひとしきり話すと、たいていの方は心が落ち着くはずです。その際大切なのは、こちらが患者さんを受け入れ、共感しているという姿勢です。医師は患者さんにとって、その存在自体が薬となるような存在をめざして、努力しなければなりません。患者さんにとっては、毎週決まった曜日に話す時間があるというだけで、安心できるようです。ただ、患者さんの話を傾聴することはもちろん大事ですが、時には専門家としての意見をしっかりお伝えすることも重要だと思っています。
自己判断をせず、早めに受診を
先生は理工学部卒業後、医学部に入り直したそうですね。

そもそも理工学部に入ったのも、社会工学の分野で自然と人間の関係を追求してみたかったからなんです。しかし、突き詰めていくうちに人間そのものについて考えたいと思うようになり、医学部に入り直しました。理工学部の頃から精神分析や催眠療法に興味があり、一時はカウンセラーになることも考えましたが、資格がきちんと整備されていなかったので、医師を選択しました。その後は素晴らしい恩師と勉強の機会に恵まれ、開業するまで大学病院や総合病院でみっちり研鑽を積みました。特に内科のキャリアは豊富で、一通りの疾患は診てきたと自負しています。当時は目が回るほど忙しかったのですが、その経験が今に生かされていると思っています。
日々の診療でやりがいを感じるのはどういった時ですか?
感謝の言葉を患者さんに言ってもらえたときでしょうか。感謝の言葉をいただくだけでこちらもうれしくなり、私自身が患者さんに癒やされているような気分になります。相手に良くして差し上げることで喜ばれ、自分も幸せな気持ちになれる。こういう幸福な循環をつくるにはどうしたらいいか、常日頃から考えていますね。
最後に、今後の展望をお聞かせください。

心療内科の医師は常に自分を高めていかなければならないと考え、そのために勉強会やセミナーには分野を問わず、参加しています。自分にできることが増えれば、その分患者さんにお返しできますから。診察に関しては、新しい技術や薬を取り入れながら、自分で対応できることはどんどんやっていきます。今までどこに行っても改善されなかったという方、当院は全人的な治療を重視しておりますので、どうか諦めずに一度足をお運びください。また、特にお若い方の中には「クリニックに行くほどのことでもなさそうだ」と自己判断する方がいらっしゃるようです。専門家の診断はまた別かもしれません。ちょっとおかしいな、不調だなと思ったら、早めの受診をお勧めします。当院では身体的症状、精神的症状の両面からアプローチしてお力になります。どうぞ気軽にお訪ねください。