小泉美智子 院長の独自取材記事
医療法人社団蛍仁会 東元町内科クリニック
(国分寺市/国分寺駅)
最終更新日:2021/10/12
JR中央線国分寺駅南口から府中駅方面へ。バス通りに面した医療ビルの3階にある「東元町内科クリニック」は、広い待合室に、診察室から処置室、検査室など、院内が機能的にレイアウトされている。院長の小泉美智子先生は、患者との対話を積極的に心がけていて、女性医師ということもあり、患者も安心して話してくれるそうだ。「患者さんの生活背景、社会的背景は、治療をする上でとても重要なので、しっかりと聞くようにしています」と笑顔で話す小泉先生。話を聞き、医療の観点から治療へと導くアドバイスを行っている。特に生活習慣病の治療は、きめ細かい対応とサポートで患者からの信頼も厚い。女性としての視点でとらえた治療方針や医療への考え方など、じっくりと話を伺った。
(取材日2014年11月29日)
目次
動脈硬化の危険因子を少なくすること、それには日々の生活習慣の見直しが重要
クリニックでの診療体制や患者さんの特徴について教えてください。
現在は私と非常勤の男性医師が2人います。金曜日の午前中は、訪問診療や研修日のため外来は休診にしています。外来では女性医師ということもあり、特に女性の患者さんが多いですね。男性の医師が怖いという方や、男性の医師だと話しづらいという方もいて、家庭内のことや治療以外の事もいろいろと相談されます。こうした患者さんの社会的背景は、治療をする上でとても重要なので、話はできるだけ聞くようにしています。クリニックで尿検査や血液検査、レントゲン、心電図、腹部超音波、また睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査や24時間心電図を記録する、ホルター心電図もできます。
生活習慣病の治療も積極的に行っているそうですね。
患者さんの食事内容や生活習慣、また運動習慣などを細かくお聞きして、アドバイスや治療を行っています。生活習慣病の怖いところは、自覚症状がないうちに進行し動脈硬化の危険因子となることです。肥満、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常症などの危険因子を治療することが、脳梗塞や心筋梗塞を防ぐことにもつながるのです。体質的に血圧やコレステロール値が高くなりやすい人もいますし、女性はホルモンバランスの乱れが原因で、これらの症状を起こすこともあります。当院では総合的な観点から、患者さん一人ひとりに合ったアドバイスを行うことを心がけています。生活習慣病は日々の不摂生の積み重ねですから、生活習慣を少し見直すだけで改善される方もいらっしゃいます。特に適度な運動は重要で、運動習慣がなかった方が運動を始めることにより、数値が改善することもよくあります。また食事内容は大丈夫と思っている人でも、メニューを書き出してもらうと、極端な偏食だったりする場合もあります。患者さんが気付かないことを医学的な観点から指摘し、適切なアドバイスや治療を行うことが大事だと思っています。
患者個々に合わせたきめ細かいサポートこそ、開業医にしかできない大きな役目
運動や食事の改善は三日坊主になりがちですよね。
一番難しいことは、継続することですね。例えば運動も、今までやっていなかった方が突然行うと関節や筋肉を痛めたりするので、準備運動をしっかりやってできることから少しずつ行うことが大事です。仲の良い友人や家族と一緒に行ったり、一人の時間を満喫しても良いと思います。運動を行うことで気分がスッキリしたり、感情が前向きになったりと、患者さんが継続できるモチベーションを見つけることがポイントと思っています。肥満解消のための食生活の見直しも、なかなか一人では続かないことが多いですから、その方に合わせたアドバイスをするようにしています。中には細かく指導されるのが嫌という方もいらっしゃるので、患者さんが希望される範囲やできる範囲はどこまでなのかを見極めて、その中で効果が上がる方法を指導していきます。
禁煙治療も行っているそうですね。
生活習慣病の治療の一環として始めました。治療は大きく分けて2つあり、1つ目がニコチンパッチを使用する方法です。2週間から4週間ごとに通院し、ニコチンを体から少しずつ排除していきます。2つ目は服薬による治療で、3ヵ月間通院します。挫折してしまうと1年間は保険が適用されなくなるので、できるだけ患者さんと二人三脚で治療を行っていき、たばこを吸わないことのメリットを患者さんにお伝えするようにしています。例えば女性だったら美容面について、他には男女とも肺がんなどの健康面に与えるリスク、受動喫煙による周囲への健康被害、金銭的なことや臭いについても話します。
先生が患者さんと接するときに心がけていることは何ですか?
単に検査データ上の判断ではなく、問診、診察を丁寧にすることです。同じ病気、同じ症状、同じ検査データでも、患者さんの状態で治療法が異なってくる場合もあると考えています。個々に対するきめ細かいサポートを行うことが、私たちの役目だと思っています。
「人生」「死」「どのように生きていくか」について、多くの患者から学んだ
患者さんについて最近気になることはありますか?
会社に勤務している人であれば、1年に1回、健康診断を必ず受けるシステムができていますが、退職された方や主婦の方、自営業の方々で、健康診断を受けていない方が目立ちますね。「面倒だ」「まだ大丈夫」と思わずに、健康なときだからこそ、年に1度は自分の身体をチェックするきっかけをつくってはいかがでしょう。テレビでも健康番組がたくさん放送されています。健康への関心が高まるのはとても良いことと思いますが、すべての人にあてはまるかは疑問です。自分の体は自分で判断せずに、定期的に健康診断を受けてもらうことが大切ですね。市などで行う「お誕生日月の健診」は良いですね。
医師になるきっかけや、開業までの経緯を教えていただけますか?
父も医師でしたし親戚にも医師が多かったため、小さい頃から医療は身近な存在で、ごく自然に将来は医師になると決めていました。小さい頃から引っ越しが多かったのですが、高校生までは都内で過ごし、大学は山梨医科大学(現・山梨大学医学部)に入学しました。以前から地域医療に貢献したいと考えていたので、機会があれば開業しようと思っていました。さまざまな医療施設で臨床経験を積み、宮内庁病院での勤務を経て2006年に開業しました。国分寺の地を選んだのは、私が以前勤務していた場所が近くであり、夫や子どもたちの通勤、通学を考えて選びました。
先生は休日をどのように過ごされているのですか?
家事や子育てに追われています。自分の自由な時間はあまりありませんが、最近は少し運動を始めました。いままでもできるときに少し運動をしていたのですが、きちんと習慣にしようと思い、週に1度簡単なトレーニングを行うようにしました。気分転換にもなっていいですね。
印象に残っている患者さんとのエピソードがあったら教えてください。
多くの患者さんは人生の先輩であり、敬意を払いながら診療しています。国分寺は、老いや病気とうまくつきあい、日常生活を上手に過ごしている方がとても多いように思い、頭が下がります。患者さんであり、医師でもある友人達からは、「闘病しながら生きる術」を教わりました。「病人であっても、歩いていくことは健常人と同じだから、どうせ生きるなら、楽しく過ごそう。」「自分の身体を一番大切にしてくれるのは、自分だから、自分を大切にしよう。」そして、「どれだけ生きたか」が問題ではなく、「どのように生きたか〜自分と対話を繰り返し、どう生きたいか」。もちろん、傍から見ているのでは分からない多くの苦悩があるのでしょうけど、その前向きな姿勢、心の充足は、なかなかできない事です。
今後の展望や読者へのメッセージをお願いします。
個人が持つそれぞれの人生の物語を、対話や丁寧な診察によって理解し、患者さんの抱えている問題に対して、全人的(身体的、精神心理的、社会的)に医療が行える〜Narrative based medicine〜が、実践出来ればと思っています。人は誰も生を受けた日から、死に向かって歩いていきます。その中で、病は、時として、死に直結するイベントとして経験されます。最善の治療を常に選択しながら診療することが最重要ですが、それぞれの人が何を大切に生きているか。どうすることで、心の満足が得られるのかを良く理解して、医療の面からサポートし、その患者さんの生活が少しでも豊かになる手助けをしていきたいと考えています。専門病院との医療連携も合わせて、サイエンスとしての医療〜EBM(evidence based medicine)と、NBM(narrative based medicine)を兼ね備えた医療の提供が、患者さんにとって、もっとも良い形ではないかと思っています。そのためには、私達も、日々精進です。「ただひたすらに歩く〜只管打坐」 健康面で気になることがありましたら、「こんな事聞いて、大丈夫かしら」と思わずに、遠慮なくご相談下さい。そして、1日の終わりに、少しでも自分の身体や心を振り返り、「今日は、……をした!」と思える時間があると良いですね。