伊東 良之 院長の独自取材記事
いとう歯科医院
(武蔵村山市/上北台駅)
最終更新日:2026/01/09
武蔵村山市役所のすぐ近くにある「いとう歯科医院」。伊東良之院長は、歯科医院が少ない地元に少しでも恩返しできたらと、2005年に同院を開業したという。地域柄多い高齢者の義歯治療から、未来を担う子どもたちの診療まで、幅広く対応している。「小児歯科はまず親御さんへのフォローが大事です」と訴えるように、離乳食の切り替え時期などの子育てのステップについても、専門的な意見を取り入れながら親身になって相談に乗っている。今後は予防歯科にもさらに力を入れていきたいという伊東院長に、地域のことや診療内容、診療のポリシーなどを聞いた。
(取材日2025年11月10日)
治療計画は患者の生活環境に寄り添いながら
なぜこの地域に開業しようと思われたのですか?

ここが地元だということが、一番の理由です。大学を卒業する時に先生からお誘いを受けて研究者になることも考えましたが、開業の道を選びました。そして、開業するなら地元の武蔵村山市と決めていました。武蔵村山市は歯科医院がとても少ない地域で、私が開業した当初は、東京都の歯科医院不足地域に入っていました。今も歯科医師が高齢化する一方で新規の参入はあまりないという状況です。武蔵村山市内には駅がないんです。だから、駅前商店街もありませんし、ビルのテナントを利用しての新規開業ができないという環境の影響もあると思います。この場所にはもともと祖父母が住んでいた家があって、老朽化で建て直しをするタイミングで、1階は駐車場、2階が診療室という形にしました。
まさに地域密着型の歯科クリニックということですね。
都心ではご近所でも交流は少ないと思いますが、この辺りだとほとんどが顔見知り。患者さんも幼少期の頃から私を知っていて「もうこんなに大きくなったのね」と言われるくらい地域密着の歯科クリニックです。小学校時代の同級生がお子さんを連れてきたりもしますしね。年齢層は高齢者と子どもが多く、その中間層は比較的少ない傾向です。今はほとんどのご家庭が共働きで、当院の診療時間では、都心に仕事に行かれているとまず間に合いません。なので、おじいちゃんおばあちゃんがお孫さんを連れてくるというパターンが多く、それは地域的な特徴といえるでしょうね。
この辺りは歯科に対してどのような考えをお持ちの方が多いですか?

「悪くなったら治療してもらう」という方が多く、残念ながら予防に関心のある方は少ない状態でした。高齢者の残存歯の本数が都心と郊外では全然違うというデータもありますが、実際に、中には今までどうやって食べていたのか不思議なほど口腔内の状況が悪い方もいます。お子さんに関しても、予防に熱心な家庭がある反面、乳歯20本中、16本が虫歯というような多発虫歯の子もいます。そんな状況を変えたいと、定期検診に来ていただきやすいよう工夫に努めています。患者さんの生活に寄り添う治療計画も大切で、ご年配で足腰が弱くて通院が困難な方には、あえて処置はせずに定期的な確認で様子を見ることもあります。医学的に駄目なことはもちろん伝えますが、患者さんの意思を尊重した診療を行いたいと思っています。
「歯育」や、障害のある子どもの診療にも力を注ぐ
たくさんの患者さんが来られていますが、どんな点が地域の方々に支持されていると思いますか?

私は歯周病の専門治療をやっていたり、インプラントの高度な治療を掲げていたりといった専門性がないんです。ただ、何かに特化せずに幅広く診療できるのが強みだと思っています。この辺りでは医療の最初の受け皿である一次医療機関として、ある程度自分で幅広く診断ができて、必要な専門性がある所に紹介できることが必要です。幅広く皆さんを受け入れるために間口を広くしておきたいと考えています。また、皆さんが悩まれていることをしっかりと受け止めて、それが歯科ではなく医科にも連携できる体制も取っています。例えば糖尿病に関しては、武蔵村山市では推進協議会があって、そこにきちんとつなげられるようなシステムがつくられています。
お子さんの診療の際に気をつけていることはありますか?
一番は親御さんへのフォローです。厳しい言い方かもしれませんが、未就学児の虫歯は親の責任だと私は思っています。小さな子どもは自分では歯を磨けませんので、親が管理しなければなりません。しかし、一般的に親御さんが持っている情報量は少ないため、「歯育(しいく)」という考えでお子さんの歯科診療に取り組んでいます。例えば、離乳食を食べてくれないと悩まれている親御さんも多いのですが、離乳食の切り替えのタイミングは歯の生え方に関わってくることをご存じでしょうか。歯が出ていないのに、テキストに載っている月齢に合わせて食べさせていると「全然食べてくれない」となってしまうこともあるんです。歯科に関わる範囲で「マニュアルどおりに進まなくても大丈夫ですよ」と伝えていきたいと思っています。
発達障害などのお子さんの診療にも積極的に関わられているそうですね。

はい。当院は武蔵村山市の東京小児療育病院と連携しています。一般的に病院は、クリニックと比べると診られる患者さんの数に限りがあって、特に障害のあるお子さんの診療となると予約も数ヵ月待ちという状態になりがちです。定期的な検診などはできるだけクリニックで対応して、専門的な治療が必要な方だけが病院に行けるように、当院も東京小児療育病院からのご紹介で患者さんを受け入れています。また、保育園や幼稚園に通うお子さんを歯科に通わせたいけれど、「発達障害がある子はなかなかハードルが高い」とお困りの親御さんもいらっしゃることでしょう。私は保育園で園医をしていますが、そういう現状を知り、そのようなご依頼にもできる範囲で対応できればと思っています。
高齢者の訪問診療にも取り組み、地域住民の歯を守る
歯科医師を志したきっかけと、これまでのご経歴を教えてください。

私は小学生の時に歯列矯正をしていました。40年くらい前ですが、自分のコンプレックスだったところを処置してもらっていた記憶は残っています。はっきりと歯科に興味があったわけではなかったのですが、友人から「ずっと歯医者になりたいって言ってたよな」と言われ、そうだったんだと。知らず知らずに夢をかなえていたようです(笑)。2000年に日本大学松戸歯学部を卒業した段階で、開業するなら武蔵村山市でと決めていましたので、同じような患者層の歯科医院で研鑽を積もうと考えました。また、これからは在宅医療の時代が来ると思い、一般的な歯科診療とともに施設や個人宅への訪問歯科診療も行っていた歯科医院に勤務しました。4年勤めた後、別の診療所で1年間院長を任せてもらい、2005年に当院を開業しました。
当時の考えどおり、現在は訪問歯科診療にも取り組まれていますね。
武蔵村山市歯科医師会が訪問歯科診療に力を入れていることもあり、現在市内にある2つの施設へ訪問しています。ご自宅への訪問は、当院の患者さんで通院できなくなってしまった方を対象にしています。ご家族から依頼されて伺うのですが、通院できずお困りのご家族もたくさんいらっしゃると思うので、今後も続けていきたいですね。土曜日の午後だけ訪問診療日にしているので、移動の時間を考えると、件数はそう多く回れないのですが。最近、訪問歯科診療用に小回りが利いて動きやすい車を新しく購入しました。この辺りは車1台分しか通れないような細い道も多いですし、数分走ると山だったりしますからね(笑)。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

歯科医院は行かなくて済むなら行きたくはないし、緊張する場所と思われがちですが、当院に来て、決してそうではないと知っていただきたいです。当院では、歯磨き指導をメインに正しい生活習慣へ導く「歯科保健指導」や、口腔内の汚れを専門的に除去する「予防処置」といった予防歯科にも力を入れています。患者さんの予防意識を高めるためには、われわれ医療側も受け身ではなく努力が必要です。武蔵村山市の市報に定期的にコラムを書かせてもらっているのですが、患者さんから「読みましたよ!」と、お声がけいただくこともあり、そういった情報発信も大事だと感じています。「ちょっと怖い」とか「嫌だな」という気持ちをいったん置いて、お掃除のためだけでも気軽に来ていただけるような環境づくりをしていければと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とは歯列矯正(小児)/44万円~、歯列矯正(成人)/77万円~、セラミッククラウン/6万6000円~

