歯周病の予防と治療には
患者自身のモチベーションが重要
北村歯科
(東久留米市/ひばりヶ丘駅)
最終更新日:2024/11/27
- 保険診療
口腔内の菌のバランスは成人を過ぎると崩れていきやすくなり、年齢とともに口腔内の歯周病菌の数は増加するといわれている。骨が溶けるような悪化は基本的に成人になってから起こるため、歯周病は大人の病気、いわゆる生活習慣病の一つとされている。痛みなどの症状がないまま進行するのも歯周病の特徴の一つだ。東京都歯科医師会の副会長としても活動し地域医療にも貢献する「北村歯科」の北村晃院長は、歯周病の予防や治療には患者自身のモチベーションが重要だと話す。さまざまな工夫とわかりやすい説明で、患者の気持ちに寄り添う北村院長に、歯周病の予防と治療について話を聞いた。
(取材日2020年5月8日)
目次
自覚症状のない軽症の間での治療と重症化しないための予防が大切。患者自身のモチベーションが鍵に
- Q歯周病について教えてください。
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A
歯周病は虫歯と並ぶ口の中の二大疾患の一つで、近年、虫歯が減っていることから、歯を失う主な原因になっています。読んで字のごとく歯の周りの病気ですね。歯の周りの組織には歯肉、歯槽骨、歯根膜、セメント質があり、この4つを歯周組織といいます。口の中には多くの菌があり、その中のいくつかの歯周病菌が悪さをして、歯周組織を破壊していく。簡単に言うとこれが歯周病です。歯周病菌の出す毒素によって炎症を起こすわけですが、それが一番たまりやすいのが、歯ブラシの届きにくい歯のつけ根のところのくぼみです。それが深くなって歯周ポケットにたまっていくと、菌が増えるという悪循環に陥ります。
- Q歯周病のケアはどのように行うのですか?
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A
基本的には日々の歯磨きです。まず、問診でどれぐらい歯磨きをしているかや食生活についてお聞きし、口の中がどれだけ磨けているかを確認します。歯垢、いわゆるプラークの中にいる歯周病菌が歯周病の原因ですから、その部分からきれいにしていかなくてはいけません。例えば、歯並びが悪い人は磨き残しが多くなりますし、噛み合わせの当たりが強い部分に負担がかかって歯周病を悪化させるなど、歯周病菌がたまりやすい口腔環境についても説明し、歯磨き指導をします。歯磨きはプラークを取るという意識を持って行うことが大切ですね。「磨いている」と「磨けている」は、まったく違うということも理解していただくようにしています。
- Q重症度によって治療は異なるのですか?
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A
初期治療では、ご自身では磨きにくいところをきれいにしていく専門的なスケーリングを行います。歯垢は時間の経過とともに唾液を吸い、カルシウムと結合して石になります。その石自体は悪くないのですが、歯石を顕微鏡で見ると軽石のようにたくさんの穴が開いていて、そこが歯周病菌の住処になってしまうんですね。口の中の温度は36度~37度ほどですから、培養器のような状態です。歯周ポケットが4~5ミリある中等度の人にはポケット内部の歯石や歯根表面の汚れを除去するためのSRP(スケーリングルートプレーニング)という処置や、重症の方には、徹底的に骨と根っこの部分の汚れをきれいにしていく外科的治療を行うケースもあります。
- Q歯周病の予防はなぜ大切なのですか?
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A
歯周病の治癒の目安は歯周ポケットが3ミリ以下になることですが、来院時に9ミリある歯周ポケットを3ミリまでにするのはとても難しいことですよね。歯周病を悪化させないこと、予防することはとても大切です。歯周病は糖尿病などと同じ生活習慣病に位置づけられていますから、比較するとわかりやすいのですが、ブラッシングで自分できれいにする、管理するというのは、糖尿病でいうところの食事療法と同じといえます。ですから、歯周病の治療や予防は患者さんご自身が意識しコントロールしていかないと難しい。歯周病予防は「患者さんの取り組む気持ち」がすべてです。当院では、患者さんにいかに本気になってもらうか真剣に取り組んでいます。
- Q歯周病の予防やメンテナンスで工夫されていることは?
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A
一つの方法として、患者さんの口腔内の型を採って模型を作り、その模型を患者さんに見せながら「ここにこういうふうに歯ブラシを当てたほうが良いですよ」と説明しています。喉側から自分の口腔内を見ることはできませんから、模型にご自身で歯ブラシを当ててイメージしてもらうと上手になりますね。特に歯並びの悪い人や歯磨きがうまくできない人にはそのような方法を取っています。当院では、これを初診の保険診療の中で行っています。プラークを取る基本は歯磨きですが、歯間ブラシやデンタルフロス、歯茎マッサージャーなども必要に応じて紹介しています。患者さんが治療や予防に本気になってくれるような方法は積極的に取り入れたいですね。