直長 圭植 院長の独自取材記事
多摩整形外科
(立川市/立川駅)
最終更新日:2025/04/07

立川駅南口からバスで新奥多摩街道を約6分、富士見町七丁目バス停で下車し、さらにそこから7分ほどの閑静な住宅街に「多摩整形外科」がある。「父の代からこの地で整形外科診療に携わってきました」と話す直長圭植院長は、地域住民からの信頼も厚く、患者の中には先代を知っている人も多いという。父も医師、3人の姉がそれぞれ医師と薬剤師という医療家系に育った直長院長。同院にはホームページがないため、読者にとっても、直長院長にふれられる貴重な機会となるだろう。どのような診療に力を入れているのか、詳しく話を聞いた。
(取材日2025年2月27日)
地域のかかりつけ医として、患者に寄り添った医療を
いつ頃、開業をされたのでしょうか?

父がもともと地元の出身で、茨城県の医療機関に出向していた時に私が生まれ、5歳の時にこちらに戻ってきて、今の場所に開業しました。ところが父は早くに他界してしまい、当時私はまだ医学部の1年生だったので、1985年から2002年まではクリニックを閉めていました。卒業後、慶應義塾大学整形外科の医局に入り、「川崎市立川崎病院」や「静岡市立清水病院」「北里研究所病院」「伊豆赤十字病院」などで臨床経験を積み、今はなくなってしまいましたが「慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンター」にも出向していました。その後「慶應義塾大学病院」に戻りました。父のクリニックを引き継ごうかどうしようか迷っていたのですが、この場所に建っていた自宅の建て替えとともに1階を診療所にし、院名も「多摩外科整形外科」から「多摩整形外科」と変えて、2002年に開業しました。
医学部に進んだのもお父さまの影響ですか?
高校3年生の時に、将来をあらためて考えていたのですが、「医学部に行こう」と決めました。整形外科を選んだのは、父が外科と整形外科をやっていたというのもありますが、患者さんにとって手術後の変化が目に見えてわかる点などに惹かれて選びました。僕はもともと細かい手作業が好きだったので、研修時代から、将来は整形外科にしようと思っていました。出向した医療機関でも、外傷ばかり診ていた医療機関もあれば、脊柱管狭窄症などの疾患ばかりを診る医療機関もありました。大学側があらゆる症例を経験できるよう、いろいろな場所に出向させてくれたので、数多くの症例を経験することができました。
患者さんは地域の方が多いのでしょうか?

大半が地域の方、もしくは近隣の方々です。患者さんの中には4世代にわたって通って来てくださっている方もいて、当時の父のことをよく知っている患者さんも多いです。また、当院はホームページをつくっていないのですが「お友達の紹介で来ました」とクチコミで遠方から来院される方もいます。年齢層としては、高齢者から主婦層、夕方以降のサラリーマンや近隣の学生などが多いです。若い方は運動部や体育でケガをしたという方が受診されますし、ご高齢の方は、腰痛や肩凝り、膝の痛み、中でも腰と膝の痛みがダントツで多いですね。近くにクリニックが少ないこともあり、風邪をひいたとか、皮膚のかぶれや水虫、高血圧や糖尿病などの診療を求めて受診される方もいます。ただし、喘息だけは重症化すると治療が難しくなるのでお断りしています。また、特別な治療や手術が必要となった場合は、国家公務員共済組合連合会立川病院へご紹介させていただいております。
痛みの改善を図り、アクティブな生活の実現を
患者さんの診療で大事にしていることは何ですか?

一番は、患者さんの訴えをよく聞くことですね。患者さんは、ここも痛い、あそこも痛いといろいろとお話しされますが、すべてをいっぺんに聞くのは大変なので、まずどこが一番つらいかを聞くようにしています。そこから、じゃあ次は? というように少しずつ進み、結局は全部お伺いするのですが、少しずつお聞きすることで、何に一番困っているのかを探り、経過をたどるようにしています。ですから受診の際は、いつから症状が出ているのか、どのようなときに症状が悪化するか、といったことをお伝えいただくと診断の際にとても役立ちます。昨日から痛いのと、5年前から痛いのでは、治療計画の立て方もまったく違いますからね。
痛みを我慢するのは後々良くないのでしょうか?
痛みがあると動かなくなり、動かなくなると筋力が落ち、関節の動きも悪くなります。その状態でたまに動くと余計に痛みを感じるというように、負の連鎖が起こってしまう可能性があるので、とにかく痛みの改善を図り、QOL(生活の質)を落とさないようにすることがとても大事だと思っています。特にご高齢の方は、ご家族の方が手を貸してくれるので、頑張って動かそうという気持ちが薄くなりがちです。そうならないためにも「少しでも動けるなら動きましょう」とお伝えするようにしています。また、診療を終えて出ていく時は楽になってもらいたいので、当院ではトリガーポイント注射や硬膜外ブロック注射、ヒアルロン酸注射などの痛みに有用な注射をご提案しています。
高齢になっても歩けるように、今のうちにやっておくと良いことはありますか?

やはり、若い頃から運動をする習慣を身につけておくことですね。それまで何もやっていなかった人が、定年を機に運動をしようとしても、多分、あまり楽しくないですし、三日坊主になりがちです。元気なうちから、趣味にできる体を動かす運動を見つけておくことが大事ですね。そうすれば、年齢を重ねても体を動かすことが苦になりません。大切なのは「継続していくこと」ですから。運動の頻度も、毎日は無理だとしても、週に3〜4回の運動習慣を持つのが理想です。そして、こうした運動習慣を持っている人は、年齢を重ねても皆さんとてもお元気です。
早期受診をすることで、機能の低下へアプローチ
患者さんの中にも運動で元気を保っている方がいらっしゃいますか?

90歳で高齢者のスイミング大会に出ていらっしゃる方がいて、試合前にはパフォーマンスを下げたくないと、痛みを抑えるための注射を希望されます。また、70代〜80代でテニス、卓球、野球やゴルフをやっている方々も同様に受診されます。運動を行う際に、痛みの改善が図れるだけで楽しいことがいろいろとできるようになると思うんです。後々のことを考えたら、痛みの改善を図るほうが生活にプラスになるので、僕は痛み止めも有用だと思っています。
先生ご自身も、普段から運動はされているのでしょうか?
たまにゴルフをしています。夏場は暑いので避けていますが、それ以外の季節では医局の同期や先輩、他の大学の医師など十何人と集まってやっています。毎回組み合わせは変わりますが、本当にゴルフ好きな人たちばかりなので、気分転換になっていいですね。みんな同業なので、ゴルフをしながらの情報交換もたくさんします。開業医が多く、環境が似ているので、本音で語り合えるのがいいですね。
最後に、患者さんへのメッセージをお願いします。

ちょっと具合が悪いという場合も、大きな病気が隠れているかもしれません。悩む前に早期に受診してください。早く診断がつけば、その分、早く治すことにつながります。こじらせてしまうと、より時間がかかってしまいます。もし何でもなければ、それはそれで安心できるのですから。今まで膝の曲げ伸ばしができていた方が、久々に来院されたら「膝が曲がらなくなってしまっていた」などということもあります。定期的に受診されていたら、もっと早く治療に介入することができ、機能を温存できる可能性もあったのではと思ってしまいますね。年齢により、多少なりとも身体機能が落ちるのは仕方がありませんが、それを緩やかにするために、定期的な整形外科の受診やリハビリテーションは大切です。これからも、地域の皆さんのニーズに一つずつ応えていき、積み重ねてきた診療を継続していきたいと思っていますので、気軽に相談してください。