小川 哲史 院長の独自取材記事
小川クリニック
(小平市/小川駅)
最終更新日:2025/06/23

子どもから高齢者まで幅広い年齢層の患者を受け入れる「小川クリニック」。院長の小川哲史(さとし)先生は、専門とする消化器内科をはじめ、内科全般、糖尿病内科、循環器内科、呼吸器内科、小児科内科と幅広く対応している。「全身を診る」ことを前提に、検査体制の充実を図り、利便性の高い予約システムを導入するなどして、患者が通いやすく、受診しやすい環境を整えることに余念がない。さまざまな質問に、わかりやすく朗らかに話をしてくれた小川院長は、きっと診察の時も同じように患者と向き合っているのだろう。そんな小川院長に、この場所に開業したきっかけや診療への思い、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2025年4月4日)
地域を支える幅広い診療科目と検査体制
予約システムを刷新したことで、大きな変化があったと伺いました。

以前は、診察時間内に当日の診察の順番の予約のみ取れるシステムでした。そうすると開院してものの5分でその日の予約枠が埋まってしまうような状況でした。朝に予約が取れても診察は18時ということもあって、患者さんに申し訳ない気持ちでした。それを解消するために、今年の2月から1ヵ月先まで予約ができるシステムを導入しました。なかなか受診のタイミングが図れなかった人も、自分の都合に合わせてスマホやパソコンなどのデバイスで24時間予約ができるようになり、新規の患者さん、とりわけ若い世代の患者さんが増えました。また、余裕を持って予約枠を設けたことで、急に体調が悪くなったという方でも、当日の空いている枠で受け入れられるようになりました。
どういった経緯でここに開業されたのですか?
当クリニックになる前もここは、個人の医院だったんです。その先生が遠方に転居されるということで、後を継いでくれる人を探しているというのを知人づてで聞きました。この地域は不案内だったのですが、実は東日本大震災の時に、私が足止めを食った場所が小川町だったんです。小川駅近くの中学校に避難して夜まで過ごしました。私の名前を見ていただいてわかるように私の苗字は小川です。地域名と同じという偶然も重なり、私にとって印象深い土地になっていました。それでこれも何かの縁かなと導かれるようにここに開院しました。「小川クリニックの『小川』はどちらから命名しているの?」とたまに聞かれますよ。
幅広い診療科目と検査体制の充実が特色と感じます。

当院では、消化器、糖尿病、循環器、呼吸器の内科全般と小児科と幅広い診療科目に対応しています。私はもともと消化器が専門で胃や大腸、肝臓、膵臓を診ながらも、全身を診るということを意識してやってきました。つまり「裾野は広く」です。今まで病院の勤務医や救急病院などでいろいろな経験をしてきて実感するのは、「病院の敷居は高い」と感じている方が多いということですね。高齢の方にとって遠方の病院へ通うのは体力的に負担ですし、働く世代にとっては、待ち時間が長いと仕事を休まなければならなくなります。それで病院に行くことが面倒になり、若い人はその診断や治療が遅れたり、高齢者の方は、症状が悪化したりするということがあるんです。そういった意味でも、身近で気軽に通院できて、なんでも相談できる地域のかかりつけ医の存在が重要だと実感しています。
経験と協力体制でより良い医療を追求
先生のこれまでのご経歴について教えてください。

1987年に愛媛大学医学部を卒業後、愛媛県内の病院に勤務し、その後、関東に戻りました。総合病院の消化器内科部長や病院の副院長および消化器内科統括部長を歴任しました。専門は消化器としながらも、臨床研修時代には救命救急に携わり小児科の診療経験も積みました。診断できる幅が狭くならないようにということはその当時から意識していましたね。消化器内科では胃がんや大腸がんをはじめ、胆嚢や肝臓の疾患の治療に携わってきました。肝がんのカテーテル治療も経験しています。
ところで、分院設立に至ったのはどのような背景があったのでしょうか。
ここが手狭になったので移転を考えていたんです。しかし、当院に通われている方は高齢者が多く、完全に移転となると、今まで通っている方にとっては遠くなるということで、ここも残し、分院というかたちで2020年に開設しました。分院の院長は外科と肛門外科が専門なので、それにより診療の幅がさらに広くなりました。この辺りは肛門外科が少ないので、地域のニーズにも応えられていると感じています。現在は曜日によって私と分院の院長が行き来しながら、連携して診療をしています。
検査体制を充実させることは開業当初からのビジョンだったのでしょうか。

先ほどの話にも通じますが、患者さんが大きな病院に検査のために何度も足を運ぶ負担を軽減したいという思いからです。頸部や甲状腺、心臓、腹部、乳腺、末梢動静脈の超音波検査は臨床検査技師に来てもらい対応しています。血液検査や糖尿病のHbA1c検査、エックス線、24時間心電図、喘息の呼吸機能検査の機器も導入していますし、必要に応じて管理栄養士による食事指導も行っています。上部・下部消化管の内視鏡検査は分院で行っています。小さなクリニックながら、外部のスタッフとも連携して、地域のかかりつけ医として、より良い医療を提供できるように、ここで完結できる範囲を広げ、できることはやっていきたいというのが私の考えです。
安心を届け続ける地域のかかりつけ医へ
患者さんと接するときに心がけていることは何でしょうか。

怖がらせない、ということですね。患者さんとの対話を大切にしています。質問したらばかにされた、怒られたとか、患者さんが理解するまでの説明が足りないといった、いわゆるドクターハラスメントも残念ながらあるようです。それを反面教師にして、電子カルテばかり見て患者さんの顔を見ないといったことのないように、しっかりお話を聞き、わかりやすく説明することを心がけています。当院のほかの医師や看護師も共通認識を持ち、患者さんに対する一つ一つの説明は丁寧にすることを心がけていますね。長く勤めてくれているスタッフが多いですし、風通しの良い職場環境が患者さんの接し方にも表れていると思います。
今後、取り入れていきたいことはありますか?
かかりつけ医としての役割をもっと高めていきたいと思っています。受診しやすい予約システムは取り入れてきましたが、今後はカルテのICT化が徐々に進んでくると思いますので、複数の医療機関で診てもらっている患者さんの情報をまとめ、全部束ねて把握して診ていきたいです。患者さんから現状を全部聞き出すというのは難しいですが、カルテの共有が進んでくれば、重複した薬の処方などの防止にもつながるでしょう。また、スタッフの作業負担も軽減され、双方にメリットがある取り組みだと思っています。
最後に、これからの展望をお聞かせください。

乳幼児から学校に通う子どもたち、働き世代のお父さんやお母さん、リタイアしだんだん体の自由が利かなくなってくるお年寄りまで、人生のあらゆるステージに対応する医療を提供したいと考えています。通院が難しくなった患者さんがシームレスに在宅医療に移行できるように、専門機関と連携して医療が継続できるような体制も整えていきたいです。地域のかかりつけ医として、「ここに来れば安心」と思ってもらえるクリニックであり続けたいですね。