大熊 京子 院長の独自取材記事
大熊眼科医院
(八王子市/西八王子駅)
最終更新日:2025/06/13

JR中央線西八王子駅北口から徒歩1分、甲州街道沿いに「大熊眼科医院」はある。院長を務めるのは、この道40年以上の経験豊富な医師である大熊京子先生。仕事にも趣味にも全力投球で、とてもはつらつとした人柄だ。アドヒアランス(adherence)という考えのもと、患者には病状を理解してもらい、積極的に治療へ参加してもらうことを心がける大熊院長。もともと小児科の医師をめざしていたが、義父の勧めと眼底写真の美しさに惹かれて眼科に進もうと決めたという。同院で力を入れているアイフレイル予防や、小児の疾患について聞いた。
(取材日2025年3月12日)
40歳を過ぎたらアイフレイル予防を
どういった患者さんがいらっしゃいますか?

患者さんは、地元の方が大半ですね。私が卒業した小学校や中学校もすぐ近くなので、同級生や教わった先生も来てくださいます。ありがたいですよね。近年は加齢黄斑変性や緑内障の患者さんが増えています。加齢黄斑変性は名前のとおり加齢によって起こり、食事の欧米化と関連して増えてきたともいわれています。緑内障は、最近は若い方でも前兆がみられる病気です。きちんと管理していければ失明するような病気ではないので、やはり、早期発見できるようしっかりした検査を受けることをお勧めします。
アイフレイル予防にも力を入れていらっしゃると伺いました。
はい。アイフレイルとは「加齢に伴う目の機能低下」のことです。手元が見えにくくなったり、目が疲れやすくなったりする状態をいいます。40歳を過ぎると、誰でも多少の視機能の衰えを感じるはずです。実際に、アイフレイルに該当する目の衰えは、どれも年のせいだから仕方がないと諦めがちなものばかり。しかし、早期に対策をしておくことで、今の状態を長く維持することがめざせます。当院でも、めざすところは視力視野、すべての面での現状維持です。早期に対策を図ることは、将来の医療費を抑えることにもつながります。見える状態を長く維持するためにも、定期検査を受けて早期発見、早期治療に結びつけましょう。
こちらで受けられる検査について教えてください。

視力、眼底、眼圧検査を基本に、必要に応じてOCT(光干渉断層計)による網膜の精密検査も可能です。まず、40歳を過ぎると老眼が出現します。眼鏡を作る際にも、眼科を受診しましょう。眼鏡装着による疲れを軽減するためには、精密な検査で自分に合った眼鏡を作ることが大切です。また、視力検査と同時に眼底の検査をすることで、白内障や緑内障、網膜剥離、動脈硬化といったさまざまな病気も調べられます。大切なのは、持って生まれた目の形に対して、加齢の変化がどう影響していくかを知っておくことです。例えば、眼圧が正常な人でも、神経が弱ければ正常眼圧緑内障という病気になる可能性があります。傾斜が強くて網膜剥離が心配な目の場合は、ゴミのような浮遊物が見える「飛蚊症」に注意しておくことで、網膜剥離の予防につなげることも可能です。ご自身の目について知っていただくことも、当院では大切にしています。
わかりやすい説明で、患者の治療参加を促す
先生が患者さんと接する中で大事にしていることは何ですか?

患者さんに、ご自分の目の状態や治療方針についてわかりやすく説明することです。例えば「網膜に穴が開いて網膜剥離を起こすかもしれないから、レーザーで治療します」と、言葉で言われてもよくわかりませんよね。私は実際に網膜の画像を見せて、どの部分に穴が開いて、どのように網膜剥離が起こるのか、レーザーで治療する前と後の画像も見ていただき、経過がわかるように説明しています。また、緑内障と言われてなぜ薬をつけなくてはいけないのかや、治療をしていてこういう経過だから薬を変えましょうというときも、できるだけグラフや視野の変化を見せて、患者さんが理解できるようにすることを心がけています。
診療方針でもある「アドヒアランス」についても教えていただけますか?
はい。「アドヒアランス」とは、患者さんが治療方針に納得し、積極的に治療を受けることをいいます。治療の成果を得るためには、患者さんの積極的な治療参加が不可欠です。そのため、患者さんが点眼治療をどのくらい行えているのかなど、診察時に詳しくお聞きします。ときには、「昨日は何時に点眼しましたか?」と、少しいじわるな質問もします。特に緑内障の場合、症状がわかりにくいため、治療を途中でやめてしまうケースも少なくありません。治療継続できない理由もさまざまです。単に点眼が面倒だという方や、つい忘れてしまう方、病気を受け入れられずに治療に参加できない方もいらっしゃいます。そうしたお一人お一人の状況を理解することも大切にしています。
チーム医療にもこだわられているとか?

そうですね。私1人では患者さんを診られませんので、スタッフの力は欠かせません。当院のスタッフは、全員がほぼすべての業務を行えます。例えば検査のスタッフも受付に対応できます。また、病気についてよく勉強しているスタッフが多いのも、当院の特徴でしょう。当院は完全予約制のため、電話予約の際、症状について簡単なヒアリングを行います。このとき、スタッフが必要な検査の見当をつけられることで、患者さんの待ち時間を短くすることにつなげられるのです。患者さんの次回予約を取る際にも、病気のことを理解していれば、受診が必要な時期の判断ができます。しかし、何よりも、スタッフみんなの仲が良いということが一番の自慢です。ありがたいことに「ここに来ると安心する」と、多くの患者さんに言われます。そうした院の雰囲気をみんなでつくってくれていることに、感謝しています。
学校医を務めて35年。地域の子どもを見守り続ける
長年学校医を務められている先生から見て、現代の小児の目で気になる症状はありますか?

やはり近視とアレルギー症状ですね。近視のお子さんは、私が学校医を始めた35年前に比べると、確実に増えたという実感があります。スマホやゲームといった、室内遊びが主流になったことが原因の一つでしょう。近視予防には日光を浴びることが大切です。しかし、外で遊ぶ機会が少ない現代の子どもたちは、日光を浴びる量が不足していると言われています。1日2~3時間は外遊びの時間があるといいでしょう。また、スマホやゲームに集中し過ぎると、急性の内斜視になる危険性もあります。保護者の皆さんにはこういったことを心にとめておいていただきたいと思います。
アレルギー症状が強い小児の場合は、何に気をつけるべきでしょうか。
花粉症などのアレルギーがあるお子さんの場合は、強い症状が出る前に受診していただくことをお勧めします。アレルギーの薬はとても進化していて、種類もたくさんありますので、昔に比べると治療しやすくなりました。とはいえ、症状が軽ければ、強い薬を使わずに治療できますし、治療期間も短いことが多いので、早めにお越しいただくのが良いですね。対処法としては、まずは目をこすらないことが重要です。症状があるときは顔を洗い、点眼で洗い流します。帰宅した際に、シャワーを浴びるのも良いでしょう。かゆみが強い場合は、水で濡らして絞ったタオルで優しく目を冷やすのもお勧めです。
最後に、患者さんへのメッセージをお願いします。

目だけでなく、病気についても早期発見に貢献し、長寿大国日本で皆さんが健康で元気に過ごせるお手伝いができればと思っています。当院は白内障の手術は行っていませんが、患者さんと相談し、ご希望にかなう病院を紹介することが可能です。また、娘夫婦も眼科の医師なので、将来的にはこのクリニックをバトンタッチできればいいなと思っています。高齢のため、他で白内障の手術をしたくないという患者さんの声も増えてきました。ですので、今後はできる範囲の治療が、当院で完結できるような体制をつくっていけたらと思っています。受診時には、症状がいつから出てどんなふうに不快なのかなど、できるだけ詳しくお話しください。AIとは違い、患者さんのお話の中から多くのアドバイスができるのが私たち医師なので、ぜひ遠慮せずにたくさんお話しいただければと思います。