子どもの感覚器の発達を確認
学校健診における耳鼻咽喉科の役割
大島耳鼻咽喉科気管食道科クリニック
(八王子市/京王八王子駅)
最終更新日:2021/10/12


「大島耳鼻咽喉科・気管食道科クリニック」の大島清史院長は、国内外で勤務医として経験を積んだ感覚器のエキスパートだ。「前院長である父は、耳鼻咽喉科の医師であり、学校保健活動の草分け的な存在でした」と語る大島院長。その後を継ぎ、八王子市の医療を担うと共に学校保健活動にまい進。現在は日本耳鼻咽喉科学会学校保健委員会委員長として、全国的な学校保健の問題に取り組んでいる。大島院長に学校医の役割や、教師や保護者との連携の重要性について話を聞いた。
(取材日2016年12月8日)
目次
子どもの健康を管理し、管理できるように教育し、周りの環境を整える
- Q学校保健委員会のしくみや取り組みを教えてください。
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A
▲日耳鼻学校保健委員会委員長の大島院長
学校保健委員会の取り組みは三本柱です。生徒たちの健康を管理すること、健康の管理が上手にできるように教育していくこと。加えて、生徒の周りの環境を整えるために、教師や保護者を交えて情報の伝達や交換を行い、交流を深めること。そのための委員会の活動は2つに分かれます。学校医同士が集まる会は日本医師会や耳鼻咽喉科学会が主催し、学校医の活動として問題になっていることを討論します。学校医と教師と保護者が集まる会は、教師や保護者の代表との話し合いの場。生徒の暮らしぶりをよく知る方々から具体的な情報をいただき、学校医同士の会の議題にすることも。役割が分かれているように見えますが、それぞれの連携が重要です。
- Q耳鼻咽喉科の医師として行う学校健診の内容をうかがえますか。
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A
▲学校健診の受信率を上げていくことが目標
学校保健活動の一部として学校健診を行います。病名をつけるのではなく、異常の疑いの有無を保護者に伝えるスクリーニングが目的。成長過程の子どもが対象なので、聴覚や嗅覚といった感覚器を多く扱う耳鼻咽喉科健診は、これらの発達の程度をチェックする役割もあります。聴覚や視覚の障害は情報を得る障害になり、言語の障害は意思の伝達の障害になります。問題がある可能性があれば保護者に伝え、病院へ行くように指導するのが事後措置。私が学校健診を担当している学校の生徒は受診率が高いほうですが、それでも7割ほど。事後措置ができなければ、学校健診の意味がありません。全国的に受診率を上げていくことが目標です。
- Q教育の現場では、どのような問題が起きているのでしょうか。
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A
▲インクルーシブ教育について語る大島院長
近年はインクルーシブ教育の普及に伴い、通常学級の中にいろいろなタイプの子どもが入ってきています。かつての日本は通常学級と特別支援学級を分けるという考え方でしたが、海外からインクルーシブ教育が伝わり、文部科学省が推進しています。そのため、通常学級にいる難聴や発達障害の子どもへの対応が重要になっているんです。耳鼻咽喉科の観点から言うと、最近は人工内耳をつける年齢が低くなっているので、リハビリテーションに近いような言葉の教育をしたり、聞こえる音への対応の仕方を指導したりします。その子だけでなく周りの子にも影響があるので、全体の環境作りや周囲の対応を考えることも、学校保健委員会の議題の一つと思います。
- Q学校健診をより効果的に行うために考えていることは?
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A
▲事前に健康状態を学校医に伝えることが重要
学校健診は、学校医がすべての生徒と接することができる貴重な機会です。その一方、限られた時間で的確に効率よく行う必要があります。そのためには、教師が日常の様子や保護者への確認を行い、事前に健康状態を学校医に伝えることが非常に重要です。保護者が子どもの健康状態を確認する機会になり、保護者の気がかりを学校が把握する架け橋になります。実は保育園や幼稚園も学校保健活動に含まれますが、残念ながらほぼカバーできていない。学校を担当する医師の数が足りないのが現状です。例えば私一人で9校を受け持っています。各園、各校にこまかく丁寧な指導ができるように、学校保健委員会として取り組んでいきたいと思っています。