長引く、繰り返す慢性的な咳症状
早期の専門医院受診が治療の鍵
渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック
(渋谷区/渋谷駅)
最終更新日:2024/09/26
- 保険診療
風邪などによる急性の咳は、ある程度期間が経過して風邪が治癒に向かうとともに自然に治まっていくものだ。しかし中には、3週間、4週間と過ぎても治る気配がなく、2ヵ月以上にわたって咳が続くことがある。こうした咳の多くは、喘息や咳喘息に起因するものであり、アレルギー疾患が隠れていることも多いという。「漫然と風邪薬や咳止めを飲み続けているが症状が改善されない」「咳で苦しく、生活に支障がある」といった場合、早めに呼吸器専門のクリニックを受診し、解決の糸口となる原因疾患を見つけることが大切だ。今回は、長引く咳の原因や治療方法、受診のタイミングなどについて、「渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック」院長で、日本呼吸器学会呼吸器専門医の土肥眞(どひ・まこと)先生に聞いた。
(取材日2024年2月28日)
目次
慢性的な咳を改善するポイントは、専門の医師による原因疾患の特定と適切な服薬、生活習慣の改善にあり
- Q長引く咳、繰り返す咳には、どのような原因が考えられますか?
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A
喘息・咳喘息が原因の6~7割を占めます。また鼻と気管支は解剖学的につながっているため、片方の病気がもう一方の器官に影響を及ぼすとわかっています。これを“one airway, one disease”といい、当院では上気道である鼻から喉、下気道である気管支と肺を「気道」として一元的に捉えた治療を提供。他にも肺結核や非結核性抗酸菌が原因になることや、長引く咳を主症状とする肺がんが原因となることもあります。喉や気管支の粘膜が過敏な方は炎症が起きやすいため、喉の酷使や喫煙といった生活習慣が影響することも多いです。この場合、疾患だけでなく生活も見る「トータルライフケア」の視点から治療を考えています。
- Qどんなタイミングで受診するのが望ましいのでしょう。
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A
咳は持続期間の長さによって、発症から3週間以内を急性期、3週間から8週間を亜急性期、8週間以上になると慢性期と区分されます。慢性期の咳には、急性期とは異なる要因が隠れている可能性が高いため、原因疾患に応じた治療をする必要があります。例えば、風邪が治ったのに、あるいは風邪をひいていないのに咳が3週間以上続くときには、呼吸器専門医へ行き適切な診断を受けることをお勧めします。花粉症などのアレルギーで服薬をしても喉の違和感や咳が残るときは、上気道から下気道へ炎症が進んできた可能性が高く、やはり早期の受診をお勧めします。
- Q診断はどのように行いますか?
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A
風邪が長引いて咳が止まらないと患者さんが言ったからといって、安易に咳止めや風邪薬を処方しても状態は良くならないと考えています。まずはよくお話を伺って状況をつかみ、胸部エックス線検査や血液検査、呼気中の一酸化窒素の濃度から気道の炎症状態を測定する検査などを組み合わせて診断していきます。原因が判明し、当院で治療が行える場合はそのまま治療に移りますが、喘息、咳喘息以外の病気、例えば肺結核や肺がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが疑われ、当院にないCTでの検査が必要な場合、総合病院の呼吸器内科へ紹介します。
- Q治療の方法についても教えてください。
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A
治療は原因疾患によって異なります。アレルギーがある咳には、ステロイドの吸入薬や気管支拡張薬、抗ロイコトリエン薬などを使用。併せて気管支の粘膜の炎症を抑えるために、「トータルライフケア」の考え方に基づく自己管理のアドバイスを行います。例えば、過敏になっている気道を刺激しないように水分の摂取をこまめにする、保湿に努める、鼻呼吸をする、禁煙する、免疫力を高める、マスクをするなど。こうした患者さんご自身の努力がとても重要です。患者さんが治りたいという意思を持って生活を工夫し、医師が医療の力でその意思を支えることによって、症状をコントロールして生活の質の向上をめざせます。
- Q他に患者が注意すべきことはありますか?
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A
治療を始めたら、自己判断で薬を減らしたりやめたりしないことです。定期的に状態を評価して根気強く改善をめざしていきましょう。症状が軽快したと思い薬をやめると、症状の再発や悪化を招きます。なぜなら、表面的な咳は抑えられたとしても、気管支の炎症は完治しておらず、粘膜もダメージから回復していないままだからです。患者さんの「良くなりたい」という意思に並走する治療を心がけてまいりますので、薬の量を含めて、よく相談しながら進めていきましょう。