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土肥 眞 院長の独自取材記事

渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック

(渋谷区/渋谷駅)

最終更新日:2024/09/26

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック main

開業から10年を迎えた「渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック」。専門領域である咳とアレルギー疾患について土肥眞(どひ・まこと)院長に聞くと、いつも初診患者への説明に使うという手製の図を示し、わかりやすい言葉で疾患の仕組みや治療方法、治療の背景について説明してくれた。「こうやって説明に時間をかけるから、急性の咳までは手が回らない」と苦笑するが、生活の質を低下させる咳やアレルギー症状の原因を知りたい、適正な治療で症状を改善したいと考える人にとってこれほどありがたいことはないだろう。「医療者は疾患との戦い方をアドバイスし、実際の戦いに並走するボクシングのセコンドのようなもの」と話す土肥院長に、実践する治療の内容や方針について聞いた。

(取材日2024年3月9日)

大学時代の基礎研究を現在の臨床に生かす

開業から10年たちましたが、現在の診療の軸について教えてください。

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック1

開業当初は忙しいビジネスパーソンが多い渋谷で、広く皆さんの健康をサポートできたらと思っていました。しかし、次第に私の専門領域である亜急性や慢性の咳、運動や食べ物に起因するアレルギー疾患の患者さんが増え、今はこの2つが診療の中心です。クチコミでの受診もありますし、インターネットで自身の症状や解決法を検索した結果、当院が見つかったという方も少なくありません。それだけ従来の治療を続けても症状が改善せず、悩んでいる方が多いということなのでしょう。現在は専門領域の患者さんで新患の予約がいっぱいのため、風邪による上気道炎をはじめとした急性期の咳や一般的な内科疾患については、近隣の、内科全般を診療されておられるクリニックの先生方にお任せしています。

喘息とアレルギーは大学時代から研究されていたそうですね。

難治性の疾患を抱えた患者さんが多く訪れる東京大学医学部附属病院のアレルギー・リウマチ内科に所属し、呼吸器グループのチーフとして、診療をしながら基礎研究を続けていました。今できる治療を誠心誠意行うだけでなく、なんとか新しい治療法を見つけ出して患者さんを少しでも楽にしてあげたいと思っていたのです。数々の基礎研究や動物実験を通じて、気管支粘膜の再構築がアレルギーの重症化予防、気道過敏性の抑制につながること、食物アレルギーの人にも気道に潜在的な炎症があることなどがわかりました。現在は当時の研究結果と新たな知見を組み合わせて診療を行っています。診療の重要な方針である「トータルライフケア」も、大学病院時代の臨床と研究によって得た学びの一つです。

トータルライフケアとはどのような概念ですか?

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック2

私たちの体は、呼吸・循環・代謝のサイクルが正常に機能することで健康を維持しています。現在かかっている病気の悪化を防ぎ、新たな病に罹患するのを避けるためには、日常生活を少しずつ見直してスムーズにこのサイクルを回す必要があります。例えば正しい姿勢を保つ、適度な運動をする、良質な栄養と睡眠を取る、深く呼吸をするといったことですね。これを「トータルライフケア」と呼び、科学的根拠に基づいた、安全に配慮された適切な治療と並行して行うことを重視しています。気持ちも身体機能に影響しますから、患者さん自身が「良くなりたい」「健康でありたい」と思うこともトータルライフケアの一環です。病気と闘うボクサーは患者さん自身で、私たち医療者はセコンドに過ぎません。患者さん自身が病気を知り、生活を見つめ直すことによって、ともに闘うパートナーになれると思っています。

相関性がある鼻と気道のアレルギーは、同時治療を推奨

亜急性や慢性の咳に対しては、どのような治療を行うのですか?

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック3

咳喘息や気管支喘息になる人は、気管支の粘膜が繊細です。喫煙、感染、気候の変化などで気管支に炎症が起きると悪化しやすく、その結果、咳や痰、息苦しさなどが出やすい特徴があります。これを「気道過敏性」と呼びます。気道過敏性には原因不明な先天的なものと、アレルギーなどをきっかけに発症する後天的なものがあります。前者は治療法が確立されていませんが、薬や生活改善でコントロール可能なため、適切な薬の提供とともに、禁煙や喉を酷使せずに潤いを保つことで、粘膜の良い状態を維持するようお伝えしています。また鼻・喉・咽頭などの上気道と、気管・気管支などの下気道は構造的につながっており、どちらかに炎症が起きるともう片方にも影響するのです。上気道と下気道を一つの器官として捉える“one airway, one disease”の考え方に基づき、一方が病態を示すときはもう一方も調べ、同時に治療することを心がけています。

では花粉症で感じる喉の違和感が、気管支に出てくることも考えられるのですね。

花粉症のシーズンに鼻や目がかゆくなり、やがて咳が出たり喉に不快感があったりする場合、気管支にアレルギー性の炎症が出ていることがほとんどです。この場合、花粉症の薬だけでは全体の症状を改善に導くことはできません。“one airway, one disease”を前提に気管支を調べ、同時並行で治療していくことが根本的な改善につなげるためのポイントです。花粉症をきっかけに潜在的な喘息が見つかれば、早期検査・早期治療で発症の抑制もめざせます。

ご専門の一つである、運動によるアレルギー症状についても教えてください。

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック4

「運動誘発アナフィラキシー」といい、運動が引き金となって、時にはショックなどの激しいアレルギー症状が出現する病態です。テニスやバスケットボールといった激しい運動が契機になることが多いですが、散歩でも起こることがあり、必ずしも強度の強い運動で発症するとは限りません。さらに、運動の前に食事をすることで起こりやすくなることもわかっています。原因となる食べ物を特定して運動前に取るのを避ける、食後2時間は運動をしない、症状が出たら抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイド薬などを使う、といった方法でうまく付き合っていく必要があるのです。

今後も、慢性の咳とアレルギーに特化した診療を継続

運動誘発アナフィラキシーに注目されたきっかけは?

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック5

国立病院医療センター(現・国立国際医療研究センター)に勤務していた頃、当直をしていた私のもとにショック状態の患者さんが搬送されてきました。皮膚は真っ赤に腫れあがり、血圧は大幅に低下。ただちに副腎皮質ステロイド薬の点滴などショック時の治療を行いました。話を聞くと、それまでも卵を食べたときやウールの服を着たとき、運動をしたときに肌が赤くなりぼんやりすることがあったというんですね。その日は朝食で卵を食べ、ウールの服を着て出かけてテニスをしたそうで、それらの誘因が組み合わされたために強い症状が出現したのだろうと推察されました。後に東大物療内科に入局し、先輩にその話をしたところ、アメリカで注目されていた運動誘発アナフィラキシーによるショックであることがわかったのです。それ以来私の重要な研究テーマとなり、先輩とともに少しずつ症例を集め、論文として報告しました。

潜在的な患者は多いのでしょうか。

日本では小麦アレルギーが引き金になることが多いのですが、身近な食材なだけにわずかなアレルギー症状には気がつかず、食べてしまう人も少なくありません。ホームページを見て「もしかしたら」と受診される方も多く、この病気は増えていると感じます。特に心身の疲労で自律神経系のバランスが乱れていると症状が強く出やすいため、注意していただきたいですね。食べ物や運動の他、飲酒、ストレス、睡眠不足、風邪をひいて薬を服用するといったことがリスクファクターで、これらが重なったときが非常に危険なのです。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック6

アレルギーは全身性の病気で、粘膜の弱さに起因して発症します。アレルギー体質自体は治せませんが、例えば運動誘発アナフィラキシーのように原因を特定して適切な対策を取れば、共存は可能だと考えています。長引く咳やアレルギー症状にお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。現在、予約から診療まで1週間ほどお待ちいただいていますが、初診ではしっかり原因を突き止めて治療の方向性を示すようにしています。設備機器の関係上、当院での治療が難しい重大な呼吸器疾患、他領域の疾患などについては、近隣の専門クリニックや大学病院などにご紹介しています。守備範囲以上の患者さんを抱え込むことなく、当院の専門性が生かせる範囲での診療をこれからも実践してまいります。

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