全国のドクター9,186人の想いを取材
クリニック・病院 158,624件の情報を掲載(2024年4月26日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 渋谷区
  4. 渋谷駅
  5. 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック
  6. 土肥 眞 院長

土肥 眞 院長の独自取材記事

渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック

(渋谷区/渋谷駅)

最終更新日:2021/10/12

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック main

一面に広がる大きな窓から、柔らかい自然光が入る「渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック」は、待合室に足を踏み入れた瞬間、ホッとする空間だ。インテリアはシンプルで清潔感があり、ここが医療機関であることを忘れるほどリラックスできる。大きなテレビモニターには、科学的根拠に基づく健康情報が映し出され、待ち時間の間に知識も身につく。診察室に入るとさらに安心感は増すだろう。おだやかで、優しい人柄の土肥眞院長が丁寧に診察してくれる。クリニックのロゴマークは、院長自身が原案を考えた。「ロゴの青色は海や水、緑色は大地。そしてそよ風のようにきれいな空気が肺に入るイメージ」だと言う。その土肥先生に、診療にかける思いをじっくり伺った。

(取材日2013年7月25日)

東大時代に発案した「トータルライフケア」

クリニックの場所を渋谷に決めたいきさつをお聞かせください。

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック1

私はもともと渋谷区の出身で、馴染みのあるエリアでした。また、私の専門はアレルギーですから、働き盛りの患者さんの割合が多くなります。忙しく働く人の多い渋谷で、みなさんの健康をサポートできたら、と思ってたまたま渋谷を歩いていたら、ビルの1階に「For Rent」と看板が出ているのを見かけました。駅からも近いし、ある程度のスペースもありそうでした。気になって中を見せてもらうと、まさに私がイメージしていた物件でした。「ここなら、私が目指す理想の医療ができる」と直感したのです。

どのような診療コンセプトを掲げていらっしゃるのでしょうか?

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック2

「トータルライフケア」という発想を大切にしています。科学的根拠に基づいた安全で的確な治療をすると同時に、患者さんご自身も日常生活を見直し、健康を促進する「全人的」な医療です。十分な睡眠、栄養、そして適度の運動。その根本となる適切な姿勢と呼吸法。本当に健康な身体を手にするには、治療や検査に加え、そうした日ごろの生活を見直すことが必要です。そしてなにより、患者さんご自身の「良くなりたい」という気持ちがとても大切なのです。よく、「患者さん中心の医療」と言いますが、私はこれを「患者さんが中心となって、自ら治していく医療」だと考えています。ちょっと、マンガ『あしたのジョー』を思い浮かべてみてください。どんなに大変な試合でも、実際に戦うのは主人公のジョー本人ですよね。セコンドの丹下のおっちゃんから必死のアドバイスを受けながら、懸命に戦います。医療も同じで、病気と戦うのは患者さんご自身です。医療従事者はセコンドとして応援することしかできません。ですから患者さんご自身が、治療を受けるだけでなく、普段の生活を見つめ治すことが欠かせないのです。もちろん、我々は医療のプロとして全力をかけて応援します。

普段の生活にまでアドバイスいただけるとは心強いですね。

私が「トータルライフケア」を思いついたのは、東京大学病院のアレルギーリウマチ内科に所属し、呼吸器グループのチーフとして診療した経験を通してです。そこには、治療の難しい病気の患者さんが大勢訪れます。全国あちこちの病院を巡って東大にたどり着いた、という方も少なくありません。私は、医師として何とかよくしたい、少しでも患者さんをラクにしてあげたいと考えながら診察し、一方で新しい治療を目指した基礎的な研究も行っていました。しかし、医学研究が実際の臨床に応用されるまでには、長い時間がかかります。そこで、医学だけでなく、日ごろの生活をしっかり見直すことで、たとえ難病の方でも、少しでも症状をよくできないかと考えたのです。治療+生活のケアを両輪とした診療を今後も大切にしていきたいと思います。

食べて歩いただけでショック症状が起きることもある

これまでで印象深い患者とのエピソードを聞かせてください。

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック3

まだ研修医だった頃、国立病院医療センター(現・国立国際医療研究センター)での出来事です。ある日曜日、当直をしていたらショック状態の患者さんが救急搬送されてきました。皮膚は真っ赤に腫れ上がり、血圧が大幅に下がっている。意識はもうろうとし、非常に危険な状態です。しかし、副腎皮質ホルモンの点滴など、ショック時の治療をしていると、みるみる回復していきました。医療スタッフが引き留めても、「大丈夫だから」と歩いて帰っていったのです。その際、一言残されていったのが「自分は卵とウール、そして運動で皮膚が赤くなり、意識が朦朧とすることがある。今朝はそれが全て重なった。朝食で卵を食べ、ウールの衣類を着て出掛け、テニスをした。」ということでした。後日、医局で先輩医師とその話をしていたら、アメリカで注目されていた「運動誘発アナフィラキシーによるショック」であることがわかりました。

どのようなことが原因なのでしょうか?

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック4

何かを食べて運動するとショック状態になるアレルギー体質です。以来、それは私の研究テーマの一つとなり、少しずつ症例を集めて検討し、論文として報告しました。わが国では小麦のアレルギーが引き金になることが多いのですが、身近な食材なだけに気がつかず、食べてしまう人も少なくありません。パンやパスタなどを食べたあとは安静を要する人も数多くいました。また心身の疲労で自律神経系のバランスが乱れているときに、症状が強く出やすい傾向があります。食べ物や運動のほか、ストレス、睡眠不足、風邪をひく、などさまざまなリスクファクターが重なったときが危険なのです。この病気を持つ患者さんは増えていますから、注意を促したいところです。

クリニックには特徴的な検査機器はありますか?

基本的な検査機器は一通りそろっています。加えて、呼吸をする時に使う筋肉(呼吸筋)の強さを測る装置も備えています。現代人は呼吸の浅い人が増えているといわれています。トータルライフケアの視点からも、ゆっくりと深い呼吸をすることは大変重要で、その指標として活用しています。最近、自律神経のバランスを評価する機器を取り入れ、血管年齢と共に測定できるようにしました。

忙しさの中でも、運動する時間を見つけることが大切

大変お忙しいとは思いますが、オフタイムはどう過ごされているのでしょう?

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック5

アメリカに留学した頃にはよくフライフィッシングを楽しんでいました。今は、健康のため少しでも体を動かすことを意識しています。休日に時間がある時はジムに行くようにしていますし、忙しいときでも散歩くらいはするようにしています。エスカレーターはできるだけ使わずに、階段を一段飛ばしで歩いて上がるようにしています。以前、当直中に腰を痛めた経験があるので、運動の大切さは骨身にしみていますね。私自身も、トータルライフケアの発想で健康管理をしているんです。忙しい人は「運動することの大切さは分かっていても、時間を取れない」という話をよくおっしゃいますが、数回でもいいので、毎日スクワットを続けるだけでも違いますよ。日常生活の中で少しずつでも身体を動かすことが大切です。

やはり規則正しい生活が大切なのですね。

土肥眞院長 渋谷内科・呼吸器アレルギークリニック6

人間は、60兆個からなる身体の細胞に、酸素と栄養を適切に届けることで、呼吸 (Respiration)、循環 (Circulation)、代謝 (Metabolism)が正しく働きます。私はそれぞれの頭文字をとって「R-C-Mサイクル」と名付けましたが、このサイクルがスムーズに回ることで健康が保たれるのです。テレビや雑誌などには、時に極端な健康法が紹介されていますが、中には科学的ではないことも散見されます。結局は、正しい姿勢と呼吸、適切な睡眠、栄養、運動を継続することが健康への近道であることは、科学が証明しています。昨年、そうした考えを1冊にまとめた本を書きました。東大にいたころは、その本を用いて患者さんに健康指導をしていました。今年の春には、1枚ごとに健康法が書かれたカードと、解説書と組み合わせた一般向けの書籍も出版しました。毎朝トランプをめくるようにカードを引き、「深呼吸10回」などと書かれた健康法を実践してゆくことで、徐々に健康へと近づきます。ゆくゆくは、クリニック内で健康教室を開きたいですね。

読者の方にメッセージをお願いします。

アレルギーは、自分で気づかないうちに発症することがあります。風邪で咳が止まらないと思っていたのが、実は呼吸器系のアレルギーだったということもありますし、それまで平気だった食べ物が、ある時からアレルギー症状を引き起こすこともあります。まずは、自分の体を知ることが大事です。食べ物を食べて少しでも違和感がありましたら、一度検査をしてみてもいいでしょう。30代くらいから、そうしたケアをしておくことで60代、70代になったときの元気が違います。ぜひ、トータルライフケアの発想で、健康な日々を送ってください。

Access