川本 晃也 院長の独自取材記事
川本歯科医院
(杉並区/東高円寺駅)
最終更新日:2023/11/13
東京メトロ丸ノ内線の東高円寺駅から徒歩10分、環状7号線から少し入ったところに位置する「川本歯科医院」は1951年の開業以来60余年、地域密着型の歯科診療を続ける歯科医院だ。先代である父と兄から、歴史ある同院を引き継いだ川本晃也院長は、ユーモアにあふれ、気さくで話しやすい先生。予約制を取っておらず、困った時はいつでも駆け込める診療体制も同院の大きな特色だ。歯から患者の健康を守りたいと願う川本院長に、同院の特徴や診療方針、今後予定している改装や娘と2人の新たな診療体制についても話を聞いた。
(取材日2018年12月14日/情報更新日2019年1月6日)
患者の利便性を考えた予約を取らない診療体制
こちらの歯科医院の特色を教えてください。
予約制を取っていないことが大きな特色です。父の代から、歯はいつ痛くなるかわからない、痛くなったらすぐに来ていただいて治療ができるように、という考えから予約を取らないようにしてきました。2回目以降の治療でも、いつ頃に来てくださいとはお伝えしますが、その前日に来ていただいても違う日に来ていただいても構いません。痛くなったらすぐに診られる、詰め物やかぶせものが取れたらすぐに治せるという姿勢は変えたくないですね。ただ、最近は患者さんをお待たせすることも多くなっているので、待ち時間をいかに短くするかということを考えています。予約制でないことは患者さんにとって利便性が高いと考えています。
治療の際に心がけていることは何でしょう?
歯は28本、親知らずを入れると32本あって1つの器官です。なるべく失わず残せる歯はしっかり治療します。残せない歯は仕方がなく抜歯になりますが、ブリッジ、入れ歯やインプラントで補い28本の状態を保つことが大切です。また咬み合わせも大事です。咬み合わせがずれると効率よく食事を摂取できないだけではなく顎の関節にも障害が出やすくなります。顎の関節は体の中で1つの動きに対して2つの関節がある唯一の器官です。この関節のバランスが崩れると顎関節症や頭の痛み腰痛などを引き起こすこともあるからです。このことは私が歯科医師になった当時から今に至るまで心がけて治療に専念しています。
患者さんを診る上で大事にされていることはありますか?
治療内容を十分に理解していただくことです。そのために、専門用語をなるべく避けて、わかりやすく説明するよう努めています。治療方法を選択していただく際にも、それぞれのメリットやデメリットを説明するために、時には模型を見せたり絵を描いたりします。例えば、差し歯というと歯茎に差すものだと思っている方が多いのですが、実際は歯の根っこを残してそこに差しているんですね。それを絵に描いて説明させていただくと、患者さんも理解してくれます。ある時、患者さんから「先生は処方箋のいらない薬を出してくれますね」と言われたことがありました。一体どういうことかと聞いてみると、私とじっくり話しているだけで元気になれるということでした。そんなふうに言ってもらえた時はうれしかったですね。
新たなステージへとつなぐ娘と2人体制の診療を模索
歯科医師を志したきっかけを教えてください。
幼少の頃から、ライトプレーンやプラモデルなどを作るのが好きでした。そこから始まって、将来は義手や義足を作りたいと考えるようになったのが小学生の時です。結局それが入れ歯作りになった、ということでしょうか(笑)。中学に入る頃には将来は医師か歯科医師になろうと決めていました。早くから医療関係に進もうと考えたのは、やはり両親の影響でしょうね。私が生まれた時にはすでに開業していて、その背中を見て育ちましたから。親から医療の道をめざすように言われたことは一度もありませんでしたが、働く姿を見ているうちに、憧れる気持ちを抱くようになったんだと思います。医師ではなく歯科医師になろうと決めたのは大学受験の時です。歯科医師のほうが向いているのではないかと考えました。
日本大学歯学部ではどのような研究を行っていたのですか?
日本大学歯学部総合歯学研究所で、通称「材研」と呼ばれる材料研究室に籍を置いていました。ここでは、印象材の型採りの研究や型採りや石膏を流し込む際に付着した細菌をいかに取り除いて感染を抑えるかという研究をしていました。時代的に肝炎とかエイズとか、感染に関する病気に注目が集まっていた時期でしたから、興味を持ったんですね。そこで学んだことが、現在当院における感染対策に役立っています。感染対策が特に重要なインプラント治療は休診日の土曜に行うのですが、その日はスタッフしか診察室に入れませんし、部屋中を全部滅菌の状態にしてから行います。インプラント治療では、細菌感染を防ぐことが治療の成功率を高める重要な要素なので、今でも滅菌体制を整えていますが、今後予定している改装を機にさらに高めていきたいと考えています。
改装ではどのような計画をされているのですか?
歯科用CTの導入、滅菌に関しては高温高圧の飽和水蒸気によるオートクレーブ滅菌の中でも最高水準のものを導入しようと考えています。やはり消毒関係は重点的に力を入れていきたいです。将来は、娘と一緒に診療を行う予定なので、今後は、院内の設備やインテリアなども具体的に話し合っていかなくてはいけません。現在、娘は日本大学歯学部を卒業し、研修医として2年勤め、大学で小児歯科を専門にしています。患者さんによりよい治療を提供するために、いろいろなことを勉強しています。当院は古いので、もともと親子3世代で通ってくださる患者さんも多いのですが、ユニットを2台設ける予定なので、お母さんと子どもさんが一緒にそれぞれのユニットで治療を受けるということも可能になると思います。今までどおり、予約なしの体制に加えて、娘の患者さんは予約制にするなど、両立ができるといいのではないかと考えています。
全身の健康を守る地域密着型の歯科医院であり続けたい
先生は長く往診を続けておられるそうですね。
要請に応えるかたちで始めたのですが、往診を始めてもう20年以上になります。行き先は、病院や介護老人保健施設、後は杉並区からの委託です。往診では、100%の治療ができるわけではないので、ジレンマを感じることもあります。患者さんの中には口を開けることに抵抗を感じる人もいますし、新しい入れ歯を受け入れない人もいます。ただ、往診に行く以上は、患者さんが普通の食事を取ることができるようにして差し上げたいですね。施設で食べるミキサー食では、味がわからず、唾液腺の機能が低下し、それが進むと口腔乾燥症になります。そうすると、口腔内の菌が増えるんですね。反対に、噛むことが刺激になり、唾液が出て、味もわかるようになることも。診療を行うことで、元気になっていくことの手助けができることはうれしいですね。
まさに食べることは、健康の源ですね。
当院では、父親の代から「護歯延齢」を診療のモットーにしてきました。健康のためには歯を守ることが大切、という考え方です。歯が悪いと消化器に負担をかけ、噛み合わせが悪いと腰痛など整形外科的な病気につながる。また心臓の病気、糖尿病など他のあらゆる病気につながりやすいと最近よく言われていますが、これは今に始まったことではなく、当たり前の話だと思います。歯を治すのも予防するのも、ご本人の意識次第です。歯科医師は痛みを取ったり、治療をするなどのお手伝いはできますが、大切なのは患者さんの力だと思います。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
ある大学の学是で「人在りて我在り、他を思いやり、慈しむ心」という言葉があります。この言葉は「人に一番必要なものは、自分のことばかりではなく、他人の立場になって考えること」といった意味です。私の好きなこの言葉を胸に日々の治療に取り組み、試行錯誤していきます。当院は、近隣のご年配の方からそのお孫さんまで幅広い世代の方々に通っていただいてます。もっとより良い医療を提供するためにも環境面だけでなく、講習会に参加し、最新の材料を学ぶなどブラッシュアップし続け、娘と2人の新たな体制での診療へとつなげていきたいと思います。親子で愛される歯科医院をつくることが今の目標です。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/35万円~、ワイヤー矯正/20万円~、詰め物(1本)/3万円~、入れ歯・義歯/15万円~