実は似て非なる疾患!?
狭心症と心筋梗塞
阿部内科クリニック
(相模原市南区/相模大野駅)
最終更新日:2021/10/12


誰もが一度は耳にしたことのある病名「狭心症と心筋梗塞」。狭心症の進行したものが心筋梗塞と思われがちだが、実はこの2つはまったくの別物。命に係わる病気だからこそ、正しい知識を身に付けできる限りの予防に努めたい。そこで、心臓カテーテル症例数8000例以上、日本心臓病学会特別正会員である「阿部内科クリニック」の阿部純久院長に、それぞれの病気についての共通点、相違点、予防について伺った。
(取材日2013年6月13日)
目次
最大の敵は生活習慣病。男性はもちろん女性も要注意
- Q狭心症と心筋梗塞それぞれの特徴について教えてください
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A
▲図を使い丁寧にわかりやすくメカニズムや症状を説明してくれる
どちらも心臓(心筋)に血液を送っている冠動脈に、コレステロールや血栓が付着して起こる動脈硬化が主な原因です。しかし、発症の仕方はまったく違います。狭心症の多くは動脈硬化が進み、血管が狭くなることで、運動時に心筋への血流が十分でなくなり、胸の痛みや圧迫感がおこります。このように動作によって起こる狭心症を労作性狭心症と言います。また安静時に血管がぎゅーっと収縮して発作が起きる冠攣縮性狭心症もあります。どちらも持続時間は数分間です。発作の起こり方に変化がないものを安定狭心症、症状が悪化したり初期の労作性狭心症を不安定狭心症と言います。それに対して心筋梗塞は7〜8割が突然発生で、あまり狭くない血管に血栓ができ、血管が完全に詰まって心筋細胞が壊死してしまうことです。胸痛も数時間持続します。事前に自覚症状がないのが特徴ですが、1〜2割は不安定狭心症から心筋梗塞が起こります。
- Q原因である動脈硬化が起きやすいのはどういった人ですか?
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A
▲男性の病気、という認識は大間違い。女性も要注意
一番の因子は年齢ですが、高血圧・糖尿病などの生活習慣病やメタボの方はリスクが高くなります。今現在、症状がなくても将来の狭心症または心筋梗塞の予備軍ですから、日頃からカロリーコントロールをしていただく必要があります。男女別に見ると圧倒的に男性のほうが多いのですが、実は女性も他人事ではありません。女性の場合、閉経までは女性ホルモンの働きで動脈硬化を抑制してくれますが、その後60歳過ぎ頃から急速に動脈硬化が進行し始めます。ある統計によると、80代の女性の心筋梗塞が年々増えていて、女性で発症する人の約4割が80代だということです。高齢化社会に伴い男性も高齢者の発症が増えていますが、より顕著なのは女性だということがわかっています。
- Qどのような症状があれば受診すればいいのでしょうか?
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A
▲日常生活の中に、狭心症のサインが
心筋梗塞は残念ながら現時点では、どんな検査をしても兆候を見つけることができません。日頃から運動しているマラソン選手が大会中に発作を起こすこともあり、サイレントな病気と言われています。一方、狭心症のサインは、階段や坂を上がっていると今までにない胸苦しさを感じることや、平地であるにもかかわらず、朝に限って5分ほど歩くとつらくなり休みながら進まなければいけないという症状などがあげられます。息切れや、ズキン・チクンといった痛みとは明らかに違う胸を掴まれるような苦しさや圧迫感のほか、痛みが放散して顎や奥歯、肩に症状がでることもあるので、そういった自覚症状があった場合には受診をお勧めします。
- Q 「阿部内科クリニック」ではどのような診療をされていますか?
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A
▲何気ない会話の中に、病気の兆候が隠れていることも!?
まずはお話をよく聞いて、どの程度で症状が起こるのかを確認します。軽く外を歩いて来ていただき、運動前と運動後の心電図を比べ、自覚症状があり心電図の変化も認められれば、狭心症ということで間違いありません。仮に心電図に変化が表れなくても、昔から「狭心症は9割が問診でわかる」と言われているので、患者さんのお話をよく聞いて疑わしいと思ったら、すぐに病院を紹介するようにしています。これまでもそういった事例はいくつもあり、入院して即カテーテルということもありました。患者さんも「これは関係ないだろう」と自己判断せずに、感じていることや症状など何でも話をしていただきたいですね。その上で的確な診断をしていきます。
- Q狭心症や心筋梗塞と診断された後はどのような治療が行われますか?
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A
▲リスクを減らすためには、生活習慣を見直すのが重要
心筋梗塞は起こったらすぐにカテーテル治療を行うことで、死亡率や合併症のリスクが一気に下がります。このように、カテーテルは急性の心疾患には効果がありますが、狭心症のような慢性の心疾患の場合は、必ずしも最適かというとそうではありません。安定・労作性狭心症の治療は冠動脈の病気の状態によって、薬による治療、カテーテル、バイパス手術などの中からどれが最もよい結果を招くかを判断して治療方法を選択します。心疾患というとカテーテル治療(ステント)を思い浮かべる方も多いかと思いますが、カテーテル治療によって予後が改善するわけではないので、常に病状を見ながら正確に診断をし、治療方法を使い分けていく必要があります。