服部 美奈子 先生、白井 洋平 先生、松峯 美貴 先生の独自取材記事
東峯婦人クリニック
(江東区/木場駅)
最終更新日:2025/08/19

東京メトロ東西線・木場駅を出て永代通りを渡ると見えてくる「東峯婦人クリニック」。1980年の開業以来、数多くのお産に対応してきた歴史あるクリニックだ。現在は、妊娠・出産だけではなく、女性の体に起きるあらゆる問題に幅広く対応するべく、服部美奈子先生、白井洋平先生、松峯美貴先生らが各専門性を生かしながらチーム医療に注力している。現在も理事長として週に何日か診療にあたる初代院長・松峯寿美先生が掲げた「女性の一生をサポートしたい」という思いを、スタッフ全員が追求し続けている。具体的にはどのような医療を行っているのか3人に聞いた。
(取材日2025年3月27日)
幅広い診療で女性の生涯にわたるトータルケアをめざす
まず、こちらのクリニックの特色を教えてください。

【松峯先生】母でもある松峯寿美理事長が1980年に開業した、思春期から老年期まで女性の健康を生涯にわたってサポートすることを大切にしてきたクリニックです。ですから、クリニック名に掲げているのも「婦人科」でも「産婦人科」でもなく「婦人」なんですね。小学生でも生理が始まればお悩みに応えますし、HPVワクチン接種や、将来的な妊娠に備えた体づくりを行うプレコンセプションケア、不妊治療、プレママケア、そしてもちろん分娩も行っています。その後も更年期、老年期と生涯にわたって幅広く診療しているのは、女性全員のホームドクターが目標だからです。実際、娘さんやお母さん、おばあちゃんと3代にわたって通ってくださる患者さんもいらっしゃるんですよ。
それぞれどのような領域を担当なさっているのですか。
【松峯先生】産科、婦人科に携わっていますが、中でも産後うつ、授乳トラブルなどの産後ケアや、尿漏れ、過活動膀胱など、泌尿器科と婦人科にまたがる領域の診療を行っています。また、「女性のトータルケアをめざすなら骨盤の中だけでは駄目」という松峯理事長の考えのもと、3Dの自動乳房超音波画像装置を用いて痛みに配慮した乳がん検診も含めて、婦人科検診にも力を入れています。
【白井先生】私は産婦人科の他に麻酔も専門としているので、一般婦人科はもちろん痛みを抑えた分娩や、子宮筋腫などの手術、小切開創による開腹手術なども行っています。
【服部先生】妊娠・出産をめざす方、実際に臨もうとしている方、婦人科の病気の方と、女性特有のさまざまなご相談に対応していますね。外来だけではなく、クリニックとしては多い19床の入院病棟の管理を行い、分娩と治療にあたっています。
こちらではさまざまな出産に対応していると伺いました。

【白井先生】多いときは一日に複数のお産を行うこともありますね。立ち会い出産を推奨し、たとえ帝王切開でもお父さんには産声だけでも聞いてほしいので手術の間近で待機していただいています。また、無痛分娩も行っているのでご相談ください。
【服部先生】これまでおよそ50ヵ国の人たちの分娩にも対応してきました。宗教上の理由で女性医師以外に肌を見せられない、食事の配慮が必要といったこともありますが、臨機応変に対応可能です。
さらに医療体制が拡充し、子宮頸部異形成の治療も実施
2025年春から医療体制が拡充すると聞きました。

【松峯先生】はい。春から婦人科腫瘍を専門とする医師が常勤として診療に加わりますので、腫瘍に関する外来にさらに力を入れていく予定です。また、子宮頸がんの前がん病変である子宮頸部異形成についても、レーザー蒸散術や円錐切除術といった治療を日帰り入院で行えるようになります。
先生方やスタッフさんとの連携について教えてください。
【松峯先生】医療は1人では何もできないと思います。例えば痛みを抑えて分娩するにしても、麻酔の管理をする医師がいて、実際に赤ちゃんを取り上げる医師がいて、連携しながら一緒に取り組むことで成り立ちます。また、産科では助産師が主体といっても良いかもしれません。当院のスタッフは連携を深めるため、毎月1~2回、全員で勉強会や意見交換会などを行っています。医師は新生児蘇生講習会のみならず、分娩前後の母体安全に関する講習会を受けており、助産師は新生児蘇生講習会を受けていて、緊急事態が起きたときにも適切に対応できるようにしています。
【白井先生】院内だけでなく自治体の福祉課や保健所などとも連携しています。何らかの社会的な支援が必要と思われる患者さんがいらっしゃった場合は、地域の保健師さんなどにつなげてサポートできるよう配慮しています。
歯科検診やカウンセリングなども行っているのですね。

【松峯先生】妊娠期は口腔ケアがとても重要です。妊娠中は女性ホルモンの影響で歯肉炎になりやすく、歯周病に進行する恐れもあります。歯周病は早産や低体重児出産のリスクと考えられていますので、近隣の歯科医院と連携して、歯科検診も行っています。生殖について専門的に学んだ臨床心理士によるカウンセリングも行っています。不妊や産後、流産後、更年期など心のケアが必要になる場面も多いですから。また、今後は無痛分娩にもさらに力を入れていきたいですね。東京都の対応がどのようになるのかは現段階では不明ですが、いずれにしても前向きに取り組みたいと思います。
関連施設もすぐ近くにあるのですね。
【松峯先生】同じ医療法人社団グループの施設と必要に応じて連携しています。一人ひとりの女性が健康で長生きするだけではなく「いつまでも若々しくいたい」という願いをもかなえることができるよう、松峯理事長は長い時間をかけて尽力してきたのですが、いよいよ完成形が間近といったところです。
高齢になっても悩みがあれば気軽に受診を
こちらで働き始めたきっかけを教えてください。

【服部先生】松峯理事長は東京女子医科大学の同門で、お産はもちろん、難しい外科手術も冷静かつ精密にこなす憧れの先輩でした。お声をかけていただき現在に至りますが、女性一人でここまでクリニックを大きくしてきた例はなかなかありませんし、今でも心から尊敬しています。
【白井先生】当院とご縁ができたのは知人からの紹介でした。女性中心の職場に男性のニーズがあるだろうか、とも思いましたが、多少なりとも潤滑剤となったり、力仕事でお役に立てたりといったこともあるようで良かったです。男性不妊など男性医師を希望する患者さんも中にはいらっしゃいますしね。
【松峯先生】産婦人科の母、消化器外科の父はとても多忙でしたが、家でも楽しそうに仕事の話をしているのを見ながら育ちました。自然な流れで私も同じ道に進みましたが、これからも母の理念をレガシーとして引き継いでいきたいと思っています。
診療の際はどのようなことを大切にしていますか?
【服部先生】診察室には次から次へとさまざまな患者さんがいらっしゃいます。でも、たとえ何番目に来た患者さんであっても、今日1人目の患者さんとして新たな気持ちで向き合うようにしているんです。なぜならば、ほとんどの患者さんにとって私は「今日会うたった一人の医師」です。私も同じ気持ちで接したいと思っています。
【松峯先生】産婦人科ではしばしばデリケートな問題もあるからこそ、包み隠さずリラックスして話してもらえるように心がけています。そのためには患者さんを家族のように思い、提案するのが大事ですね。
【白井先生】患者さんは皆さん不安を抱えて来られますので、帰る時には少しでもその不安がほぐれるよう丁寧にお話ししています。お困りのことがあったとき、まず相談してみようと来てもらえるよう、間口を広くしてあらゆる悩みに応えていきたいと思っています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

【松峯先生】当院のオンライン診療はとても進歩しました。遠方の方でもオンラインで相談ができてお薬の処方も受けられるので、患者さんにとってはたいへん便利かと思います。
【服部先生】年齢も問いませんし、どんな小さなことでも構いません。ご高齢になっても婦人科の問題はあり、老人性膣炎、子宮脱など年齢を重ねたゆえの疾患もあるので、気兼ねなく足を運んでください。
【白井先生】女性同士だからこそ共感できる悩みもあると思いますが、当院は常に女性医師がいる体制なのでご安心ください。やはり、経験していないことを勧めるのもどうかと思うので、できれば自分も出産してみたいくらいですが(笑)、2人目、3人目も生みたいと患者さんが思えるように全力でサポートしていきますので、ご活用ください。