舘野 香織 院長、舘野 昭彦 副院長、舘野 冬樹 先生の独自取材記事
スマイルクリニック西大島
(江東区/西大島駅)
最終更新日:2022/06/02
都営新宿線の西大島駅より徒歩3分の場所にある「スマイルクリニック西大島」。もとは3代目院長を務める舘野香織先生の義父が開業したクリニックだが、2019年に隣地に移転させ、医院名も新たにスタートを切った。てんかんや発達障害を含む神経疾患に対する専門性の高い治療や検査を受けられるのが大きな特徴である同院では、夫にあたる舘野昭彦副院長が小児神経科と神経内科の診療にあたっている。香織先生は生活習慣病をはじめとする内科疾患や感染症、一般小児科を幅広く担当。夫婦二人三脚で診療を展開してきたところへ、2022年4月からは息子である舘野冬樹先生も加わった。親子3人で地域に貢献する医療を提供している同院について詳しい話を聞いた。
(取材日2022年4月11日)
親子3人で内科・小児科・神経内科と幅広く診療
こちらは歴史あるクリニックと伺いました。
【香織先生】もともとは義父が開業した「坂井医院」というクリニックでした。私自身は1991年から勤務して、2009年に3代目の院長に就任しました。義父の代から来院している患者さんもいらっしゃいますし、顔なじみの患者さんが多いです。隣接するビルの1階に移転しましたが、看護師や事務のスタッフは今までと変わりませんので、安心して来ていただけたらと思います。
【昭彦先生】診療のさらなる充実を図り、この先も長く患者さんを診ていくために移転を決めました。私は東邦大学医療センター佐倉病院小児科に長く勤務していましたが、現在は当院の副院長として診療を行っております。クリニックの「スマイル」という名称は、子どもたちに病気を乗り越えて笑顔を取り戻してほしい、という思いからつけました。
クリニックの診療内容について教えてください。
【昭彦先生】息子の冬樹先生が加わったことで診療範囲が広がったので、内科、睡眠時無呼吸症候群の診療、小児科、小児神経科、神経内科、てんかん治療など幅広く対応しています。私の専門分野は、てんかん、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉症などを代表とする神経発達症などの小児神経領域の診療です。子どもの時期に発症した神経疾患がキャリーオーバーした成人の診療にも対応します。
【香織先生】私は小児科と一般内科を担当しています。成人は生活習慣病の患者さんが中心で、定期的に来院する方に対して経過を診させていただいています。
【冬樹先生】私は大学病院で救命救急にも携わっていたこともあり、内科全般と、神経内科では神経難病を担当しています。
診療する上で大切にされているのはどんなことですか?
【香織先生】患者さんとコミュニケーションがとれていることで、治療もスムーズに進んでいくと思いますから、患者さんのお話はどんなことでもできるだけ聞くことを心がけています。
【昭彦先生】子どもを診ることが多いので、お笑い好きの性格を生かしてフランクに、友達感覚で話すことを心がけています。お互いの顔がしっかり見えるように、マスクも一切しません。お母さんから「こんな面白い先生は初めて」と言われたこともあるんですよ。
【冬樹先生】患者さんの症状をきちんと把握して丁寧な診察を行うことで、正確に疾病を診断し、治療につなげることを心がけています。また、患者さんの疑問にはしっかりと答えられる医師でありたいですね。
認知症やてんかん、神経に関する専門的な治療にも尽力
こちらで受けられる脳波検査とはどんなものですか?
【昭彦先生】脳波検査は主に神経内科の領域で、てんかんやけいれん性疾患、さらに認知症が疑われる際に行う検査です。他の病気との判別が難しいため、脳波検査によってより精密に判断していく必要があるのですが、専門的な検査は多くの場合大きな病院でしか受けられないという現状がありました。特に江東区では、一般のクリニックで脳波検査ができるところは少ないようです。現在は月1回、大学病院時代から一緒に仕事をしてきた検査技師による検査を行っています。緊急時には院長が脳波検査を行いますが、いずれにしても適切な診断と病気の早期発見につながればと考えています。
認知症の診断にも役立つのですね。
【昭彦先生】てんかんと認知症は、混同されることがとても多い症状です。てんかんが疑われる典型的な症状としては、会話をしているのに何も聞こえておらず、大事なイベントを忘れるといったものですね。物忘れを訴えて受診した方が、実はてんかんだったということも少なくありません。脳波検査ではそういった症状を判断していくことができます。
【香織先生】生活習慣病などで長く診ている患者さんもご高齢になっていますので、定期的な通院の中で、認知症の兆しを見つけることがあります。逆に、ご本人やご家族では気づかないことも多いので、いつもと違うかな?と気になったときは、私から副院長に相談をして検査を勧めることもあります。
こちらでは「神経特殊治療」を行っているそうですが、どういうものなのですか?
【冬樹先生】神経難病に対する治療のことです。神経難病には、数万人に1人が発症するといわれる純粋自律神経不全症、末梢神経系ならギラン・バレー症候群、筋肉系では筋ジストロフィー、脊髄系では脊髄炎、脳の運動分野では筋萎縮性側索硬化症や認知症、パーキンソン病など多岐にわたる病気があります。その中でも私は脳と自律神経を専門としていて、認知症の診察も行っています。神経特殊治療では、顔の筋肉の収縮や眼瞼けいれんを注射で抑制を図る方法などもあります。
どんな分野でも診療できるクリニックをめざす
ところで冬樹先生が医師になられたのはやはりご両親の影響ですか?
【冬樹先生】やはり、両親ともに医師だったというのが一番大きな理由だと思います。もともとは考古学者になりたくて文系に進んだのですが、担当の先生に「食べていけないよ」と言われて諦めたんです(笑)。それでも何かの学者になりたいという思いがあって、そこから医師をめざすことにしました。大学院では研究と臨床の両立を図り、博士号を早めに取得することができました。そのまま大学に残れば臨床よりも研究が中心になりますが、臨床をより極めたいという思いがあったので、両親とも相談して当院に移ることに決めました。現在は週4日勤務で、残りの2日間は叔父のクリニックで整形外科の治療にあたり、最低月1回は母校の東邦大学附属病院で非常勤医師として働いています。
今後の展望を教えてください。
【昭彦先生】江東区では、てんかんを専門に診るクリニックが少ないと聞いています。私は大学病院の外来で多くの患者さんの診療にあたってまいりました。当院では地域に根差したクリニックでありながら専門の検査も受けられますので、気軽に相談できるような存在になっていけたらと思います。また、てんかんや神経発達症の子どもたちを長く診てきた医師として、ハンディキャップのある子どもたちが、健康な子どもたちと一緒に楽しく生活できるような環境を整えていくことも考えていきたいと思っています。
【冬樹先生】一通りのスキルを極め、病気によってさまざまな病院に通院しなければならない患者さんを1ヵ所の通院で済むようにまとめていくことと、ゆくゆくは終末期医療や難病も含めての往診も手がけていきたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
【香織先生】在宅医療にも対応したいのですが、地域の保育園で園医を務めていることもあり、なかなか難しいのが現状です。そこで、訪問診療の医師や訪問看護の事業所と連携し、適切なタイミングで移行できるように道筋をつけていけたらと考えています。ライフステージの変化に合わせて、これからも、患者さんと心が通い合い、かつ安心できる丁寧な診療を心がけてまいります。
【冬樹先生】専門の神経内科以外にも内科、外科、泌尿器科、救命救急と何でもやってきたので、科の垣根を超えて診療に携わりたいと思っています。困ったことがあればどんなことでも相談できる地域のかかりつけ医として、常に患者さんの立場に立って考えられる医療を提供できるよう頑張ってまいります。