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安保 賢一 院長の独自取材記事

江戸川ホームケアクリニック

(江戸川区/船堀駅)

最終更新日:2023/04/06

安保賢一院長 江戸川ホームケアクリニック main

通院が困難な患者のもとを訪れ、日々の診療から最期の看取りまで行う訪問診療を行うクリニックは、在宅医療には欠かせない存在。そんな訪問診療クリニックの一つ「江戸川ホームケアクリニック」は、2003年に開業。以来15年以上にわたり、地域の人を支え続けてきた。院長は小児科・内科の両方で豊富な診療経験を持つ安保賢一先生。「めざしているのは町の開業医だった父が行っていたような昔ながらの医療。いわゆる“かかりつけ医”です」と話す安保先生に、開院のきっかけや在宅医療への思いを聞いた。

(取材日2019年1月30日)

患者の生活環境を整えることが治療のスタート

開業当初から、訪問診療中心のクリニックだったのですね。

安保賢一院長 江戸川ホームケアクリニック1

はい、そうです。私は、開業前は日本医科大学の内科におり、そこから派遣されて、葛飾区の病院で働いていました。そこは、日々患者さんが救急車で運ばれてくる二次救急病院。治療して、具合が良くなれば自宅や施設にお戻しするわけですが、「家に戻っても通院できないから困る」という方も少なくなかったんです。そんな中で訪問診療クリニックの話を聞き、ニーズがあるならやってみようかなと思ったのが開業のきっかけになりました。2003年当時は訪問診療を行っているクリニックはまだ少なく、困っている患者さんがいらっしゃいました。なら、困っている人が多い所、必要とされる所に行こうと思って、この場所で開業することにした次第です。現在は、江戸川区を中心に葛飾区、江東区、市川市で、数十人の患者さんを診ています。

どんな患者さんが多いのでしょう?

やはり一番多いのは、歩くのが難しかったり、寝たきりだったりして通院できないお年寄りの方ですね。それ以外では、身体障害などで通院が難しい方や、あともともとは小児科を専門にしていましたから、通院の難しい子どもたちも診ています。開業してもう15年以上になるので、小さい頃からずっと診てきて、もう成人式を迎えた人もいますね。患者さんのご家族から直接ご相談を受けることもありますが、開業当初と違い今は地域の医療連携も充実していますから、病院のソーシャルワーカーさんやケアマネジャーさんからの紹介で相談に来られる方が多いでしょうか。

来院した患者さんを診るのと訪問診療では、違いを感じる部分はありますか?

安保賢一院長 江戸川ホームケアクリニック2

病院やクリニックに来た患者さんを診ていた時は「病気の治療」にばかり集中していましたが、訪問診療では、治療にプラスして患者さんの生活環境も気にするようになりました。例えば、どんなお食事を取られているのか、お部屋は掃除されているのか、お風呂に行けているのか、トイレはちゃんと使えているのか、お薬は飲めているのかというようなことですね。診療室で「糖尿病だから食事に気をつけてください」と言っても、いつもの食事がコンビニ弁当やカップラーメンでは難しい。家に行けばそんな生活環境も把握できますので、必要に応じて介護保険の制度やいろいろな社会的援助についても説明し、ケアマネジャーさんやヘルパーさん、訪問介護ステーションの方、デイサービスの方たちとも連携しながら、生活環境を整えていくことを大事にしています。それなくしては、治療もうまくいきませんからね。

大切なのは「本人が過ごしやすいこと」

診療の際に心がけていることを教えてください。

安保賢一院長 江戸川ホームケアクリニック3

理想を押しつけないことです。先ほどの話とも通じますが、患者さんの多くはご高齢の方なので、「こうしたほうがいい」という理想はあっても、実際問題として実践できないことが多いんです。例えば、歩けなくなっている人に運動しなさいと言っても無理ですし、「1日のカロリーはこれぐらいに」と言っても、認知症のある方が守るのは難しい。ですから、そこはある程度できる範囲で行うことにして、無理はさせないようにしていますね。単に病気だけを診るなら、これはこうしたほうがいい、ああしたほうがいいというのはありますが、理想はあくまで理想。そこは杓子定規にならずに、たとえベストではないとしても、ご本人が過ごしやすいことを一番に考えています。

これまでいろんな患者さんを診てこられた中で、特に印象深いエピソードはありますか?

いろいろ思い浮かびますが、あえて選ぶならご自宅で亡くなるのを看取った方々でしょう。年間にお亡くなりになる患者さんのうち、半数以上はご自宅での看取りです。今までに数多く看取りをさせていただきました。そんな中で特に印象に残るとしたら、自宅で看取りたいとのご家族の希望で、老衰で亡くなられるまで診させていただくケースでしょうか。日常生活の中で最期を迎え、ご家族の方から「ありがとう」と言われたら、ああ良かったなと思えます。

最期の迎え方として、自宅での看取りを希望される方は多いのですね。

安保賢一院長 江戸川ホームケアクリニック4

そうですね。特に平均寿命を超えている方の場合は、痛い思いや苦しい思いはしたくないし、いろいろな治療で体に傷をつけられたくないということで、希望されることが多いです。自宅での看取りは、病院のようにできる限りの治療を尽くした果てに亡くなるというものではありません。病院なら、喉に管を入れて人工呼吸器をつけたり、薬を入れたりもしますが、おうちでは本人の希望に沿って、苦しくない状態で最期を迎えられることをめざす場合がほとんどです。例えば、がんなら痛みをとりつつ、最期は眠るような形で亡くなるというふうに。治療すればまた元気になって歩けます、お話ができるようになりますというのなら話は別ですが、そうでなければ住み慣れた自宅で苦痛なく最期を迎えたい、またそんな本人の希望をかなえてあげたいと考えるご家族は多いです。

医療以外の部分でも本人や家族が満足できるように

先生が医師をめざすようになったきっかけは何だったのですか?

安保賢一院長 江戸川ホームケアクリニック5

父親をはじめ、親戚もほとんどが医師ばかりだったので、自然に医療の世界に入っていったという感じでしょうか。父は開業医だったんですが、四六時中電話がかかってきては、夜中だろうとすごい雨風だろうと関係なく往診に行っていました。そんな父の姿を見て、なんとなくですが「自分もそうなりたいな」とは思っていたかなと思います。それが原点ですかね。

今後の展望についてもお聞きします。

これ以上手を広げる気はなくて、今後も自分の診られる範囲でしっかり診療を続けていくつもりです。医師を増やして規模を拡大していくのも一つの道でしょうが、そうすると「今月の診療はこの先生だけど、来月はあの先生」とか、「最期に亡くなる時はいつもの先生じゃなかった」ということになりがちです。でもそれでは、ご本人やご家族には不満が残ると思うんですね。医療はある程度人と人の付き合いなので、「私は正しい薬を出しました。正しい注射をしました。何も間違っていません」だけでは通らないもの。何をしたかももちろん重要ですが、結局は「何を」より、「どういうふうに」コミュニケーションを取ったかじゃないかなと思います。特別なことをしなくても、「最期に手を握ってくれた」ということが何よりの満足につながることだってあると思うので、そういうところを大切にして、続けていくつもりです。

最後に、読者にメッセージをお願いできますか。

安保賢一院長 江戸川ホームケアクリニック6

年をとれば体は弱ってくるもの。親子の場合どうしても元気な頃の親のイメージが強いので、つい「何をやってるの!」と言いたくなりますが、どんな人でも、いつまでも若い時と同じとはいきません。だから何か異変を感じたり、困ったことが起こった時は、早めに相談してもらえるといいですね。また、親御さんにできる限りいい治療を受けさせたい一心から、あっちの病院がいいんじゃないか、この薬のほうがいいんじゃないかとさまざまな検査や治療を探しがちですが、ご高齢になると体力も落ちているので、無理をして治療や検査を受けた分は、体に負担となって返ってくる場合もあります。無理をしたことがあだとなって余計具合が悪くなり、亡くなってしまうこともあるので、検査・治療は必要最低限にしておいたほうが、ご本人が幸せに長く過ごせるかなと思います。検査や治療を受ける際には、そのメリット・デメリットやご本人の希望も合わせて考えてみてください。

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