イボ痔を切らずに治療する
痛みの軽減を図るなら内痔核の注射療法
青木クリニック
(江戸川区/船堀駅)
最終更新日:2025/06/05


- 保険診療
一般的にイボ痔と呼ばれる痔核(イボ)は、軽症であれば生活習慣の改善や薬物療法で改善が期待できるが、結紮(けっさつ)切除術が適用されるケースも多い。イボ痔には肛門の内側にできる内痔核と外側にできる外痔核があり、内痔核に適応する治療方法として注目されているのが「痔核硬化療法」だ。メスで内痔核を切ることなく、注射によって痔核を固め、粘膜に癒着・固定した状態をめざす治療法で、結紮切除術よりも痛みや出血が少なく、身体的にも精神的にも負担が軽いというメリットがある。「実は痔の治療には痛みを伴うものが多いんです」と話すのは、「青木クリニック」の青木順院長。痛い治療が多い中、基本的に痛みを感じない部位に注射を打つという「痔核硬化療法」について、青木院長に詳しく聞いた。
(取材日2025年5月15日)
目次
痛みを感じない内痔核に注射し、粘膜の脱出や出血症状の改善を図る。内痔核に適用される痔核硬化療法とは
- Q肛門疾患にはどのようなものがあるのですか?
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A
▲周りに聞きづらい肛門についての悩みや症状について詳しく知る
一般的な言い方では、イボ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、穴痔(痔ろう)があり、これらは肛門の三大痔疾患と呼ばれています。そのほかには、肛門周囲膿瘍、直腸脱、肛門狭窄などがあります。切れ痔は、固い便の影響で肛門が切れた状態です。一度切れると、傷が治る時にその部分が瘢痕化(はんこんか)して再び切れることを繰り返し、肛門狭窄に発展する可能性があります。穴痔は直腸からお尻にかけてトンネルができた状態。このトンネルにばい菌が感染して肛門の外側に膿がたまり、徐々に腫れて、最終的にはじけて膿が肛門の脇から出てくる肛門周囲膿瘍を発症します。膿が出てこないと激しい痛みを伴うため、切開排膿という手術が必要になります。
- Qイボ痔や痔の男女比などについても教えてください。
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A
▲ひどくなる前に男女ともに受診が必要
イボ痔によって痛みが出る人は少なく、出血と脱肛といって肛門粘膜が肛門外に出てくる違和感が主な症状です。肛門の粘膜がはみ出ている状態なので、粘膜が下着につく、便漏れを起こす、かゆみなどのトラブルを引き起こします。また、脱出がひどくなると嵌頓痔核(かんとんじかく)という元に戻らない状態になり、激しい痛みを伴います。この状態は、救急車で運ばれるような救急疾患に該当します。男女比は特にどちらが多いということはありませんが、女性の場合は出産をきっかけに発症したり悪化したりする人が非常に多くいらっしゃいます。潜在的には女性が多いのですが、受診のハードルが高いため、受診に結びつくのは男性が多い印象です。
- Q痔の治療はどのように進めていくのですか?
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A
▲女性の場合、女性スタッフも立ち会うなど配慮
痔の診察では、まず患部の視診をさせていただきます。お尻からの出血が主訴で受診したけれど、痔はなく、実は直腸がんだったということもあるので視診はとても重要です。痔核には肛門内部にできる内痔核とお尻の外側が膨らんでくる外痔核があり、内痔核は外からは見えないため、初診では肛門鏡による検査も行います。長さ10センチ程度の肛門鏡を挿入して内側を観察。基本的に痛みなどを感じることのない検査ですが、デリケートな部分の検査なので、当院の場合は女性スタッフと一緒に診察を行うなどの配慮をしています。
- Q痔核硬化療法について教えてください。
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A
▲日帰りで受けられる痔核硬化療法
痔核硬化療法は、イボ痔に対する注射による治療です。もともと中国に古くからあった治療法を西洋医学に転用したような治療法で、ALTA(アルタ)療法とも呼ばれており、痔に対して注射する位置が細かく決められ、これを行う医師には、専門的な技術が求められます。実際の治療では、診察時と同じスタイルで横向きに寝ていただき、肛門鏡を挿入しながら痔の4ヵ所に注射を打ちます。注射を打ったところに炎症を起こさせ痔核を固めて縮めるよう図ることで、脱出と出血症状を改善することが期待できます。日帰りで受けられることもメリットの一つです。
- Q処置後の注意点や副作用のリスクについて教えてください。
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A
▲合併症についても知っていてほしいと話す青木院長
頻度は高くありませんが、痔核硬化療法後に発熱や痛み、出血などの合併症を発症することがあります。施術から1週間後に経過観察のため来院していただき、患部の状態を診ます。完全に落ち着くまでにはもう少し時間がかかるため2週間後に再診。この時に良い状態であれば、治療は終了になります。術後は、便秘をすると治療した部分が痛むので注意しましょう。炎症が強くなると痛みが出るので、術後1週間はアルコールを控えてください。手術に比べて侵襲が少ない治療ですが、根治性や再発率に関しては手術には及ばない側面もあります。硬化療法で十分な効果が得られない場合は、次のステップとして手術を考慮することもあります。