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三尾 仁 先生の独自取材記事

三尾医院

(葛飾区/金町駅)

最終更新日:2019/08/28

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下町情緒あふれる金町の一角に、60年以上もの間親しまれ続けている小児科、「三尾医院」がある。日々たくさんの患者を相手に活躍されているのは、2代目院長の三尾仁先生。屈託のない口調で歯に衣着せず話す姿からは、子どもへの深い愛情をひしひしと感じる。小児科の診療だけに留まらず、葛飾区医師会の活動や行政への働きかけなど、小児医療の充実に向けて休みなく活動している。「地域全体が充実してこそ、良い医療もできる」という考えが、三尾院長の心の根底にあるからなのだろう。三尾先生に、現在の小児医療の課題や、それを取り巻く社会など大きな観点も含め、小児医療について詳しく聞いた。
(取材日2014年11月5日/更新日2019年6月7日)

働くママと、その子どもの大変さを実感する日々

こちらは60年以上の歴史があるそうですね。

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ええ。この医院は1950年に母が設立したものです。母は診療から事務方の作業まですべてを自分で行って、朝から晩まで隙間なく働いていました。とても大変で、苦労してきたと思いますね。医院と自宅の併設でしたから、母の働く姿を見ながら私は育ちました。私の場合、母が仕事を持っていても保育園に行くことはありませんでしたが、子ども心に寂しかったという思いは残っていますね。そんな自分自身の実感があるので、子どもを保育園に預け、フルタイムで働きながら診察に来られるお母さんを見ると、本当に大変だなと心から思います。私は大学病院で小児の腎臓疾患を中心にさまざまな治療や手術を経験した後、20年前に後を継ぎました。

仕事を持つお母さんは、お子さんが病気になると本当に大変ですね。

そう思います。昔なら子どもが熱を出せば母親はつきっきりで看病することができました。暮らしは裕福ではなくても、子どもと一緒にいる時間だけはしっかりと確保されていたと思います。だからこそ、子どもは母親の愛情をしっかりと受けて育つことができました。ところが今は幼児が感染症にかかった場合、お母さんはお子さんのことだけでなく、自分の仕事のスケジュールまで考えなければなりません。中には「この時期はどうしても、子どもに病気になってほしくない」という切実なケースもあります。とはいえ、本来幼児はさまざまな感染症にかかりながら抵抗力をつけていくものです。無論かかってはいけない病気、かかるのを避けるべき病気はありますが、感染症を乗り越えられる力のある健康な子どもにとって、集団生活が始まれば感染を繰り返すことは必然であり、すべての病気を避けて社会生活を送ることはできませんからね。

感染症にかからなければ良いというものではないのですね。

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はい。健康なお子さんであれば、例えば「手足口病」のように、かかってしまっても仕方がない病気があります。人間の免疫系は5歳くらいまでに急激に発達し、リンパ系は8歳から12歳の間に2倍ほどに発達します。ですから5歳以下の幼児はもともと感染しやすい体になっているのです。ただひたすら菌を遠ざけるのではなく、ある程度菌と共存するという気持ちも大切です。ここ数年「除菌」ということが盛んに言われていますが、あまりきれいにし過ぎることで、かえってアレルギーになることもあります。

ワクチン接種は、集団生活をする上で必要なマナー

親御さん方と接していてどんなことを感じられますか?

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テレビの報道番組などを見ていますと、たくさんの病気の脅威が報道されています。今年は例年より早くインフルエンザの話題が取り上げられていますが、もう少しすればノロウイルスが取り沙汰されるでしょう。最近ではデング熱がクローズアップされていますが、何度も繰り返し報道されることで、それを見たお母さん方に不安が刷り込まれてしまっています。情報はその出所や、具体的な対策が重要です。子どもの健康を考えるあまり、過度に神経質になってはいけません。

先生は、ワクチンの接種を推進していらっしゃるそうですね。

そうですね。ワクチンは本来その国家政策として、すべての子どもたちに安全にかつ無料で接種できることが望ましいと考えています。残念ながら日本は「ワクチンギャップ」と呼ばれるワクチン政策の遅れによって、世界水準より約10年遅れておりましたが、ここ数年でかなり追いついてきました。しかしながらまだいくつかのワクチンは定期接種化されておらず、任意接種での助成を受けられるよう、葛飾区との意見交換にも参加しています。お母さん方にワクチンが有益なものだということを伝えても、実際に接種していただくためには行政の医療サービスの中に組み込み、受けやすい環境にする必要があると考えています。

子どものワクチン接種を望まないお母さんもいると聞きました。

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幼稚園・保育園などで幼児が集団生活することを余儀なくされている世の中で、道義的にそれは通らないと私は思いますね。ご自分の子どもは病気にならないと思っていても、実際に予防できる感染症を発症すれば、ほかの子どもたちに迷惑をかけることになります。ぜひ指定されたワクチンの接種は行っていただきたいと思います。実際、ワクチンの接種によって病気自体の数は減ってきています。ごくわずかな副作用から、ワクチン接種の安全性問題がクローズアップされて、ワクチンを接種されない方がいらっしゃいますが、私はたいへん残念なことだと考えています。地域の多くの方がワクチンを接種することによって、持病のためワクチン接種できない方が、病気から守られる環境をつくることができます。これを集団免疫効果というのですが、自分の子どものためだけではなく、その子の周囲の子どもたちのために接種するという意識を持っていただければと思います。

これまでの診療で、何か心に残るエピソードはありますか?

医師にとって一番心に残っていることというのは、決して明るい話題じゃないんですよね。治療が成功して回復した子どもたちは、お礼の手紙をもらえばうれしいけれど、そんなこともなければ顔は思い出せなくなってしまうでしょう。忘れられないのは、亡くなってしまった子どもたちの顔です。大学病院時代には重症の子どもさんばかりを診ていたので、「もっとやってあげられることはなかったのだろうか」と無念な思いもしてきました。そうした修羅場をくぐってきたことで、今自信を持って診療ができるわけですが、小さな体で頑張っていた子どもたちのことはずっと忘れられません。

子育て中も老後も、安心して暮らせる地域に

休日はどのようにお過ごしですか?

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「運動や趣味の時間に費やしています」と言いたいところですが、残念ながらほとんど休みがない状態です。先ほど話したワクチンの件のみならず、虐待児童の問題や、軽度発達障害の子どもの就学に関する制度づくりに参加しています。今月も家にいられるのは1日だけ。診療日も夜は夜で会合が多いので、大急ぎで夕食を済ませてかけつける感じで、そのせいか早食いの癖がついてしまいました(笑)。自分自身の生活や健康管理も大事にしなければならないんですけどね。それが私の今後の課題かもしれません(笑)。

今後の展望をお聞かせください。

子どもが3歳ぐらいになるまでは「親とともに育つ時期、同時に親も親としてのアイデンティティーを築く時期」です。ママたちが忙し過ぎてその頃の子どもと十分スキンシップが取れていないことは、小児科の医師として見過ごせない問題だと考えています。それに加えて、これからは団塊世代が一斉に高齢者になり、認知症の問題もますます深刻化してきます。これはもう小児科の領域で理想論を言っている状況でもなくなってきているので、地域ぐるみで改善していかなければという気持ちが強いですね。葛飾区は私の生まれ育った街なので、できるだけのことは協力したいと思っています。

読者へのメッセージをお願いします。

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お母さん方は、毎日仕事に育児にと、とてもお忙しいことと思います。でも、どうか今の子どもさんとの時間を大事にして、親子関係をしっかりと築いていってください。子どもさんと密接に関われるのは今しかありませんから。そしてそのためには自分と相性の合う小児科を見つけて、その先生にいろいろと相談されると良いでしょう。話をきちんと聞いてくれる先生を見つけることが大切ですね。小児科は感染症が流行するシーズンですととても忙しく、一人ひとりに十分時間を割く余裕がなくなりがちですが、患者さんが少ない時期は狙い目です。日頃から子育てのこと、子どもの健康面で心配なことなどをゆっくりと相談なさってはいかがでしょうか。

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