野口 一久 院長の独自取材記事
かず歯科クリニック
(葛飾区/青砥駅)
最終更新日:2021/10/12
青砥駅から徒歩3分の場所に「かず歯科クリニック」はある。黄色やオレンジといった温かみのある色が配された待合は、季節ごとにかわいらしい装飾が施され、歯科医院に来た緊張感を和らげてくれる。院長の野口一久先生は、「歯だけではなく全身を診ること」ができる歯科医師を志し、口腔外科を専門として20年以上研鑽を重ねてきた。「一方的に押しつけるのではなく、その患者さんに寄り添った治療をするのが僕のモットー」と野口先生は語る。一人ひとりと真剣に向き合う診療スタイルで、セカンドオピニオンにも対応している。丁寧な語り口に穏やかな人柄がにじむ野口先生に開院の背景、子どもの診療における工夫、歯周病についてなど、たっぷりと話を聞いた。
(取材日2014年12月22日/更新日2019年8月8日)
めざすは全身診療ができる歯科。口腔外科に懸ける思い
まず、先生が歯科医師をめざされた経緯についてお聞かせください。
私はもともと物作りが好きだったので、工業化学系のエンジニアをめざした時期がありました。でも恩師の助言もあって、歯科への興味がだんだん湧いてきて、歯科を専攻することにしました。大学を卒業する頃には開業医になるという目標が定まっていたので、口腔外科講座に入局してしっかり臨床経験を積むことにしました。講座ではより専門性の高い内容を学び、「こういう歯科医師になりたい」という具体的な思いが膨らみましたね。
口腔外科をご専門にされたのはなぜですか?
患者さんの異変に対処するために、歯だけではなく全身を診ることができればと考えたのがきっかけです。歯科の患者さんは精神的に緊張されていることが多く、実際に治療が始まるとさらにストレスがかかります。そのため、全身疾患を持っている患者さんがショック症状などを起こしてしまうことがあるのです。そういったケースにも対処できるよう、口腔外科講座で全身について学ぶことにしました。
口腔外科は麻酔なども関わってくる分野ですよね。
そうですね。麻酔もストレスがかかることですから、痛みを軽減する方法や患者さんをリラックスさせるお声がけの方法などを学びました。全身疾患を持っている患者さんの場合は通常使用する麻酔では体のバランスを害してしまう場合があるため、体の状態に応じて薬液を変えることもあります。
先生が得意とされている治療は何ですか?
埋伏抜歯ですね。親知らずが埋まってしまっている場合に、歯茎を開いて骨を少し開けてから抜歯するという手術です。個人病院で行っているところは少ないようですが、当院では対応しています。あとは入れ歯ですね。以前勤めていた東邦病院では高齢の患者さんが多く、かなりの数の症例を診てきました。口腔外科の一環であるインプラント治療についても、患者さんの骨や全身の状態、性格や環境などもすべて考慮した上で治療を行い、安全性に配慮しています。骨に十分な厚みや高さがない状態で手術をするとトラブルが起こりやすいので、見極めが大切ですね。
乳児から高齢者まで、患者一人ひとりに寄り添う診療を
こちらのクリニックの患者層についてお聞かせください。
年齢層としては上から下まで満遍なく、という感じです。当院ではセカンドオピニオンにも対応しています。セカンドオピニオンで来院された患者さんを診察したところ、咽頭がかなり腫れて窒息してしまいそうな状態だったことがありました。大学病院を受診していただくとすぐに切開手術になったそうで、後日「あの時ここに来て良かった」とお礼を言いに来てくださいました。そうやって患者さんのお役に立つことができることが何よりうれしいですね。
乳児の歯科検診も行っているそうですが、子どもの診療で特に気をつけていることはありますか?
乳児の診療は非常に難しいですが、まず気をつけるのは「その子が僕と接しても大丈夫かどうか」です。大丈夫そうであれば声をかけて気をそらしながら少しずつ触っていき、口を開けてもらえるよう工夫しながら診療しています。もう少し大きくなると歯科医院に対する恐怖心が芽生えてきますから、「歯医者さんは怖いところではない」と思えるような言葉をかけたり、その子が興味を持っていることについて話しながらゆっくりと治療に進んでいくのが僕のスタンスです。「このおじさんは大丈夫だ」と思ってもらうのが大切ですね(笑)。徐々にステップアップしていき、最終的には治療ができるようになるお子さんが多いです。
時間をかけて信頼関係を築くということが、先生の診療理念なのですね。
そうですね。一方的に押しつけるのではなく、その患者さんに寄り添った治療をするのが僕のモットーです。「治すためにはこういう治療をしないといけない」と一方的に告げ、患者さんの承諾を得ずに治療を行う先生もいらっしゃるようですが、それではこちら本位の治療になってしまいます。患者さんの考えや思いをお聞きしながら進めていくのが大前提ですね。
定期検診で「現状維持」を
通常の虫歯のほか、どのような症例が多いですか?
歯周病ですね。歯周病は骨が溶けてしまって歯を支えられなくなり、歯茎が下がる病気です。食べカスをきちんと落としきれていないと、唾液の中の成分によって食物が固まり歯石ができます。この時、口の中の細菌も一緒に固まるため、歯の表面や歯茎に細菌がためこまれることで骨が溶けてしまうのです。きちんと歯石を除去しないとやがて歯肉炎を併発し、支えを失った歯が動き始め、噛んだ時に痛むようになります。痛みと腫れを繰り返すうちに骨が溶けていき、最後には歯が抜けてしまう、もしくは抜かないといけない状態になってしまうのです。
歯周病はどのような年代に多く見られますか?
働き盛りである40〜50代の男性は忙しさからなかなか歯科医院を受診できず、定年を迎えて受診した時には歯周病がかなり悪化しているケースが多いんです。しかし40代50代と言わず、成人を迎えたら歯周病をまず念頭に置いてほしいですね。というのも、20代後半の70〜80%は歯周病の初期段階にあると言われているからです。口腔内の間違った清掃などで歯石が長期間付着すると、加齢とともに歯が少なくなり、食事を楽しめなくなってしまいます。歯周病は消化不良にもつながりますし、高齢になって体調を崩した時に歯周病の菌が足の指先にまで及んで壊死を起こしたり、心臓の弁膜に及んで病気を引き起こしたりすることもわかってきました。当院では、基本的に半年に1度のペースで検診を呼びかけています。早めに歯科医院を受診されることはもちろん、歯周病と診断された方は「治った」と自己判断せず、定期的な検診をお勧めします。
お忙しい毎日を過ごされているかと思いますが、プライベートでのリフレッシュ方法はありますか?
お花を植えることや、ポットでできる小さな家庭菜園などが精神的な癒やしになっています。高校の頃に所属していた合唱部のOBで集まり、コンサートに出演したこともありました。もっとも、それこそ10年ぶりという単位の話ですが。コンスタントにやっているわけではないので、その都度毎回一から声をつくり直すというのが現状です(笑)。
読者へのメッセージ、クリニックの今後の展望についてお聞かせください。
当院のこだわりは、一つの専門に特化するのではなく、患者さんに広く最善の医療を提供できるようオールマイティーな歯科医院をめざしてきたことです。今後もより良い環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。例えば現在の虫歯治療の目標は虫歯を取ってその部分を詰める、もしくはかぶせることですが、そのための方法は現在何通りもあります。小さなクリニックではありますが、さまざまな治療が行えるよう積極的に知識や機械を導入して、訪れる患者さんにさらに良い治療ができるよう、まい進していきます。通いやすいクリニックであるよう、安心してリラックスできる空間づくりもめざしていきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/約35万円~