田島 有美 院長の独自取材記事
田島歯科クリニック
(世田谷区/松陰神社前駅)
最終更新日:2025/01/17

東急世田谷線の松陰神社前駅から歩いて5分ほど。風情あふれるこの街の一角にあるのが「田島歯科クリニック」だ。田島有美院長は2010年の開業以来、地域の誰もが気楽に立ち寄れる場所をめざし、一般歯科、矯正歯科、訪問歯科、小児歯科などさまざまな分野に取り組んできた。歯の予防・治療・管理をトータルで行う同院は、地元密着のクリニック。新たに歯科用CT、歯科用顕微鏡を導入し、日々技術のアップデートにも余念がない。さっぱりとした語り口の中にも温かな真心を感じる田島院長に、理想とする歯科医療や今後注力したい治療について聞いた。
(取材日2024年9月27日)
すべてを伝えることが患者の納得や安心につながる
田島歯科クリニックの診療方針を教えてください。

患者さんが最も納得できる治療法を決定するように心がけています。そのため、治療に関する情報はなるべくすべて患者さんに伝えるようにしています。歯科医師から患者さんに伝えられる情報が、あまりにも少ないのではないかと常々思っていたからです。歯が痛くなって、クリニックに来て治療されるだけでは、自分の口の中でどんなトラブルが起き、なぜその治療法が選択され、どうなるのか理解し難いでしょう。そこで当院では、治療について可能な限り複数の選択肢を示すようにしています。さらに、患者さんの理解を高めるために、口腔内カメラも導入しました。鏡では見えない部分を画像でお見せすることで、現状・治療中・治療後の様子をご自身で見ていただけます。とはいえ、患者さんの中には治療の選択肢をわれわれに委ねられる方や、詳しい説明を必要とされない方もいらっしゃいます。その場合は、患者さんのご希望に応じて適切な進め方で診療を行います。
口腔内カメラのほかにも、最近導入した機器があるそうですね。
はい。2023年に歯科用CTや歯科用顕微鏡、根っこの治療に用いるドリルなどを導入しています。これまでCT撮影が必要な患者さんには、近隣の歯科医院で撮影していただいていました。院内に歯科用CTを導入したことで、患者さんの負担が軽減し、治療のスピードアップにもつながると思います。また、歯科用顕微鏡や根管治療用のドリルを使用することで、治療精度も上がりました。歯科用顕微鏡は、手元を数十倍に拡大できます。肉眼では見えない部分まで細かく確認できるので、悪い部分を取り残すことや、健康な歯を必要以上に削ることの心配がありません。さらに根管治療用のドリルによって、薬剤を患部にしっかり密閉するように挿入でき、再発のリスクを低減できるようになりました。症例によってはドリルを適用できないこともありますが、歯科用CTや歯科用顕微鏡で治療精度が上がることは患者さんにとってメリットだと思います。
オンラインでの予約システムも導入されたとか。

そうなんです。主に検診でいらっしゃる患者さんのために導入しました。治療継続中の患者さんはクリニックで予約を済ませるので、あまりオンライン予約を使うことはありません。他方、数ヵ月ごとに検診でいらっしゃる患者さんは、都度電話予約が必要です。ある時患者さんから、仕事が終わってから予約をしようと思うとクリニックの診療時間外になっていて、なかなか予約できなかったというお話を聞きました。開業時から患者さんの定期検診率100%をめざして、検診のお知らせはがきを送付するなどの工夫をしているのに、予約しにくいことが壁になっていてはいけません。そこで、24時間いつでも予約できるシステムを入れることにしました。オンラインからの予約も増えているので、患者さんにも喜んでいただけていると思います。
新人時代の恩師や友人は生涯の財産
歯科医師をめざしたきっかけは何ですか?

私が今、こうして歯科医師として働いていることを不思議に思っている友人もいるでしょうね。小さい頃の私は、絵を描くのに夢中な芸術好きの子どもだったんです。美術展などで入選したことも何度かありました。周りの人たちは芸術関係に進むものと思っていたかもしれません。でも実際は進路を決める時期になった時、自分は何を学びたいのか、そもそも大学に行くべきなのかと悩んでしまいました。そんな時、母が突然「歯学部に行ったら?」とアドバイスしてくれたんです。親族に医師や歯科医師がいるわけでもなく不思議なのですが、実はこの時、この母の言葉がすんなりと自分の中に入ってきて。それで日本大学松戸歯学部に入りました。こうやって開業し仕事をさせてもらっていると、歯科医師が自分にすごく合っていると実感する瞬間があるんです。改めて小さい頃から母が私のことをよく見ていて、正しい方向に導いてくれたんだなと感じ、感謝しています。
新人歯科医師時代に得た一番のものは?
技術的にも精神的にも多くのアドバイスをくださった私の師でもある前職の院長や、ともに働いていた同僚たちは一番の財産です。診療に関して悩んだ時は、いまだに師匠や同僚に相談しています。これは開業した今だからこそ強く感じることですが、患者さんが口腔内に抱える問題は千差万別で、自分が今やっている治療が本当にベストな選択なのかと思い悩むことが度々あります。アプローチは他にもあるはずなのに、個人でやっていると考え方が固定化されてしまうと思うんです。そんな時、師や友人にアドバイスをもらうと視野が広がり、フレキシブルに頭を働かせられるようになります。そういうつながりを持ち続けていることは、私にとってありがたいことです。大学時代の同級生も、私が出産した時に代診に来てくれたりして、年を重ねた今だからこそ付き合いが深まりました。歯科医師としても互いに成熟した年齢になったので、交流することで学ぶことは多いです。
常勤の溝上晴美先生とはどういった連携をされていますか?

溝上先生とは、訪問診療と外来を分担しています。そのため、同時間帯に外来診療する機会はあまりありません。しかし、患者さんについて申し合わせを行ったり、カルテに詳細に記載したりして、常に連携できる体制をつくっています。当院は基本的に担当制で診療を行いますが、治療を急ぐ必要がある方や、お忙しくて治療スケジュールの調整が難しい方などは私と溝上先生のどちらでも診られる状態です。
予防歯科を第一に、矯正にも注力したい
これから力を入れていきたい分野は何ですか?

一番注力したいのは予防歯科です。歯は一度でも治療すると口の中全体のバランスの崩れにつながってしまいますし、虫歯になった歯は再生しません。だから予防に勝る治療はないんです。また、近年ご相談が増えている矯正にも力を入れたいと思っています。当院で多い相談は小児の矯正です。床矯正といって、永久歯が生えてくるタイミングで顎の拡大を図り、歯並びが整うようにサポートする方法や、反対咬合の治療も多く行っています。マスク生活になったためか、コロナ禍以降は大人の矯正相談も増えました。昔から歯並びにコンプレックスを持っていたという40~60代の患者さんがいらっしゃいます。矯正をしている患者さんの様子は、私も常に把握できる体制にしていますので、安心して受けていただけるでしょう。
矯正担当の先生はどういった方ですか?
矯正をお任せしている田村幸子先生は、大学病院でさまざまな治療をご経験された矯正歯科の専門家です。当院では2011年から勤務していただいております。矯正は数年スパンの長期になり、しかも途中でやめてしまえば意味がなくなってしまうため、先生は患者さんに聞こえのいいことだけでなく懸念点や問題点も伝える真摯な診療をされています。そして、診療で伝えたことを実践できているときはしっかり褒める、とても患者さん想いの先生です。余談ですが、柴犬をこよなく愛しているという一面もお持ちです(笑)。
今後の展望をお聞かせください。

患者さんの歯科に対する知識や意識を高めて、予防歯科を広めていきたいと思っています。すでに当院の患者さんは意識が高い方が多いです。そうした中、今懸念しているのは、インプラント治療をした方がご高齢になった際の対応です。高齢になって施設に入所する際に、どの歯がインプラントか施設側に情報が届かないと、メンテナンスができなくなってしまいます。インプラント治療をした方には、ご家族にも情報共有をお願いしていますが、何かいい方法がないか模索中です。歯科のかかりつけ医として、できることを考えて続けていきたいと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは小児矯正/第一期治療:マウスピース型装置を用いた矯正11万円〜、拡大床38万5000円、第二期治療:38万5000円〜、成人矯正/77万円〜、インプラント治療/手術費27万5000円〜、上部構造17万6500円〜
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。