森田 桂子 院長の独自取材記事
梅屋敷森田クリニック
(大田区/梅屋敷駅)
最終更新日:2026/09/02
患者の日常生活の継続を目標に、多彩なアプローチで心の健康を守ることに努める「梅屋敷森田クリニック」。森田桂子院長は、自身の豊富な経験や周りの人との縁などを大切に、必要に応じて地域の医療機関とも連携しながら、さまざまな疾患・ニーズに日々応えている。中でも森田院長が注力するのは、予防や軽症段階での治療。患者との対話を丁寧に重ねながらこまやかに支援していく方針だ。取材では、非常勤医師含む5人での診療体制や注力している睡眠時無呼吸症候群の治療、女性のメンタルを支えたい思いなどについてたっぷりと聞いた。
(取材日2023年6月9日)
地域との連携力を生かし、新体制で幅広い疾患に対応
クリニックや患者さんの特徴を教えてください。

当院は、私のかつての勤務先である東邦大学医療センター大森病院をはじめ、総合病院が多い地域にあります。そのため複数の医療機関にMRI検査や入院を依頼できる体制があり、大学の医局の先生方とも引き続き仲良くさせていただいています。また、この近辺にはお子さんが多く、当院にはママさんもよく受診されます。平日は圧倒的に女性が多く、土曜は男女半々と、患者さんは働き盛りや子育て中の方が中心ですね。病気としてはうつ病から神経症、ASDやADHDといった発達障害、統合失調症まで幅広く対応しています。さらに空港が近くにあるため、航空関係者や医療職など夜勤がある職業の方の睡眠障害も多く、睡眠時無呼吸症候群の診療にも力を入れています。
睡眠時無呼吸症候群の治療についてお聞かせください。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる病気です。主な原因は、肥満や扁桃肥大などによる気道の狭窄や、脳からの呼吸指令の異常です。十分な睡眠が取れなくなることで、心疾患や脳卒中、糖尿病などとの関連が指摘されているほか、日中の眠気や集中力・判断力の低下を招くことがあります。 治療法にはマウスピース療法や手術などがありますが、その中でも現在広く行われているのが「CPAP(シーパップ)療法」です。これは、専用マスクを通じて気道に空気を送り込み、睡眠中の気道閉塞を防ぐ治療法です。 当院では、呼吸器内科と連携しながら睡眠時無呼吸症候群の検査・治療を行っています。また、症状が安定した後は、当院でCPAP療法を継続して受けていただくことが可能です。必要に応じて、耳鼻咽喉科や歯科などの医療機関とも連携しながら対応しています。
非常勤の先生方も加わった新体制で運営されているそうですね。

より多くのニーズに対応するため、現在は私を含め5人の医師で診療しています。月曜以外の午前担当の秋根良英先生はベテランで睡眠時無呼吸症候群の治療や栄養・食事に関する指導、ADHDの診療などもお願いしています。月曜担当の高亀永美子先生は大学病院医局の後輩です。妊婦さんのうつの診療等も可能で、女性医師の診療を希望される患者さんにも安心して受診いただける先生です。そして月2回、土曜に来てくださる夏目享先生は、アルコール依存症の治療経験に加え、神経内科での臨床経験もあり、専門的な治療にも対応ができます。木曜午後担当は現役の東邦大学病院の先生が外来を担当しています。それぞれ専門分野が異なるので、より幅広く対応できるのも新体制の強みです。
女性特有のメンタル不調へのサポートにも力を注ぐ
先生の得意分野について教えてください。

私はもともと統合失調症の予防の研究に携わっていました。治療を求めているにもかかわらず、「軽症なので受診が不必要と言われた」など、さまざまな理由で通院につながらない方をたびたび見かけ、何とかしたいと思いました。少し背中を押して治療につながれば、社会で勉強や仕事を頑張れるようになるかもしれない。そんな方を応援するのが好きなんですよね。また、過去には保健所や児童相談所での仕事のほか、大学医学部で学生相談にも携わっていました。スーパー救急病棟に勤務していた時期もあり、キャリアの振り幅は広いと自負しています。一方で私が大切にしているのは、患者さんとの対話を重ねながら支援していく姿勢であり、当院でも予防や再発予防に注力しています。日常生活を中断せずに仕事や学業、育児を続けられるよう、最初に不調を感じた時点で介入したいと考えています。
今後、特に力を入れていきたい診療分野はありますか?
女性は思春期や妊娠・出産、更年期など、ライフステージの変化に伴って心身のバランスを崩しやすいものです。私は、そうした女性特有のメンタル不調へのサポートに力を入れていきたいと考えています。また、ご本人だけでなく、うつ病などの不調を抱えるご家族を支える方や、お子さんの不登校・子育ての悩みを抱える保護者のストレスケアにも取り組みたいと思っています。当院をメンタルヘルスについて気軽に相談できる場として活用していただけたらうれしいですね。
スタッフさんはどんな方が多いのでしょうか?

公認心理師は全員女性で、人生に関してもベテランです。受付スタッフや看護師も女性で、皆には患者さんの話をよく聞くことと、聞いた話を正確に伝えることを心がけてもらっています。診療中、私は目の前の患者さんに集中しているため、患者さんから電話でお問い合わせがあった場合はスタッフが聞き取りを行い、私の指示を仰ぎに来ます。そこで内容が変わってしまっては困りますので、相手が何を求めているのかをしっかり把握してほしいと伝えています。ただ、初めこそ自分から呼びかけていましたが、今では長年勤務しているスタッフが新人教育の際に代わりに指導しています。きちょうめんな性格の受付スタッフも業務上の抜けや漏れをカバーしてくれて、本当にありがたい限りです。
その人にとって無理のない方法で話をしてほしい
これまでのお話を聞いていると、先生の努力や人脈が節々に感じられます。

ありがとうございます。勤務医の頃は派遣先で看護師さんに「開業したら呼んでください」とよく言っていただきました。なのでいざ開業した時は、声をかけてくれた中でタイミングが合った方に勤務してもらいました。さらに恵まれていたのは、講演会を機に出会ったある税理士さんが「医療機関を開業する人のコンサルティングのファーストケースになってほしいから」と無償で支援してくださったこと。初期のスタッフも、子育てや介護などの事情でお休みは柔軟に取得したいけれど、お給料は二の次という方が多かったですね。借金を背負っている駆け出しの身だった当時の私には、皆の存在が本当に心強かったのを覚えています。
開業医となり、心境の変化はありましたか?
結論から言うと、開業して良かったと感じています。大学病院に紹介されてくる患者さんは、すでに服薬などの治療が進んでいるケースが少なくありません。一方で私は、症状が深刻化する前の段階から関わり、予防や再発予防にも力を入れていきたいと考えていました。そのため、地域の中でクリニックを開業し、患者さんが気軽に相談できる環境をつくることが重要だと感じたのです。もちろん、より専門的な検査や治療が必要な場合は大学病院などの医療機関をご紹介し、状態が落ち着いたら再び当院でフォローを続けることもできます。普段は当院に通っていただきながら、じっくりお話を伺うことを大切にしています。一見すると何げない雑談のような会話でも、その中に患者さんが抱える不安やストレス、困り事が隠れていることがあります。そうしたサインを丁寧に受け止めながら、早期支援や再発予防につなげていきたいですね。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

機器や治療法を含め、時代に追いついた医療の提供は重要だと考えています。また、一つの分野の専門性を掘り下げることも大事ですが、患者さんのニーズに寄り添うことも大切ですね。クリニックであるからには、今後もなるべく幅広く、可能であればワンストップで対応していきたいですね。また、医療機関を選ぶのは患者さんご自身の権利ですので、もし当院が合わないと感じられた場合は、気兼ねなく受診先を変更していただいて構いません。具合が悪くて通院しているのに、通院すること自体が負担やストレスになってしまっては意味がありません。患者さんにとって無理なく通い続けられることが大切だと考えています。

