桜田 俊彦 院長の独自取材記事
桜田歯科
(北区/駒込駅)
最終更新日:2026/08/10
北区・田端は、古くからの町並みの風情と、再開発された道路やマンションが混在する、さまざまな世代が行き交う町だ。「桜田歯科」は駒込駅・田端駅から徒歩約10分の住宅街にある。院内には桜田俊彦院長が好きだという海をモチーフにした絵画や、同じく歯科医師だった院長の祖父がアメリカに留学していた当時の写真が飾られ、親しみやすくノスタルジックな雰囲気だ。長く大学病院で補綴治療の研鑽を重ねてきた経験豊富な桜田院長は、恐怖心を抱かれやすい歯科だからこそ、診療着ではなく洋服で診療を行うなど、患者の緊張をほぐすための配慮を欠かさない。今回は、同院の特徴や診療を行う上で大切にしていることなどを聞いた。
(再取材2026年6月18日)
祖父から3代、形を変えながら地域医療を支える
こちらのクリニックの歩みについてお聞かせください。

当院はもともと祖父が歯科医師としてこの場所に開業したのが始まりです。その後、私が生まれた頃に現在の建物に建て替えて父は内科医として開業したそうです。私が子どもの頃は父と祖父が同じフロアで診療を行っていて、よく祖父の診療ユニットで遊ばせてもらったのを覚えています。父のほうに行くと怒られるのですが、祖父からは怒られなかったんです。かわいい孫ですからね。その頃の経験が、後に私が歯科医師の道へと進むきっかけの一つになったのかもしれませんね(笑)。2018年に父が医業から退き、現在は当院だけ稼働しています。
どのような患者さんがいらしていますか?
ほとんどが地元の方ですが、遠方より治療の相談で来院される方もいらっしゃいます。年齢層は幅広いですね。インターネットで当院のことや、私の補綴治療における経験を知って来てくださっているようです。お付き合いの長い患者さんから特別なご相談をいただくことはあまりなく、虫歯や歯周病、入れ歯の治療をしたり、メンテナンスを行っています。一方、もともと他院に通われていた方は、ご自身が受けた治療内容に疑問を持たれていたり、お口の中が今の状態で問題ないか不安を抱えられている方や、かかりつけの先生との信頼関係が築けず悩まれていて相談しに来られるケースも少なくありません。
メンテナンスに来られる方も多いとか。

そうですね。メンテナンスに来られる頻度は、一般的に毎月または3ヵ月に一度のサイクルが多いと思うのですが、当院は半年に一度が通常です。たとえこれまで毎月クリーニングを受けていても、虫歯が見つかることはあります。その裏には、歯科衛生士さんにクリーニングをしてもらうだけで、細かいところのチェックがあいまいだったり、「先月も診ているから大丈夫だろう」という気持ちをもっていたりということが、多少影響していると思うんです。クリーニングを受けても“なあなあ”に済ませてしまい、お口の中が危うい状態になっている方をたくさん見てきました。だからこそ当院のメンテナンスは、心配な方のみ3ヵ月、通常は半年のサイクルでいらしてもらい、基本的に私がお口の中の確認はもちろん、クリーニングも行っています。
患者の要望と痛みの原因を見極め、治療法を提案
診療で心がけているのはどんな点でしょうか?

初めに患者さんがどんな人なのか理解するために、じっくりお話しするようにしています。具体的には治療のメリットとデメリットをきちんと説明して、その上で目の前の患者さんがどこまでの診療を求めているのかを判断する。そこの「間合い」が大切なんです。治療に対してどこまで積極的に取り組んでいただけるのかの見極めですね。こちらがいくら意気込んでも、患者さんのほうはそこまで求めていなかったりすることもあります。例えば、高齢の患者さんに長期の通院や治療を強いることが果たして本当にその方のためになるのか。医学的に考えれば時間をかけてでもお口をきれいにするほうがいいのですが、そのことが患者さんの負担や無理を強いる結果につながってしまっては本末転倒ですからね。
虫歯や歯周病が痛みの原因ではないケースもあるそうですね。
虫歯や歯周病がなくても、歯の痛みを訴える方が増えています。そのような方は、ストレスや生活の変化による噛みしめや歯列接触癖(TCH)が原因で痛みが出ていることが多く、これは新型コロナウイルス流行後にとても増えた印象です。TCHとは、食事以外の時に上下の歯が当たっているのが癖のこと。わずかに噛んでいるだけでも歯に力がかかり、その力が蓄積されると違和感を覚えたり痛みを感じたりするようになるんです。患者さんにも噛みしめが原因であることをお伝えするのですが「そんなはずはない」と思われる方も多いと思います。まずは日常生活での癖に気づいてもらい、それが異常をきたす行為であると理解してもらうことが大切です。原因がわかれば、以降は癖を意識しながら過ごすことができ、改善につながります。すぐには納得できず疑問が残る方もいらっしゃるので、お互い根気強く話をしながら、快方に向かうよう並走できればと思っています。
ご専門の補綴についても教えてください。

補綴はクラウンブリッジ、部分入れ歯、総入れ歯の3つの分野に分かれていて、私はクラウンブリッジ補綴学教室出身です。補綴科では「補綴は一つ」という教えがあり、どれかが欠けても補綴とはいえません。すべてを学ぶことが修行なんです。また、学生教育や研究に携わることで能力と知識の幅を増やしました。当院では大学で行われている診療を手本に、基本に忠実な診療を心がけており、総入れ歯は保険適用でも大学と同じ方法で作製しています。入れ歯を作るためには、診査や診断、型採り、高さの測定、歯並びを調整する作業、入れ歯の装着と調整など、多くの工程が必要です。その一つ一つの工程を省略することなく、丁寧に進めることを大切にしています。また部分入れ歯の設計においては、クラスプという金属のバネを適切に配置することが重要ですが、その際に長年の経験が生きているのではないでしょうか。
患者の緊張を和ませ、フラットな関係を築くために
先生はどんな幼少時代を過ごされ、歯科医師の道に進まれたのですか?

いろいろなものを分解するのが好きな子どもでした(笑)。テレビやラジオ、扇風機など、ネジがついているものはなんでも分解していましたね。最初に分解したのは幼稚園の頃ですから筋金入りです。今思うと、その頃から器具を使って何かをいじるのが好きだったんでしょうね。ものを分解するだけでなく、何かを作ることも好きでした。中でも船が好きで、当時プラモデルで出ていた船は片っ端から作ったり、しまいには自分で設計図をひいてプラスチックの板を買ってきてゼロから軍艦を作っていたんですよ。そんな子ども時代は自衛官になりたいと思っていて、周りにもそう公言していました。高校の頃に所属していた吹奏楽部の顧問がオペラをやっている先生で、その歌声を聞いた時にしびれてしまい、声楽の道にも憧れましたね。周囲の勧めもあり歯科医師になりましたが、昔の友達に歯科医師をやっていると言うと驚かれますよ。
患者さんとの接し方で配慮なさっていることはありますか?
私は診療の際に診療着を着用せず、市販ブランドのベーシックな洋服を着ています。開業した当初は、歯科の先生がよく使うケーシーを着ていたのですが、ケーシーと洋服を着た時では、特に子どもの反応が驚くほど違ったんです。歯科クリニックは「痛い」だとか「怖い」というイメージを持ちやすい場所だからこそ、診療着を脱ぐことで、患者さんの緊張を和らげてリラックスして診療を受けてもらえたり、フラットな関係で接することができるのではないかと思い、いまの格好で診療するようになりました。「この人、本当に歯医者かな?」と思うかもしれませんが(笑)、気楽な気持ちでご相談いただけるとうれしいです。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

今やっていることをコツコツと続けていこうと思っています。具体的には「基本に忠実に行う」「人との間合い」を大切にしています。患者さんには、相性の合う歯科医師を見つけてほしいということをお伝えしたいですね。技術の高さや設備の充実以前に、相性が合わなければうまく治療を進めることはできないと思います。話してみてこれは違うかな、治療の進め方がなんだかすっきりしないな、といった場合には他のクリニックも選択肢に入れてみてください。患者さんに合った歯科医師をお選びいただくことも重要ですからね。

