松原 宙 院長の独自取材記事
上板橋診療所
(板橋区/上板橋駅)
最終更新日:2026/02/05
東武東上線の上板橋駅南口から徒歩4分。昔ながらの商店街を抜けた先にあるのが「上板橋診療所」だ。ここは、60年以上にわたり地域住民の健康を支え続ける診療所。落ち着いた雰囲気の院内から、同院の歩んできた歴史が感じられる。2025年から院長を務める松原宙(まつばら・ひろし)先生は、大学病院や基幹病院で呼吸器内科に特化した診療からスタートし、その後、地域密着の病院で訪問診療などに従事。内科の幅広い臨床経験を重ねてきた。科目ごとの専門に特化した診療から、患者の全身をトータルに捉えた診療まで研鑽を積んできた松原院長が、最終的に地域密着型のクリニックに行き着いたのはなぜか。その理由とともに患者との向き合い方について詳しく聞いた。
(取材日2025年7月28日/情報更新日2026年2月2日)
一人ひとり時間をかけ、真摯に診る。質の高い診療を
まずは、先生のご経歴を教えてください。

大学を卒業した後、全身状態を把握できる内科の医師になりたいと考え、千葉大学医学部呼吸器内科の医局に入局しました。そして、大学病院や関連の基幹病院で呼吸器内科、内科の研鑽を積みながら、医師としての礎を築いていったのです。その後は、中規模病院での勤務や訪問診療なども経験し、多様な疾患の患者さんを診させていただく中で、一人の患者さんをトータルにサポートできることの喜びを感じることができました。特に訪問診療では、患者さんの訴えによく耳を傾け、その場で可能な限りの診断、判断をすることの大切さを学んだように思います。また、専門領域だけでなく、非常に幅広い診療を経験できました。例えば、胃ろうの交換も行っていましたし、皮膚の感染性粉瘤なども自分で切って排膿していたぐらいです。当院で診療をする頃には、ほとんど自分一人で対応できるようになっていました。
活躍の場を診療所に移されたのは、なぜですか?
これまでは、外来診療をやりながら、病棟で具合が悪い患者さんがいれば、そちらに行って処置をして、訪問患者さんから「具合が悪い」と電話があればそちらにも行ってと、3つのことを一人三役のような形で担わせてもらっていました。その結果、「一人ひとりの患者さんに割く時間が少なくなってきてしまっている」と、どこかもどかしさを感じるようになったのです。そこで、「時間をかけて一人ひとりの患者さんにしっかり向き合うという自分の理想の診療スタイルを実現するには、地域密着の診療所で診療するのが良いのでは」と考えるようになったのが大きな理由でした。
こちらでは、どのような診療をされていますか?

当院では内科と呼吸器内科、アレルギー科を掲げ、幅広い疾患に対応しています。たとえ規模が変わっても、これまでのすべての経験を生かし、ご来院くださる方々の困り事を一つ一つ解決して差し上げたいという一心で診療をしてきました。その思いが通じたのか、「困ったことは何でも相談してみよう」と通ってくださる方が次第に増え、うれしい限りです。私は特に問診を重視しており、常に患者さんのお話を丁寧にヒアリングしているのですが、その診療スタイルをご理解いただき、たくさんお話をしてくださる方が増えように思います。また、患者さんの年齢層が幅広いので、それぞれ微妙に異なるニーズに合わせて診療することも大切にしてきました。例えば、ご高齢の方であれば、今後の要介護になる可能性を踏まえ、今からできる食習慣・生活習慣の改善やフレイル予防のアドバイスをするなど、先の人生を見据えた診療を実践しています。
問診が9割。患者の声に耳を傾け、不調の原因を追及
患者さんと向き合う上で、先生が心がけているのはどのようなことですか?

まずは患者さんをよく見るということです。私は、待合室にいらっしゃる患者さんを自ら呼びに行くようにしているのですが、その瞬間の表情や姿勢、歩き方、歩いたときの息切れの様子など、最初からすべてよく観察するようにしています。つまり、私の診察は待合室から始まっているのです。また、パターン化された診断や治療を行うのではなく、「本当にそれでいいのか?」と診療内容に常に疑いを持って、そのときの最善の対応を追求するようにしています。困り事を抱えておられる患者さんに対して、ベルトコンベヤー式な診療は絶対にしたくありませんからね。お一人お一人の診療にしっかりと時間をかける。それが私の信条なんです。
特に問診を重視しているそうですね。
ええ。私は診療において、問診が9割と考えています。例えば、私の専門分野の呼吸器内科では問診内容が非常に多岐にわたります。「咳が出る」という症状一つをとっても、「いつ咳が出るのか」「発作的に起こるのか、断続的に起こるのか」「タバコを吸っているか」「ペットを飼っているか」「仕事で粉塵を吸入する機会があるか」「家のそばに工場があるか」など、さまざまなことを聞かなければなりません。そのように丁寧な問診をすることによって、8割か9割は診断の予測がつくと考えています。ここでは呼吸器を例に出しましたが、循環器であっても消化器であっても一緒だと思います。ですから、問診を通してまずは患者さんの訴えをしっかり聞き、きちんと整理と理解をして、患者さんが今何を求めているのかを考えることが大事だと思っています。
現在の患者さんの年齢層、対応されている疾患の傾向も教えてください。

下は中学生ぐらいから、ご高齢の方まで幅広い年齢の方が来院されます。以前からこの診療所に通っていた患者さんが引き続き来てくださっているのはもちろんのこと、私が院長になってからの新規の患者さんも増えています。糖尿病、高尿酸血症、高血圧、脂質異常症、高脂血症などの生活習慣病のほか、風邪、夜間頻尿、過活動膀胱や前立腺肥大などの泌尿器疾患、皮膚疾患などに関連した症状を主訴に来院される方もいます。
内科全般を診るとともに、専門の呼吸器にも注力
今後、力を入れていきたい分野などはありますか。

診療所ですので、患者さんの全身をトータルに診ることができるのは当たり前だと思っていますが、当院はその「トータルに診る」の内容が通常の内科クリニックよりも広いかもしれません。例えば、一般内科では頭痛、睡眠・覚醒障害のほか、慢性腎臓病、胃食道逆流症、消化器の機能性ディスペプシアなどにも対応しており、その旨ホームページにも記載しています。このトータルな診療は今後も注力したいですね。加えて、専門領域の呼吸器内科にも力を入れたいと思っています。現在もすでにホームページを見て、「咳が出る」という症状を中心に、呼吸器の不調やアレルギーに悩まれる方が多くいらっしゃっている印象です。なお、呼吸器内科では、近年増加している睡眠時無呼吸症候群の診断と治療にも応じています。
患者さんや地域の方へ、お伝えされたいことはありますか?
私が呼吸器を専門としていることもあり、咳症状で来院される方はとても多いです。ですが、中には仕事に追われてなかなか受診する時間をつくれないという方や、「咳くらいならそのうち治るのでは」「咳だけで受診してもいいのかな」と、受診をためらわれる方もいます。その後、いざ受診をすると、実は心不全など命に関わる病気だったということも。実際に「もっと早く診察することができたら、つらい思いをさせずに済んだかもしれない」と思うことも少なくありません。一番大切なのは患者さんご自身の体ですので、「困ったらすぐに受診」という意識を持っていただきたいですね。当院では、症状の背景に潜む重篤な病気を見逃さないよう、きめ細かな診断に努めていますので、困り事があればお気軽にご相談ください。もちろん咳症状だけでなく、頭痛や不眠、便秘など幅広いお悩みに対応できるよう日々研鑽を積んでいますので、迷わずご来院いただけたらと思います。
最後に、今後の展望を教えてください。

院長に就任する前は、外来でも訪問でも診療し、具合が悪ければ入院もできるという、包括的にサポートができる病院にいたので、その経験が今の私の礎になっているように思います。たとえ対応できる診療の幅が変わったとしても、来院される患者さんとじっくり向き合って、私ができる範囲のことを精いっぱいしていきたいという気持ちは根本にずっとあります。奇をてらったことはせずに、そういった診療を地道にやっていくこと。それこそが私のめざす診療スタイルです。この地域の皆さんから信頼され、医療のトータルサポートができる診療所となれるよう努めてまいりますので、どんなことでも気軽にご相談ください。

