松原 宙 院長の独自取材記事
上板橋診療所
(板橋区/上板橋駅)
最終更新日:2025/09/03

東武東上線の上板橋駅南口から徒歩4分。昔ながらの商店街を抜けた先にある「上板橋診療所」。60年以上にわたりこの地域を支えており、院内は歴史も感じる温かく落ち着いた雰囲気だ。2025年7月に新院長として松原宙(まつばら・ひろし)先生が就任し、リニューアルオープンを果たした。松原院長は大学病院や基幹病院で呼吸器内科に特化した診療からスタートし、その後、地域密着の病院で訪問診療などにも携わり、内科の幅広い臨床経験を重ねてきた。科目ごと専門に特化した診療から、トータル的に患者を診る診療まで、さまざまな体制で研鑽を積まれた松原院長が、最終的に地域密着型のクリニックに行き着いたのはなぜなのか。その思いや患者との向き合い方、診療スタイルについて、詳しく聞いた。
(取材日2025年7月28日)
一人ずつしっかり時間を割く質の高い診療実現のために
院長に就任されたばかりだと伺いました。これまでの経歴を教えていいただけますか。

大学卒業後は全身状態を把握できる内科の医師になりたいと、千葉大学医学部呼吸器内科の医局に入局しました。そして、大学病院や関連の基幹病院で呼吸器内科、内科の研鑽を積みながら、医師としての礎を築いてきました。その後は、一般病院の勤務や訪問診療なども経験し、そこでは多様な疾患の患者さんを診させていただき、一人の患者さんをトータル的にサポートできることの喜びを感じることができました。特に訪問診療では、ご家庭において患者さんの訴えによく耳を傾け、その場で可能な限りの診察で診断、判断することの大切さを学びました。そして、今年の7月1日より、縁あって、こちらの「上板橋診療所」を継承させていただくことになったという経緯です。
専門領域だけでなく、非常に幅広い診療を経験されてきたのですね。
はい、そうですね。胃ろうの交換も行っていましたし、皮膚の感染性粉瘤なども自分で切って排膿していたぐらいで、ここに来る前までには、ほとんど自分一人で対応できるようになっていました。ここでは、内科、呼吸器内科、アレルギー科を掲げ、幅広い疾患に対応していきますので、規模は変わっても、これまでのすべての経験を生かしたきめ細かな診療をご提供したいと考えています。
活躍の場を診療所に移そうと思われた理由はどのようなことだったのでしょうか。

これまでは、外来診療をやりながら、病棟で具合が悪い患者さんがいれば上に行って処置をして、訪問患者さんから「具合が悪い」と電話があればそちらにも行ってと、3つのことを一人三役のような形で担わせてもらっていました。その結果、「一人ひとりの患者さんに割く時間が少なくなってきてしまっている」と、どこかもどかしさを感じるようにもなっていました。そこで、「時間をかけて一人ひとりの患者さんにしっかり向き合うという自分の理想の診療スタイルを実現するには、地域密着の診療所で診療するのが良いのではないか」と考えるようになったのが大きな理由です。
患者の状態をよく見て、問診を重視する
患者さんと向き合う上で、先生が心がけているのはどのようなことですか。

まずは患者さんをよく見るということです。私は待合室にいる患者さんを自ら呼びに行くようにしていて、その瞬間の表情や姿勢、歩き方、歩いた時の息切れの様子など、最初からすべてよく観察するようにしています。もうそこから診察が始まっているんです。また、その方の症状や疾患に対して、パターン化された診断と治療を行うのではなく、常に「本当にそうなのか?」という気持ちを持って、その時の最善の対応を行うことも意識しています。ベルトコンベヤー式な診療はやりたくないと思っていて、そこにしっかりと時間をかけるということが私のスタイルといえるでしょうか。だからこそ、一番大事にしているのはやはり問診ですね。私は診察において問診が9割だと考えています。
問診を行うときの大事なポイントは何ですか。
例えば、私の専門分野の呼吸器内科では問診内容が非常に多岐にわたります。「咳が出る」という症状一つをとっても、「いつ咳が出るのか」「発作的に起こるのか、断続的に起こるのか」「タバコを吸っているか」「ペットを飼っているか」「仕事で粉塵を吸入する機会があるか」「家のそばに工場があるか」など、さまざまなことを聞かなければなりません。そのように丁寧な問診をすることによって、8割か9割は診断の予測がつくと考えています。呼吸器を例に出しましたが、循環器であろうと消化器であろうと一緒だと思います。ですから、問診を通してまずは患者さんの訴えをしっかり聞き、きちんと整理と理解をして、患者さんが今何を求めているかを考えることが大事だと思っています。
現在の患者さんの年齢層、診療内容の傾向について教えてください。

下は中学生ぐらいから、ご高齢の方まで幅広い年齢の方が来院されます。以前からこの診療所に通っていた患者さんが引き続き来てくださっているのはもちろんのこと、私が院長になってからの新規の患者さんも増えています。糖尿病、高尿酸血症、高血圧、脂質異常症、高脂血症などの生活習慣病のほか、風邪、夜間頻尿、過活動膀胱や前立腺肥大などの泌尿器疾患、皮膚疾患などに関連した症状を主訴に来院される方もいます。
内科全般を診るとともに、専門の呼吸器にも注力
今後、力を入れていきたい分野などはありますか。

診療所なのでトータル的に診ることができるのは当たり前だと思っていますが、当院はその「トータル的に診る」の内容が通常の内科クリニックよりも広いかもしれません。ホームページには一般内科で診ることができる内容の代表的な例として、頭痛、睡眠・覚醒障害、慢性腎臓病、胃食道逆流症、消化器の機能性ディスペプシアなどについて詳しく記載しています。それらにプラスして、専門領域の呼吸器内科にも力を入れていきたいと思っています。すでにホームページを見て、「咳が出る」という症状を中心に呼吸器の不調の方がいらっしゃっています。アレルギーの方もかなりいらっしゃる印象です。呼吸器内科では、近年増加している睡眠時無呼吸症候群の診断と治療にも対応しています。
こちらは予約制ですか?
ホームページからウェブ予約が可能となっています。ウェブ予約をしていただくと事前に来院時の問診表が記入できるため、来院してからの時間が短縮されます。予約は必須ではなく、予約なしでも来院いただけますのでご安心ください。発熱患者さんに関しては、特別予約枠は設けていません。事前の電話でのご連絡も必要ありませんが、待合場所を別に設けていますので、発熱症状がある方は、来院時にまず受付に申し出ていただきますようお願いしています。
今後のクリニックについて教えてください。

院長に就任する前は、外来でも訪問でも診療し、具合が悪ければ入院もできるという、包括的にサポートができる病院にいたので、そこが今の私の基本になっていると思っています。たとえ対応できる診療の幅が変わったとしても、来院された患者さんにじっくりと向き合って、私ができる範囲のことを精いっぱいしていきたいという気持ちは根本にずっとあります。奇をてらったことはせずに、そういった診療を地道にやっていくこと。それが私がめざす診療スタイルです。この地域の皆さんから信頼され、トータルサポートができる医療を提供していけるクリニックになれるよう努めてまいりますので、どんなことでも気軽にご相談ください。