浅野 由香 院長の独自取材記事
富士見台眼科
(練馬区/富士見台駅)
最終更新日:2024/08/27
穏やかな笑顔と優しい声で出迎えてくれた「富士見台眼科」の浅野由香院長。まだ近視について研究も治療もされてなかった頃より子どもの近視に着目し、原因究明と視力回復のための方法を模索してきた。視力低下に悩む親子が足しげく通う同院が、富士見台駅よりすぐのこの地に開業したのは2005年のこと。患者層は赤ちゃんから年配者まで幅広く、周辺住民はもとより引っ越し先からも変わらずに通院してくる人が多いのは、浅野院長の温かな人柄によるところも大きい。患者の声に耳を傾け、心に寄り添いながら治療に邁進してきた浅野院長に、その思いを語ってもらった。
(取材日2022年8月3日/再取材日2024年6月24日)
目と心に寄り添うかかりつけ医であるために
こちらは開業から19年になるそうですね。
子育てをしながらの開業でしたから、練馬区内の実家に近いこの場所を選んで開業しました。あれからもう19年たつんですね。この地域にお住まいの0歳児から80代くらいのご高齢の方まで、中にはファミリーでかかりつけにしてくださる患者さんもいらっしゃいます。練馬区から転居された患者さんが、引っ越し先の横浜や都内の他のエリアからわざわざここまで通って来てくださるケースもありますし、開業当初はやんちゃな小学生だったお子さんが、今では30歳近くの立派な社会人になっていたり。身近なクリニックとして長く通っていただけることを、とてもうれしく思っています。
どんな症状にお悩みの患者さんが多く来られていますか?
当院は大きな手術を必要としない眼科一般を診療していますので、結膜炎やものもらいの治療を手がけることが多いですね。それから近視や遠視、弱視のご相談や眼鏡・コンタクトレンズの処方、20代以降ではドライアイや眼精疲労のご相談が圧倒的に多いですね。目が乾燥していてもご自身が気づいていないケースも多いので、必要に応じて目薬を処方しています。ご高齢の方の場合は、白内障や緑内障の治療、手術を受けるべきかどうかといったご相談を受ける機会も多いですね。日頃から目の健康を意識して、年に1度の定期検診を欠かさず受けに来られる方もいます。
先生が医師の道を志したきっかけは?
実は私は、医学部に入る前に別の大学で建築関係の勉強をしていたんです。建築の勉強も好きだったのですが、大学で学ぶうちに「自分がやりたいことは何なのか。本当にやりたいことを勉強しなければ、一生後悔するのではないか」と思い悩むようになりました。そしてたどり着いたのが「人間に対する興味」。人の体をつかさどる脳の細胞から、感情、手足の動きまで、とにかく人間について深く追究してみたいという結論に至りました。こうしたことが学べるのは医学部以外にありませんから、通っていた大学を卒業後、あらためて宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)に入学し直しました。
小児の近視の診療に尽力
子どもの近視がとても増えているとお聞きしました。
ゲームやスマートフォン、タブレット型端末などを幼少期から使う機会が増え、近くで物を見ることが日常になったこと、遺伝などの要素から子どもの近視が急増しています。十数年前までは、近視は病気という認識がなく……。ただ当院では開業当初から近視による視力低下で悩んでいるお子さんが割と来院されていました。私にも2人の息子がいるので、お子さんの視力を心配するお母さん方の気持ちはよくわかります。地域のかかりつけ医として、母親として「この現状を何とかしなくては!」という思いで、近視について必死に勉強したのが始まりでした。おかげで早くから近視の治療に取り組むことができ、経験を積むことができました。
近視にはどのようなアプローチ方法があるのでしょうか?
まず、気軽に受けられるものとして、両眼視簡易検査器を使って近視矯正訓練を行うという方法があります。機器の中に現れる風景画像を5分ほど眺めることで、遠くを一定期間見ているのと同じメカニズムで目の緊張状態の緩和を促します。目の筋力トレーニングのようなものですね。疲れ目にもお勧めです。子どもは眼球の形が楕円状に伸びやすく、それによって近視になりやすいのですが、そうなると網膜も薄くなり、将来的に緑内障や網膜剥離、加齢黄斑変性症にかかりやすくなってしまいます。劇的な変化は望めませんが、継続して行うことが大切だと考えています。
近視に対して行うオルソケラトロジーとはどんな治療なのですか?
オルソケラトロジーレンズと呼ばれる、特殊にデザインされたハードコンタクトレンズを睡眠時に装用し、寝ている間に角膜の形状の矯正を図るというものです。毎晩寝るときに装用し、起きたら外すを繰り返すことで、角膜の矯正を進め、眼鏡をかけず裸眼視力で生活する状態をめざします。乱視が強い場合は、効果があまり期待できないケースが多かったのですが、近年、乱視用のオルソケラトロジーレンズが発売され選択肢が広がりました。
先生はオルソケラトロジーの治療は慎重にお勧めしているそうですね。
まず、自費なので保険診療と違い高額です。寝ている間にレンズを装用するだけでというと、夢のような治療に感じてしまいますが、すべての人に望むような結果が出るわけではありませんし、それがお子さんなら親御さんがレンズの取り扱いや装用のフォローなど、長期にわたって管理する必要があります。患者さんからの強い希望が第一で、こちらから積極的にお勧めはしていません。きちんとご説明をした上で検査を行い、視力補正が望めるかを判断。1週間の試用期間も設けています。当院は、オルソケラトロジー治療は10年以上、乱視用のコンタクトレンズの経験もそれなりにあり、レンズメーカーとのつながりも深いため、そこの専門スタッフさんとやりとりしながら一人ひとりに合った治療法を考えていきます。特にお子さんのオルソケラトロジー治療に関しては早くから取り組んできました。
患者のニーズに応え、時代に即した診療を届けたい
レーザー治療にも対応しているそうですね。
レーザー治療は網膜剥離の予防や眼底出血による失明を防ぐ目的で行っています。何らかの原因によって網膜にできてしまった裂け目(網膜裂孔)の周辺に、裂け目をふさぐためにレーザーを照射することで、網膜剥離への進行を防げることが期待できます。一方の眼底出血は、網膜の血管が破れたり詰まったりして起きる眼球内の出血のこと。外見上の変化や自覚症状はありませんが、眼底出血を何度も繰り返していると、網膜の機能が衰えたり、網膜剥離を起こしたりして、視力低下を招いてしまうのです。ですから出血部分にレーザーを照射して、こうした出血しやすい状態の改善を促します。眼球へのレーザー照射と聞くと、不安に思われるかもしれませんが、網膜には知覚神経がないので痛みはほぼ感じませんからご安心ください。
日々の診療で心がけていることはありますか?
病気を治すのはあくまでも患者さんご自身。私たちはそのお手伝いをさせていただく立場です。だからこそ、患者さんにご自分の病気について理解を深めていただくために、病気の説明をする時間、患者さんのライフスタイルをお聞きして、それに即した注意点をアドバイスさせていただく時間などを大切にしています。使いすぎたときや疲れを感じたときに目を休めたり、長時間近くを見すぎないように気をつけたりなど、意識的に環境を整えることが予防の結果に直結します。そうした、生活の中で目の健康を守ることができるちょっとしたポイントを、わかりやすくお伝えしていきたいと思っています。
今後の展望と読者に向けたメッセージを一言お願いします。
現在の診療レベルを落とすことなく維持できるように、まずは自身の体調を整えて、患者さんのニーズにできる限りお応えしていきたいと思っています。時代に合った診療を提供できるよう、知識面・技術面のブラッシュアップに努めていきたいですね。タブレット型端末を使用した授業や在宅勤務の増加の影響で、年代問わず、眼精疲労の患者さんが大幅に増えてきている印象です。目のことで少しでも気になる不調があったら、放置せずお気軽にご相談ください。また、40歳を過ぎると緑内障の発症率が急激に上がることがわかっています。自治体検診などもうまく活用して、目の健康を定期的にチェックする習慣をつけていただきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とはオルソケラトロジー/両眼:16万5000円、片眼:8万2500円
※1年間の検査・診察料、コンタクトレンズの代金を含む。