扇内 美惠 院長の独自取材記事
扇内医院
(練馬区/中村橋駅)
最終更新日:2026/09/04
中村橋駅から徒歩約8分。閑静な住宅地にたたずむ「扇内医院」は、長く愛されてきたクリニックならではの、趣のある建物が印象的だ。中に入ると広々とした空間があり、懐かしく温もりのある雰囲気に癒やされる。院長の扇内美惠(おぎうち・みえ)先生は、40年以上にわたって地域医療を支えてきた。現在は産科と婦人科を中心に、妊婦健診や産後健診、思春期の月経トラブル、中高年の更年期障害など、幅広い年代の悩みに応え、歯科医師である扇内院長の娘が歯科の診療にも対応している。開院当初より漢方薬を積極的に取り入れ、西洋医学と組み合わせながら患者一人ひとりに寄り添う診療をめざしてきた。「自分にできることを、真心を尽くして行うという“至誠”を何より大切にしています」と話す扇内院長に、診療方針や医療に対する想いを聞いた。
(取材日2026年7月6日)
漢方が広げた診療の可能性
先生はなぜ産婦人科を選ばれたのですか。

医師としての進路を考えていた時は、手術に興味があったので、外科に進むことも候補の1つでした。実際に外科へのお誘いもいただいたこともありましたが、外科は専門分野が細かく分かれており、一つの領域を深く追究する診療スタイルです。一方で産婦人科は、内科的な診療と外科的な治療の両方に携わることができ、幅広く患者さんを診ることができます。その点に大きな魅力を感じ、産婦人科を選びました。何より、赤ちゃんが無事に生まれた瞬間の喜びはひとしおですね。その感動に何度も立ち会って心を動かされてきましたし、産婦人科医になって本当によかったと感じています。
漢方薬を積極的に取り入れているとのことですが、きっかけは何だったのでしょうか。
漢方に関心を持ったきっかけは、大学時代にさかのぼります。当時、漢方薬のエキス製剤が登場し、恩師の教授が診療に用い始めました。私も実際に漢方薬を処方する中で、その働きを目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。興味深い症例を幾度となく経験したことで、「今後の診療に漢方を取り入れていきたい」という思いが強まりました。西洋医学とは異なる角度から体全体の状態を捉えることができるのも、漢方ならではの魅力です。こうした経験を通じて、漢方への関心を深めていきました。
漢方について、その後はどのように学ばれたのでしょうか。

故・寺師睦宗先生が主宰されていた漢方三考塾などに通い、漢方の基礎理論や処方の考え方を本格的に学びました。学びを深める中で日本東洋医学会漢方専門医の資格も取得しています。私自身は、西洋医学と東洋医学を対立するものとは考えていません。西洋薬には西洋薬の良さがあり、漢方薬には漢方薬の良さがあります。どちらが優れているということではなく、それぞれの強みを生かしながら、患者さんにとって最適な治療を選択していくことを大切にしています。
女性の幅広い疾患と妊婦のケアに対応
患者さんの悩みは、どのようなものが多いのですか?

幅広い年代の患者さんが来られています。患者さんの悩みも年代によってさまざまですね。思春期の女性で多いのは月経トラブルです。月経困難症には、冷え症が関係していることもありますし、その場合は体の基礎となる部分へのアプローチを試みます。その手段として使っているのが漢方薬です。体の内側から治していく、血の巡りをよくして子宮を温めることが症状の改善の糸口になると考えています。一方で、更年期障害の主な原因は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌低下です。当院では、ホルモン補充療法に漢方薬を組み合わせながら、一人ひとりの症状に合わせた治療を行っています。ホルモン剤に抵抗がある方には、体への負担を考慮しながら漢方薬中心の治療への移行も可能です。更年期のうつについても、単なる精神的な問題ではなく、女性ホルモンの変化が関係していることがあります。気になる症状が出てきたら、まずは婦人科に来ていただきたいですね。
現在の産科の体制についてお聞かせください。
新型コロナウイルスの流行の少し前までは当院でもお産を受け入れていました。現在は外来のみで、35週までの妊婦健診や産後の1週間健診・1ヵ月健診、育児相談などを行っています。出産にあたっては、妊婦さんご自身が希望される病院へご紹介しています。特に希望がない場合には、私のほうからいくつかの医療機関をご提案し、金銭面やご自宅からの通いやすさなども考慮しながら、一緒に相談して決めていきます。安心して出産を迎えられるよう、それぞれの方に合った環境を選べることを第一に考えています。
妊娠中のケアで、大切なことは何でしょうか?

妊娠中に気を配っていることは、お母さんと赤ちゃんの健康状態をしっかり見守ることです。特に赤ちゃんの発育には栄養状態が大きく関わりますから、食事についての具体的な指導にも力を入れています。お産を引き受けていた頃には、管理栄養士が考えた有機野菜をふんだんに使った食事を用意していました。また、赤ちゃんの発育状況を確認するためにエコー検査を丁寧に行い、異常を見逃さないよう細心の注意を払っています。あとは腹帯の使用もおすすめしています。最近は使う方が少なくなりましたが、おなかの張りや腰痛対策としてはとてもよいものだと思います。昔ながらの習慣の一つですが、ぜひ活用していただきたいですね。
歯科口腔外科も診療されているのですね。
もともとは、東京女子医科大学の歯科口腔外科学分野で主任教授を務め、名誉教授でもあった夫が担当していました。院内にスペースがあったこともあり、困っている方の力になれれば、という想いで始めたんです。夫が亡くなってからは、娘が後を継ぎました。診療開始当初から、歯科口腔外科だけでなく、一般歯科の診療や補綴治療や予防歯科など、幅広い歯科医療に対応しています。また、婦人科検診の際には産科・婦人科と提携することもあります。妊娠中はつわりで歯を磨くことが困難になりますから、妊娠性の歯肉炎が起きやすくなるなど、口腔内の環境は不安定になります。さらには、歯周病が早産や低体重児の出産に影響を及ぼす可能性もあります。そうしたリスクを減らすために、歯科と連携を取って、妊婦さんの定期的な口腔内のケアや、妊婦時期に合わせた歯科診療につなげています。
至誠を尽くし、真心を持って患者の悩みに向き合う
診療で重視していることはありますか?

私が診療で大切にしているのは、悩める人を救うということです。そのためには、まず患者さんに寄り添い、よく話を聞いてあげることが欠かせません。私は常に、患者さんのトラブルをどうにかして解決してあげたいという気持ちで診療にあたっています。そのためには、患者さんがどのような症状で、なぜ苦しんでいるのかをしっかり理解する必要があるのです。話をじっくり聞き、その方に合った解決策を見つけていくことを何より大切にしています。また、よく話を聞くことは産後うつの予防にもつながると思っています。妊婦さんの不安は、知らないことから生じる場合も少なくありません。お産について知り、気持ちを話してもらうことで、不安が和らぎ、安心につながることも多いと感じています。必要なことはきちんとお伝えしつつ、患者さんの想いに耳を傾けながら、適切な選択を提案する姿勢を心がけています。
最後に、読者にメッセージをお願いします。

私が何事においても大切にしている信条は「至誠」です。これは東京女子医科大学の同窓会組織である至誠会の創立者・吉岡彌生先生の言葉で、真心を尽くすことを意味します。私は、一人ひとりの患者さんに寄り添うこの考え方に深く共感し、日々の診療に取り組む上で大きな支えとなっていました。長い間医療に携わってきましたが、患者さんを診ることは今でも私のやりがいです。患者さんのために、妊婦さんのために、自分のできる最大限のことをしてあげたい一心で診療を続けてきました。この気持ちは、これから先も変わることはありません。どのような疾患であっても、誠実に、一生懸命向き合っていきたいと思っています。必要であれば適切な医療機関へ紹介し、その後も継続して患者さんと向き合うことを大切にしています。婦人科の受診にハードルを感じる方も多いと思いますが、気になる症状を感じた際は、ぜひお早めに相談していただければと思います。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック/男性4万円~、女性4万4000円~

