市原 和明 院長の独自取材記事
市原外科内科
(練馬区/平和台駅)
最終更新日:2025/06/13

平和台駅北口から徒歩7分、住宅街の一角で重厚な青い看板が目を引く「市原外科内科」を訪ねた。開業して40年以上たつ、街のかかりつけ医だ。現在は2代目院長の市原和明先生が父で前院長の市原荘六先生から継承し、幅広い世代の健康を支えている。市原院長は脳神経内科と高齢医学を専門に大学病院や研究機関で研鑽を積み、現在も週に1度、日本大学医学部附属板橋病院でも診療を担当している。問診では話をじっくり聞き、疑問点や不安を解消して前向きに治療に取り組めるよう努める市原院長。父が掲げた「頭のてっぺんからつま先まで診る」というモットーを受け継ぎ、日々真摯に患者と向き合う院長に、クリニックの特徴や専門である脳神経内科についてなど話を聞いた。
(取材日2022年6月20日/情報更新日2025年5月21日)
3人のドクターが専門性を生かし、幅広い疾患に対応
開業から40年以上だそうですね。クリニックの特徴を教えていただけますか?

当院は風邪や胃腸炎、生活習慣病といった身近な病気を診るかかりつけ医の役割に加え、在籍する3人の医師がそれぞれの専門性を生かし、幅広い疾患に対応できるところが大きな特徴です。私は脳神経内科と高齢医学、私の姉が循環器内科、また、毎週金曜の午前中は、父の後輩である消化器外科の医師が胃と大腸の内視鏡検査を中心に担当しています。超高齢社会となった今、練馬地域も高齢化率がかなり高く、当院も50代以降の患者さんが多いですね。ただ、最近は若い世代も増えてきつつありますので、ぜひ気軽に受診いただけたらと思っています。
日々の診療ではどんなことを心がけていますか?
父が開業当初から掲げている「頭のてっぺんから足のつま先まで診る」というモットーを受け継ぎ、街のかかりつけ医として、患者さんが何でも気軽に相談できるクリニックでなくてはならないと常々意識しています。医師が一方的に診察して薬を出して終わりというのではなく、患者さんが抱く疑問や不安をある程度解消して「受診して良かった」と思っていただけるところまで、じっくりお話をさせていただきます。また高齢になると病気もかなり多くなり、ご本人だけでなく見守るご家族も不安を抱えていらっしゃいます。例えばお薬にしても、多い方だとあちこちの病院から15種類も処方されているなど、管理しきれていない状態も多く見受けられます。そういった場合に全身の状態をトータルで診て、必要なもの、不要なものを整理して差し上げることも、かかりつけ医の大切な役割だと思っています。
先生のご専門である脳神経内科について詳しく教えてください。

脳神経内科は、手足に力が入らない、あるいは手足のしびれ、震え、物忘れなど、認知、感覚、運動に関する異常を専門としています。代表的な疾患としては認知症、パーキンソン病、脳梗塞、そのほか神経系の難病などが挙げられます。脳神経内科の病気は完治させるというのはなかなか難しく、基本的には生涯付き合っていく病気ですから、担当医である私も一生診させていただくことを意識して診療にあたっています。とはいえ、医療の進歩は目覚ましく進んでいますから、治療の過程で新薬の話題が出てくることもしばしば。新しい薬で今の状態から改善が見込めるかもしれないという期待感は、治療を続ける上で大きなモチベーションになります。ですから、患者さんやご家族と新しい情報を共有し、少しでも患者さんが快適に過ごせるようにサポートしています。
認知症の早期発見・治療のため、物忘れの外来に注力
高齢の患者さんが多いとのことですが、認知症の兆候に気づくことはありますか?

そうですね。私は以前、東京都医学総合研究所に在籍していて、主に認知症やパーキンソン病といった高齢医学の研究に携わっていました。ですから、当時学んだ知識、あるいは患者さんの立ち居振る舞いなどから認知症の兆候に気づくことも多いです。ですが、研究をしていた当時は知り得なかった発見もあります。例えば、夫婦ともに高齢で老老介護にならざるを得ないといった家庭の事情など、高齢の患者さんを取り巻く療養環境の厳しさを痛感しています。かかりつけ医として、ご家族の大変さ、不安感にも少しでも寄り添った診療を行っていきたいと思っています。当院で物忘れの外来に力を入れているのも、そうした思いの一環です。
物忘れの外来に注力されているのですね。
はい。患者さんご自身で症状に気づいて受診されることもありますが、先にご家族が気づいて一緒に来院されるケースのほうが多いですね。お盆や正月で集まったことがきっかけになるのか、休み明けに相談が増える傾向です。当院では、大学病院と密接に連携し、アルツハイマー型認知症の新薬、レカネマブによる治療に対応しています。病気を早く見つけて患者さんを連携先の病院に紹介し、クリニックで治療できる段階になれば、当院に戻って定期通院してもらえる取り組みも進めています。ほかの病気と同様に認知症も早期発見が大切ですが、近隣のクリニックで診てもらえると思わず、わざわざ病院に行く方は少なくありません。私は今でも大学病院で週1回勤務していますが、病院の受診予約は1ヵ月待ちでも、クリニックなら基本的に当日の診療ができます。家族の誰かが違和感を覚えたり、ご本人が物忘れを自覚したりしたら、まずは早めの受診がお勧めです。
かかりつけ医で認知症にも専門性を持って目配りしていただけるのは心強いですね。

以前は物忘れを年のせいにして、受診せずに発見が遅れるケースがとても多かったのですが、メディアなどによる啓発活動が進み、認知症を疑って積極的に受診される方が増えてきました。手足のしびれや震えについても、練馬区は脳神経内科のクリニックが少ないので、かかりつけ医に相談しても原因がわからず放置してしまうケースがかなりあるようです。確かに加齢とともに手足のしびれや震えが見られることもありますが、すべてを年のせいにして放置するのはとても危険です。脳梗塞の兆候や神経難病だったというケースもありますからね。だからこそ、気軽に受診し相談できるかかりつけ医の存在が大事だと思っています。
地域の患者にとってより身近なクリニックでありたい
クリニックで今後力を入れていきたいことはありますか?

やはり予防ですね。かかりつけの患者さんには年に1度必ず健康診断を受けていただくようにお願いしています。病気をなるべく早期に見つけて治療につなげていくことが、私たちかかりつけ医の使命だと思っています。定期的な検査が習慣づいている方ならいいですが、仕事が忙しく健康診断を何年も受けずにいる方もいらっしゃるので、そういった方にも検査の受診を促していくことが今後の大きな課題です。当院では一般的な健康診断に加え、胃・大腸内視鏡検査や肺がん検診のほか、循環器を専門とする医師による心臓・頸動脈のエコー検査も行っています。万が一異常が見つかった場合でも、当院で診断をつけるところまで対応できますので、忙しくてなかなか受診する暇がないという方もぜひ一度ご検討ください。
地域の中でどのような存在のクリニックでありたいと考えていらっしゃいますか?
かかりつけ医である以上、オールラウンドに患者さんのお役に立てることが大事だと思っています。専門的な診療が必要になるたびに大きな病院を紹介すれば、患者さんにとっては通院だけでも大変になりますから、ここ1ヵ所である程度の範囲の疾患に専門的な見地から診療できる体制を整えています。一方で、診断を経て手術や入院治療が必要と判断した場合は、順天堂大学医学部附属練馬病院や練馬光が丘病院、日本大学医学部附属板橋病院などへスムーズにご紹介できますし、当院がカバーできない領域のご相談であれば、地域の開業医の先生をご紹介することも可能です。不調があってつらいとき、「まずはここに相談してみれば何とかなる」と思っていただけるよう、患者さんにとって身近な存在のクリニックをめざしていきたいですね。
最後に、読者に向けて一言メッセージをお願いします。

父が開業した当時、私はまだ小学校低学年の幼い子どもでした。今通院してくださっている患者さんの中には、当時からよく知っている方も多く、「先生も昔はあんなに小さかったのにね~」なんて、思い出話をされることもしばしばです。長く当院を頼りにしてくださる方のためにも、一回一回の診療を大切に、じっくり向き合っていきたいと思っています。診療はワンフロアで行い、患者さんが転倒しにくいよう段差の少ない構造にするなど、受診時のご負担にも配慮しています。どうぞお気軽にご相談にいらしてください。