加齢黄斑変性
症状と治療法
つつみ眼科クリニック
(練馬区/東武練馬駅)
最終更新日:2024/12/13
- 保険診療
加齢黄斑変性は、欧米では成人の失明原因の第1位に挙げられる疾患。日本でも患者数が増加し、失明原因の第4位になっているという。加齢という文字がついているだけに、高齢者だけの疾患と思われがちだが、中年の年代でも危険信号が出ている場合もある。2024年に新たに作成された新生血管型加齢黄斑変性の診療ガイドラインでは、50歳以上という年齢規定が撤廃され、旧ガイドラインでは前駆病変に分類されていたドルーゼンや網膜色素上皮異常は早期・中期加齢黄斑変性と診断されるようになった。発症して失われてしまった目の機能は現在の医学では修復できないため、いかに早く診断し、治療につなげるかが重要。加齢黄斑変性の症状や早期発見のためにできること、発症後の治療法について「つつみ眼科クリニック」の丸子留佳先生に詳しく聞いた。
(取材日2024年11月22日)
目次
先進の設備と各分野のエキスパートにより、専門性の高い治療が受けられる身近なクリニック
- Q加齢黄斑変性とはどのような病気ですか。
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A
加齢黄斑変性は、網膜もしくは脈絡膜に新たな血管ができる新生血管型加齢黄斑変性と、新生血管は伴わないが網膜が徐々に傷んでいく萎縮型加齢黄斑変性に分類されます。新生血管はとても脆く、血管内の成分が漏れ出て網膜に変形が起こり、視力や視野障害が引き起こされます。新しいガイドラインでは、これまでの50歳以上という年齢の規定が撤廃されました。病名のとおり、高齢者に起きやすい疾患ではありますが、中年の年代でも危険信号が出ている場合もあり、高齢者だけの疾患ではありません。喫煙は重要な危険因子であり、男性の喫煙率が高い日本では男性患者が多い傾向です。
- Q早期に発見するには、どのような症状に気をつけるべきですか。
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A
ものが歪んで見えるときには注意が必要です。新生血管から血液などが漏れ出ると、それにより網膜の形が変わります。その部位に相当する視野が歪んだり、黒く抜けて見えなくなったり、色がわからなくなったりするのです。黒く抜けて見えなくなるまでいくと、症状はだいぶん進んでいます。初期の異常は両目で見ていると気が付かないこともあり、日頃から片目ずつ見え方をチェックすることが大切です。チェック時にはアムスラーチャートという格子状の表を用いるといいでしょう。加齢黄斑変性のパンフレットなどに載っているので、活用してみてください。ものが歪む症状は疲れでは出ません。歪みに気がついたら、早期に受診することが大切です。
- Q加齢黄斑変性の検査と治療法について教えてください。
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A
加齢黄斑変性の診断を行うには、OCT(光干渉断層計)という網膜の断層像を見る検査を必ず行い、網膜の形や病変の広がりを評価します。新生血管の存在を確認するには、以前は造影剤を使っての眼底写真の撮影が必要でしたが、現在ではOCTアンギオグラフィ(光干渉断層血管撮影)という検査方法により造影剤を使わずに確認することが可能です。造影剤によるアレルギーのリスクもなく、検査時間も短く、患者さんの負担が少なくなりました。新生血管型加齢黄斑変性の治療の基本は、眼球への抗VEGF薬の注射です。光線力学的療法という薬剤を静脈に注入後に弱い光を目に照射する治療法もありますが、使用頻度は少なくなっています。
- Q薬剤を注射する治療はどのようにして行われますか。
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A
新生血管の発生や成長を抑制する目的の抗VEGF薬という薬剤を、非常に細い針で直接眼球に注射します。注入自体はすぐ終わりますが、注射前に行う消毒や点眼での麻酔の時間を含めると、治療時間は10分程度です。治療前に血圧を測定し、高すぎる場合は治療を見送ることもあります。感染予防のための消毒は非常に重要です。ヨード系の消毒薬で目の周りの皮膚を消毒し、眼球の表面も消毒薬を薄めたもので洗い流した後に注射をします。治療開始時は1ヵ月に1回のペースで注射をし、滲出がなくなれば徐々に治療間隔を空けてゆきます。保険を適用しても治療費は高額で、基本的には終わりのない治療になりますので、予防が非常に大切です。
- Q加齢黄斑変性の予防にはどういったことをするべきですか?
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A
喫煙は、修正可能な加齢黄斑変性の危険因子のうち、最も重要なものですので、喫煙している人は禁煙しましょう。また、短波長の可視光線から目を守ることも大切です。短波長をカットする特殊なレンズを使った眼鏡をかけるなどすると、目へのダメージを抑えられます。黄斑を守る成分として、ルテインという色素も有用です。ルテインは緑黄色野菜や果物に多く含まれているので、バランスの良い食事やルテイン含有サプリメントを取ることも加齢黄斑変性の予防につながります。