小児と高齢者の口腔機能に注視し
無理のない改善方法を提案する
とみさわ歯科医院
(調布市/調布駅)
最終更新日:2024/12/04


- 保険診療
歯科治療というと虫歯や歯周病を思い浮かべるが、近年は口腔機能にも注目が注がれている。調布市にある「とみさわ歯科医院」の富澤誠院長はこの地で開業して30年、小児から高齢者まで幅広く診療してきた。約18年務めている幼稚園の園医の経験から、保護者の虫歯予防への意識の高まりを感じるという。一方、指しゃぶりをやめられない、食事に時間がかかるなど保護者からの相談は変わらず多い。インターネットの情報から不安になる保護者も多く、適切な情報を伝えなければと感じるという。また、口腔機能の問題は高齢者にとっても深刻である。食べづらい、飲み込みにくいといったことから寝たきりに発展するケースも少なくない。口腔機能に詳しい富澤院長に、小児の口腔機能発達不全症や高齢者の口腔機能低下症について、症状や対処法について聞いた。
(取材日2024年9月13日)
目次
小児は将来のために、高齢者は現在のために、口腔機能を評価することが重要
- Qお子さんの口腔ケアに力を入れていると伺いました。
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A
▲18年以上幼稚園の園医をしており子どもの治療も得意としている
はい、小児の口腔ケアと口腔機能の発達に注力しています。私は18年ほど調布市の幼稚園の園医をしているのですが、虫歯のお子さんがとても少なくなりました。虫歯予防について保護者も意識が高く、インターネットなどで調べていろいろと工夫しているのがよくわかります。一方、口腔機能の発達不全に関してはまだまだ対応が必要です。患者数が増えているというわけではありませんが、虫歯予防への意識向上に伴って、口腔機能の発達が遅い子どもが目立つようになってきたのかもしれません。口腔機能の発達については、虫歯予防のような統一的な対応が難しく、長期的に経過を見る必要もあるでしょう。
- Q小児の口腔機能発達不全症とはどのようなものでしょうか?
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A
▲子どもの指しゃぶりや口呼吸には注意が必要
口腔機能発達不全症とは、食べたり話したりする機能が十分でない、または正常な機能を獲得できていない状態のことをいいます。そうしたお子さんは、食べる速度が同年齢の子に比べて異常に遅かったり、食べ物を飲み込みにくそうにしていたりするのが特徴です。代表的な原因としては、指しゃぶりや口呼吸が挙げられます。こうした悪習癖は、すぐにやめさせられるわけではありません。特に指しゃぶりについては心理的要因もあることから、保護者にもお話しを伺い対策を考える必要があります。また、口呼吸は放置しておくと口腔内の乾燥を招き、虫歯や感染症を引き起こしやすくなるリスクもあるので、注意しなければなりません。
- Qご高齢の方に関してはいかがでしょうか。
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A
▲通院が難しくなった患者には訪問歯科診療にも対応している
若い人に対する歯科診療が元どおりに機能を回復していくための「攻め」のものだとしたら、高齢者の場合は現状を悪化させずに、今ある機能をできる限り維持していくための「守り」のものです。患者さんも必ずしも完治を望んでいるわけではありません。歯がなくなったからインプラントを入れるというような型にはまった治療方法を押しつけるのではなく、ご本人やご家族の要望をよく聞いて、その方に合った方針を決めていくことが大事です。高齢になると口腔機能が低下し食べづらくなる、だから体力が落ちて動けない、だからおなかが減らずに食べられないという悪循環が起こります。この「オーラルフレイル」と呼ばれる現象を防ぐことが大切です。
- Q口腔機能低下症とはどのような状態を指すのでしょうか?
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A
▲口腔機能を評価するための検査機器も充実している
口腔機能低下症とは、加齢や病気などによって、食べる・飲み込む・話すといった動作や、唾液の分泌、口腔内の感覚といった機能が低下するものです。当院では、さまざまな方法を用いて口腔機能を評価しています。例えば、「飲み込みが悪くなったと感じるか」といった、12項目を3段階で答えるチェック表を用いて嚥下機能を調べたり、30秒間で「ぱ」「た」「か」をそれぞれ何回言えるかカウントして、舌や唇の機能を評価したりします。口腔機能低下症の改善には、治療ではなくトレーニングが必要です。普段から健康な口を維持してもらうために、患者さんには散歩のついでにでも来てくださいとお声がけしています。
- Q新たに歯科用CTを導入されて、どのように変わりましたか?
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A
▲先進の歯科用CTを導入し、より精密な診断や治療につなげている
歯科用CTを導入したことで、診断の精度向上につながりました。例えば歯の根の治療の場合、2次元撮影では重なりがある部分が見えません。しかし、歯科用CTはさまざまな角度から縦割り、横割りで患部を観察できます。また、歯周病で歯を支える骨が失われている場合、どの部分が失われたかは歯科用CTで見れば明白です。患者さんにより精密な診断と治療を提供できるようになったことからも、歯科用CTを導入して良かったなと思います。新しい機器以外にも、患者さんにより良い治療を提供できるよう、日本歯科医師会が実施するセミナーを受けるなど、日々勉強を欠かしません。設備と知識や技術の向上に、今後も取り組んでいきたいと思います。