富澤 誠 院長の独自取材記事
とみさわ歯科医院
(調布市/調布駅)
最終更新日:2024/10/08

調布で生まれ育った富澤誠院長が、「とみさわ歯科医院」を開業したのは1991年のこと。以来、近隣住民のかかりつけ医として幅広い診療に尽力してきた。2007年に全面改装された院内は、安心・安全な治療の提供をめざし、先進の設備も導入した上で、患者が居心地良く過ごせるように配慮している。長年勤めるスタッフとともに研鑽を続ける富澤院長に、最近注力する小児や高齢者の口腔機能改善についての取り組みをはじめ、診療に対するこだわりについて聞いた。
(取材日2024年09月13日)
小児や高齢者の口腔機能改善に注力している
どうような診療を行っていますか?

当院では虫歯や歯周病といった一般的な歯科治療のほか、舌痛症・非定型性歯痛・歯牙接触癖・がんの周術期の口腔ケア・がん治療中の口腔ケアといった幅広い診療に対応します。来院する患者さんの層もさまざまで、お子さんからご高齢の方まで年齢を問わず診療可能です。特にお子さんについては、18年以上幼稚園で園医を務めている経験もあるので、保護者の方も安心してご相談いただけると思います。当院の診療方針は「自分の歯をできるだけ残してきちんと噛んでもらう」ことです。そのため、歯科用CTを用いた精密な検査を行い、削る必要があったとしても最小限に抑えられるように努めています。
口腔機能に関する取り組みについて教えてください。
小児に見られる「口腔機能発達不全症」と高齢者に多い「口腔機能低下症」の治療は、2018年から保険適用になりました。当院はそれを行うための「口腔管理体制強化加算」の施設基準を満たす歯科医院となっています。特殊な検査機器などを用い、機能が一定以下の診断が下りれば、トレーニングが必要です。お子さんの場合は、指しゃぶりや口呼吸といった悪習癖を改善する必要もあります。こうした悪習癖は心理的な要因も関係するので、家庭環境なども考慮した対応が必要です。ご高齢の患者さんには普段から健康な口を維持してもらうために、散歩のついでに来てくださいとお声がけしています。通院が難しくなった患者さんへは訪問診療も可能です。高齢者の場合も、本人だけでなくご家族の話も聞いて、その方にとっていい診療方針は何か考えるようにしています。
口腔機能の評価はどのように行うのですか?

口腔機能低下症では、嚥下機能を調べるために自己評価してもらうテストがあります。「飲み込みが悪くなったと感じるか」といった12の項目について、3段階で答えてもらうものです。さらに、舌や唇の機能を確認するためのテストも行います。30秒間で「ぱ」「た」「か」をそれぞれ何回言えるかで評価するテストです。他には、咀嚼の回数によって色が変わるガムを噛んでもらったり、風船状の装置を上顎と舌に挟んで舌圧を調べたりといった方法も有用です。いろいろと評価した上で機能が落ちてきているという診断になったら、トレーニング方法を指導します。調布市では、75歳以上の方が申し込み制で受けられる「後期高齢者歯科健診」が始まりました。虫歯や歯周病の検診に加え、摂食嚥下機能に関する評価をしましょうということです。嚥下機能が落ちると誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もありますし、ぜひご活用いただきたいですね。
将来の口腔機能に影響する小児の悪習癖
小児の指しゃぶりや口呼吸は、どういったリスクがありますか?

指しゃぶりや口呼吸は歯並びに影響します。指しゃぶりを長く続けていると、前歯が前に出っ張ってきて前歯の上下が噛み合わなくなるのです。また、口呼吸も常に口がポカンと開いている状態のため、前歯が出てくるリスクとなってしまいます。さらに、口が開いていることで口の中が乾燥し、汚れやすくなるという危うさもあるでしょう。口呼吸については、鼻炎などで鼻呼吸ができないことも要因として考えられます。口呼吸をしている原因を見極めることも必要です。こうした悪習癖は最悪の場合、骨格系に影響します。歯だけでなく、顎自体が開いてしまうのです。そうなると外科手術しか治療法はありません。遺伝的な要因で骨格に問題が出ることもありますが、悪習癖でも最悪の場合はそうしたリスクがあることを知っておいていただきたいですね。
何歳頃までに対応が必要でしょうか。
できるだけ早く対応することに越したことはありません。指しゃぶりや口呼吸は、前歯が生えそろう小学1年生頃までに対策が必要です。大きくなっても指しゃぶりをやめられなかったお子さんは、その後舌癖(ぜつへき)といって、無意識に舌を出す癖がつきやすくなります。そうするとオープンバイト、つまり前歯が噛み合わない状態になるので、治療法を検討しなければなりません。
保護者が気をつけるべきことは何ですか?

まずはお子さんをよく観察し、食べる速度や食べ方、寝ている時の様子に注意してください。同年齢の子に比べて食べる速度が著しく遅い場合は、口腔機能に何かしらの問題があるかもしれません。噛む力のほか、飲み込む力が弱い可能性もあります。また、前歯が噛み合っていない場合は、麺類など前歯で噛み切る食べのものが非常に食べづらくなります。そうした食べ物を食べづらそうにしていないか観察してください。寝ている時には、口呼吸していないか確認しましょう。いつも口がポカンと開いていて、寝ている時も同じように口呼吸していれば注意が必要です。近年はインターネットから情報を得る保護者の方が増え、間違った情報などを目にして混乱する方がいらっしゃいます。悪習癖に関する対応はお子さんによって異なり、一律の対応はできません。当院では家庭環境や育児姿勢などを考慮し、それぞれのお子さんに合った対応をしたいと考えています。
先進の設備と技術で、安心・安全に配慮した治療を行う
院長ご自身はこれまでどのようなことを学ばれてきたのですか?

東北大学歯学部では歯科全般はもちろん、特に基礎医学の大切さを学びました。口腔生化学の先生が話してくださった、「歯科医師をめざすのに基礎医学を勉強するのはつまらないと感じるかもしれないが、将来診療にあたる上で、物事の本質を見抜くために非常に大切なものだ」というメッセージはいまだに頭に残っています。医療技術は日進月歩ですが、「トレンドに惑わされず基礎に立ち返った判断が必要だ」と考えるのは、恩師の教えがあったからです。今でも新しい研究や症例を学ぶ際は、基礎医学的な知識に立脚して、その背景を捉えることが重要だと思っています。たくさんの学びを得て卒業した後は、立川相互病院のさまざまな診療科で初期研修を受けました。スウェーデンのイエーテボリ大学に留学して歯周病について学んだことや、昭和大学歯学部でさまざまな研鑽を積んだことも、開業してから生かされていると思います。
安心・安全な歯科診療を提供するために、どのような取り組みをされていますか?
当院は「歯科外来診療医療安全対策」と「歯科外来診療感染対策」に係る施設基準を満たしており、十分な感染対策を行い、患者さんに安心して治療を受けていただける環境をつくっています。例えば、医療機器については訪問歯科診療や何かトラブルが起きた際にも活用できるAEDやパルスオキシメーター、心電計を導入しました。感染対策においては口腔外バキュームを各ユニットに設置し診療室の空気の汚染にも配慮しています。精密な診断を行うために歯科用CTも欠かせません。歯科用CTは360度さまざまな角度から幹部を診られるだけでなく、縦横の断面図も確認できます。通常のエックス線検査では重なって見えなかった部分も、歯科用CTを使うことではっきりとわかるのです。歯科用CTのおかげで歯の根を治療する際や、歯周病の治療でもより良い治療が行えるようになりました。また腫瘍など口腔領域のさまざまな疾患の早期発見にも役立っています。
どのような歯科医師、クリニックをめざしていますか?

専門性を究めることも重要ですが、地域のかかりつけ医としてまずは全般的に診られる歯科医師でありたいと思っています。その方それぞれに生活・環境・社会がありますし、口にはその人の健康や人生そのものが反映されるものです。歯だけでなく、全部ひっくるめてその人全体を診ていきたいですね。例えば、虫歯ではないのに歯が痛くなる「非定型歯痛」という症状では精神的ストレスも原因となり得るので、歯の治療にとどまらず精神的なケアが必要になってきます。どんな場合でも、患者さんと一緒に病気と付き合うという考え方で長い期間にわたって治療を続けていけるよう、信頼関係が築ける地域の歯科医師をめざしたいと思います。