天神 尚子 院長の独自取材記事
三鷹レディースクリニック
(三鷹市/三鷹駅)
最終更新日:2025/05/27

2004年の開業以来、地域の女性の健康を支えてきた「三鷹レディースクリニック」。20年前は近隣に婦人科が少なく、ましてや女性医師が診てくれるクリニックはほとんどなかったという。そんな三鷹駅周辺の女性の力になりたいとクリニックを開業したのが天神尚子院長。「患者さんが困った時は、精いっぱい私はやる」と力強く語る。テキパキとして冷静な印象とは裏腹に、人見知りで美容室では毎回寝たふりをしてしまうという、かわいらしい一面も。そのギャップから醸し出される魅力が、患者とスタッフを長年惹きつけてやまないのだろう。
(取材日2025年4月23日)
働く女性としての経験が治療に生きる
どういった患者さんが多くいらっしゃいますか?

幅広い年代の方が受診されますが、特に多いのは30代後半から40代の患者さんです。月経異常やPMS(月経前症候群)、更年期障害などの症状が相談としては多くなっています。中でもPMSについては、言葉や症状について患者さんに浸透しているなと感じます。一方で、10代ではまだ生理痛を我慢している人が多い印象です。つらい生理痛は子宮内膜症のリスクも高めるので、痛み止めでやり過ごさずに受診してほしいと思います。
開業から20年以上たちますが、患者さんの様子に変化は感じますか?
病状や経過、疑問に思っていることなどについて、患者さんからお話しいただくことが減っているように感じます。そのため、こちらからできるだけ多く質問を投げかけて、返答していただけるように心がけています。私の原動力は患者さんが喜んで、元気になって帰っていってくださることです。ですので、良くなったところ、変わらないところ、悪くなったところなど、どんどんお話していただければうれしく思います。緊張してうまく話せないという方は、医師に聞きたいことや伝えたいことをメモしておくこともお勧めです。メモをお見せいただければ、こちらもわかりやすいのでたいへん助かります。現代の女性は皆さん忙しく働いているので、診療時間を有効に使うためにも、お互いに工夫が必要ですね。
先生自身も出産育児と仕事を両立してこられたそうですね。

はい。開業前は大学病院に勤務していたので、本当に多忙でした。主治医制だったので、患者さんに何かあると夜中でも呼び出されます。一度だけ、生後6ヵ月のわが子を連れて、夜中に病院に駆けつけたこともありました。同じく医師の夫が当直の日で、両親も都合が悪く、預け先がどこにもなかったのです。仕方なく子どもを医局の先輩に預けて、診療をすることに。子どもとその先輩には申し訳ないことをしたなと思います。当時女性医師は、男性医師の2倍も3倍も頑張らないと認められないといわれていた時代です。出産や育児で手術件数が減ることに、焦りを感じたこともありました。しかし、頑張りすぎて腎盂炎を起こし、40度の熱が下がらない経験をしてから、考えを改めました。病院は私がいなくても潰れないけれど、自分の子どもにとって、私は唯一の母だと思ったからです。この経験は同じような状況にある患者さんの診療にも、生かせていると思います。
治療の一歩は「話を聞く」ことから
患者さんとのコミュニケーションで心がけていることについて教えてください。

まずは話をよく聞くことです。女性は男性よりも精神的な問題が体調に現れやすいので、生活に変化がないか、ストレスを感じていることがないかお聞きします。しかし、なかなか自分から話すのは難しいですよね。ですので「何か困っていることはありますか?」とか、眠れないという患者さんには「心配事があると眠れなくなりますよね」と言って、話すきっかけをつくるようにしています。とはいえ、診察を待つ患者さんへの配慮も必要です。一人ひとりの患者さんに丁寧に向き合いつつも、ほかの患者さんの待ち時間が長くならないように考えながら診療を行うように心がけています。また、患者さんへ治療方針を説明する際、複数の選択肢を用意するのも意識していることの一つです。どういった治療を希望するかは患者さん次第なので、患者さんの希望を伺いつつ、医師としての考えを伝えています。
精神的なケアも婦人科では重要だそうですね。
そうですね、非常に大切です。特に近年は、出産年齢が高くなり、更年期症状が出現する年代で、複数のライフイベントが重なるケースが多くあります。ライフイベントとは、仕事で重要なポジションを任されたり、子どもの受験があったり、親の介護が始まったりといったことです。こうしたときに重要なのが家族の理解ですが、患者さん本人の説明では伝わらないこともあります。過去には、ご主人を連れてこられた方もいらっしゃいました。医師が理論的に説明をすることで、ご主人も納得したようです。精神的な要因で更年期症状を悪化させるような人は、真面目で頑張り屋さんなのです。ですので、頑張りすぎて倒れた経験がある私の立場から、何か一つは手を抜くことや、行政の助けを借りることをアドバイスさせていただいています。
病気を診る際にはどういったことに気をつけていますか?

検査一つでも、患者さんに理由を説明し、ご理解いただくようにしています。検査は、診断や治療に必要とはいえ、患者さんの経済的負担を考えるとむやみに行うわけにはいきません。患者さんに不安を与えないよう、検査の目的などをお伝えしてから実施することを心がけています。また、検査の結果、病院での精密検査や診断が必要と判断した際には、紹介もいたします。紹介先は、患者さんのご希望であればどこでも可能です。ただし、急を要する場合は希望に沿えない場合もあります。例えばがんの疑いがあるようなときです。その場合は早く診断することが優先ですので、信頼できる病院をご紹介します。ですが、治療もその病院で行わなければならないわけではありません。病院との相性もあるでしょう。治療はほかの病院で行いたいというのであれば、また当院で紹介状を作成することもできます。何よりも患者さんの意思を大切に、診療を進めたいと思っています。
自分の将来のために「プレコンセプションケア」を
患者さんからは「サッパリとした性格」と言われることが多いそうですが、ご自身ではどう思いますか?

確かに、くよくよするタイプではないと思います。正確性ととっさの判断を求められる手術を多く経験してきたことも、影響しているのかもしれません。わが子に「うちには父親が2人いる」と言われたこともあります(笑)。ただ、人見知りでもあるんです。診察では患者さんとの会話を重視しますが、美容室では寝たふりをしてしまいます。長年お世話になっている美容室で、いつもそっとしておいてくれています。クリニックでは、できるだけ笑顔をと、意識しているのですが、うまくいってないのでしょう。患者さんから「初めは怖いと思ったけど、先生面白いね!」と言われた経験があります。もし私の表情が固いと感じても、怒っているわけではないのでご安心ください。
これから妊娠、出産を迎える若い世代に伝えたいことはありますか?
「プレコンセプションケア」というのを、知ってもらいたいと思います。「プレコンセプションケア」とは、10代の頃から自分の体の仕組みを知り、将来の妊娠に備えて健康維持をしましょうという考え方です。東京都でもこの運動に力を入れています。特に問題なのは、若い世代の痩せ思考です。妊娠しても太らないまま出産をするので、低栄養の赤ちゃんが産まれます。赤ちゃんは産まれてから多くの栄養を摂取することになり、成人病になるリスクが上がるのです。特に糖尿病は遺伝的な要素もあるため、その赤ちゃんの子どもも糖尿病になるリスクが高まり、それがずっと続いていくことになります。若い世代の方には、将来のリスクも知って、自分の体を大事にしてほしいですね。
最後に、読者にメッセージをお願いします。

これからの女性は、自分の健康は人任せにせず、自分で守ることが大切です。年代ごとに気をつけたい病気があるので、インターネットの情報だけで判断せず、定期健診を受けるなり、気になることがあれば受診するなりしてください。患者さんの中には、異変を感じてから半年や1年放っておいたという人も少なくありません。婦人科は受診しにくいと思います。ですが、かかりつけ医を見つけて、困った時にいつでも相談できる場所を用意しておきましょう。
自由診療費用の目安
自由診療とはブライダルチェック:3万円~(選択する検査項目により金額が異なります)
※詳細はクリニックにご連絡ください。