自己流ダイエットが原因となり得る
摂食障害には早めの対処を
ストレスケア日比谷クリニック
(千代田区/日比谷駅)
最終更新日:2024/04/22


- 保険診療
近年、若年層の女性を中心に増えている摂食障害(過食症・拒食症)。摂食障害が起こりやすいのは、「痩せなければいけない」という強い思い込みから、自己流ダイエットをするときだ。「食べない」ことによるダイエットで体が飢餓状態となると、その状態を脱するために、今度は脳が「食べろ」という強力な指令を出す。その結果、大量に食べることになるというケースが大半だそう。「原始的な本能を刺激されるので、理性では太刀打ちできない衝動がきてしまうんです」と話すのは、長年、摂食障害の研究に取り組んできた「ストレスケア日比谷クリニック」の酒井和夫院長。摂食障害にならないための注意点や、ダイエットの必要がある際の考え方などについて、詳しく解説してもらった。
(取材日2024年3月12日)
目次
摂食障害の原因の一つは間違った自己流ダイエット。一人で悩まず、一緒に適切な方法を考えていきたい
- Q摂食障害とは、具体的にどのような疾患なのでしょうか?
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A
▲摂食障害についてわかりやすく説明してくれる酒井院長
摂食障害は、過食症と拒食症の2つに大別されます。文字通り過食症は食べ過ぎて嘔吐を繰り返す症状で、拒食症は食事を受けつけられず極端な体重低下などが見られる症状です。近年は過食症の割合が圧倒的に多く、9対1くらいの割合で過食症に悩む患者さんが多いですね。実は最初に拒食症を患い、体が飢餓状態に陥った反動で過食症に転じてしまうというケースがかなり多いんです。つまり摂食障害は、拒食症に始まり過食症に至るというプロセス全体を示している言葉だと理解していただければいいでしょう。特に摂食障害になりやすいのは、激しいダイエットをしがちな10〜20代女性です。
- Qダイエットがもとで摂食障害になりやすいのはなぜでしょうか?
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A
▲患者のさまざまな悩みに寄り添ってくれる
短期間で大幅な減量に成功したとしても、その体重を維持することは困難です。急激に痩せていく身体を脳が「飢餓状態だ」と判断し、生命を維持するために大きな衝動をもたらすのです。日常感じる食欲の何倍もの衝動が本能を刺激するので、理性で抗うのは簡単ではありません。エネルギーとして即効性の高い糖や炭水化物を次々と摂取してしまい、摂取のご褒美にと脳がエンドルフィンという脳内麻薬を出すので、食べることに快感が伴うのです。過食後は「太らないように」と嘔吐をしますが、この時もエンドルフィンが放出され、吐くことにも快楽を感じてしまいます。結果、過食と嘔吐の依存状態になり、自分だけでは抜け出せなくなってしまうのです。
- Qどのようなことが原因で摂食障害が発症されるのでしょうか?
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A
▲ダイエットは自己流で始めるのではなく専門家に一度相談を
ダイエットをしなくてはという強い思い込みが、摂食障害の根底にあります。誰かのちょっとした「太った?」という一言や、恋人からの「もっと痩せたほうが好き」といった言葉がきっかけとなり得ます。未だ「痩せている=美しい」という風潮は根強く、芸能界志望の方がオーディション前に一気に体重を減らそうとして発症するケースもよく見受けられます。摂食障害の患者さんは真面目で努力家の方が多く、厳しいダイエットでもやり遂げてしまう傾向があります。この成功体験が摂食障害の要因となることが多いです。最初の方法で痩せたからと、意志の力のみで体重を維持しようとするとある時、理性で抗えない本能的な食欲が湧き上がってくるのです。
- Qどのようなタイミングで受診するのが良いのでしょうか?
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A
▲一人で悩みを抱え込まず、早めにクリニックを受診しよう
自己流のダイエットが摂食障害のきっかけになるケースが多いため、ダイエットを行う前に相談に来ていただくのが良いと思います。お仕事で体型を整える必要がある場合も、ぜひ医師と一緒に計画を立てることをお勧めします。「早く痩せなくては」と焦る気持ちもあるでしょう。しかし重要なのは、一人で抱え込まないことです。気持ちが安定すると、食べることを楽しみながら健康的なダイエットに取り組めるようになるものです。もちろん過食が始まってからでも十分に対処ができます。何年も摂食障害を抱えていた患者さんで、良くなられている方もいらっしゃいます。摂食障害は不安やうつを伴うことが多いので、どうぞ早めに受診してみてください。
- Qこちらではどのような摂食障害の診療を行っていますか?
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A
▲患者の生活背景について丁寧にヒアリングしながら診療を行う
当院では、患者さんの訴える症状についてだけでなく、仕事や日常生活のことを含め、全体的にお話をお伺いし、治療に役立てています。本当につらいと感じていることは、ご本人が自覚していないところにあることも多いです。ふと思ったことや何となく話してみようと思ったことなども、ぜひお聞かせください。患者さんが話されることの中に、より良い治療のヒントがあると思っています。場合によっては心理テストも併せて行い、その方にフィットする治療法を探っていきます。うつや不安などの症状が見られる場合は、それに対するお薬を処方し、心と体の負担を考慮しながら治療を行います。まずは気軽にご相談ください。