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西松 能子 理事長の独自取材記事

あいクリニック神田

(千代田区/神田駅)

最終更新日:2021/10/12

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神田駅西口すぐそばに立つビル5階にある「あいクリニック神田」。ここは西松能子(よしこ)先生が理事長を務める心療内科・精神科のクリニックだ。西松先生は、日本精神神経学会精神科専門医として30年以上にわたって心の病に苦しむ患者たちと向き合ってきたベテランドクター。札幌から鹿児島まで全国各地から患者が訪れるという同院では、精神疾患の中でも、うつ病や適応障害の治療を得意としている。病気を治すには、患者本人が病気を理解することが大切と考える西松先生は、疾患や障害について学ぶ「こころ塾」を開催。女性休職者に特化した復職支援にも力を入れている。診療の特徴や同院ならではの取り組みについて話を聞いた。

(取材日2021年3月16日)

症状を引き起こしている本質をしっかり見極める

患者さんはどのような方が多いのでしょうか。

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都内にお住まいの方が約半数ですが、千葉、神奈川などの近隣県、さらには札幌や鹿児島といった遠方からも来られています。年齢的には10代20代の若年層がほぼ半数。紹介患者は7割を占めており、病院やクリニックからの紹介もあります。症状では適応障害でお悩みの方が特に多いです。症状はPTSD(心的外傷後ストレス障害)だけれども誰かに怒られたなど明確なトラウマがなく長引いているという方がいらっしゃいます。会社で過大な業務量を抱えて上司に訴えることもできず、会社に着くと涙が出てくるとか、そういった症状を抱えている人は、心因となっている出来事への対処が必要なのです。こうした症状の方は精神科領域では軽症群といわれるのですが、治療は簡単ではなく、多様な対応が必要となります。

最近の患者さんの傾向についてお聞きします。

初診時に発達障害と診断される人が増えてきています。発達障害の中にはいくつかの類型概念がありますが、何らかの特性を持っている人がこれらの概念に当てはまるということで診断されるケースが多いのです。また、この1年の社会状況の中で、漠然とした不安を募らせている人が多いですね。人に会えない、外に出かけられないといった閉塞感の中、いろいろなことをうつうつと想像して不安を募らせています。まるで塵が積もるように不安が心の中にたまっていき、そうした不安はうつ病の一つのきっかけにもなります。誰かに自分の気持ちを話すだけでも、少しは不安が解消されるのではないかと思います。

診療ではどんなことに注意していますか?

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まずは身体疾患の有無の確認です。例えば甲状腺機能低下症の場合、だるい、無気力といった「うつ」によく似た症状が見られ、「うつ病」と診断されてしまうと、本来必要な治療が受けられなくなってしまいます。医師である以上、自分の専門分野でなくても体の疾患を見逃すことは恥ずかしいと考えています。患者さんの症状を引き起こしている本質は何か、しっかり見極めるようにしています。診療においては、適応障害、パニック障害、うつ病、摂食障害、睡眠障害といった症状に応じて臨床心理士と協働して、認知行動療法やペインマネジメント、自律訓練法のほか、病状に合ったさまざまなアプローチを薬物療法とともに提供しております。また昨年から再診の患者さんに限って電話診療も行っています。

疾患を理解して患者自ら主体的に治す意識が大切

スタッフが多いと聞きました。

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スタッフは、医師が10人、臨床心理士・公認心理士が21人、さらに看護師、精神保健福祉士、社会保険労務士などを合わせると、常勤・非常勤含めて48人に上ります。医師の中にはPTSDや児童期精神医学、青年期精神医学の分野で高い専門性を持つ者もいます。スタッフはみんな意欲的で、患者さんのことをとても大切に思っています。患者さんが受診されたらすぐにその方の診療状況をスタッフが共有することも大切です。当院では電子カルテシステムを活用して、患者さんの治療状況をリアルタイムに確認しています。診察では患者さんと目を合わせて話すことが何よりも重要ですが、電子カルテだとパソコンに目を奪われがちになるので、そうならないよう心がけています。

こちらでは「こころ塾」という講座を開催しているようですが、どういった取り組みですか?

心理教育や疾患教育と言われるもので、患者さんご自身の疾患や障害について医師や臨床心理士が説明します。診察を受けているだけでは、なかなかご自分の病気について系統的な理解が深まりません。そこで、疾患に合わせて何回かに分け、医師や臨床心理士が一対一で症状を詳しく説明しています。ここで重要なのは、病気についての理解はもちろん「病気を自分のものとして、自分で治していく」意識を持っていただくことです。患者さんご自身に「病気の主人」になっていただくための一つのツールとして「こころ塾」を用意しています。

女性休職者の復職支援にも力を入れているようですね。

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復職支援は通常、男女共通のプログラムを提供しますが、実際には、働く女性にとっての最大のストレス要因は人間関係で、男性とは大きく異なるとの調査結果が出ています。また、女性ならではの悩みについては異性がいると発言しにくいという声も多々あります。そこで当院では女性だけの復職支援プログラムを実施しています。朝9時から夕方4時までグループワークに参加しながら、生活リズムを徐々に取り戻していきます。この中で女性休職者の特性や休職に至るストレス要因、復職後の結果を分析しています。休暇をうまく使ってどう自分を長持ちさせるか、燃え尽きない程度にどう仕事をやりくりしていくか、といった社会と上手に「戦う」ことも重要になっていくと感じています。

患者の今を見て患者の未来に手を差し伸べる仕事

精神科の医師をめざしたきっかけを教えてください。

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もとともは霊長類の生態学に興味があったんです。たまたま医学部に進学し、産婦人科や救急医療に憧れたこともありましたが、今も指導してくださっている精神科の先生に「君は精神科が向いているよ」と言われて。そこから精神科の道に進もうと思ったのです。その後、日本医科大学精神医学教室講師や、ニューヨークのコーネル大学ホワイトプレイン病院客員教授などを務めました。2002年以降、立正大学心理学部で精神医学を教えるようになって臨床の場が必要となり、2003年に当院を神田北口に開設し、2012年にここに移転しました。

先生は仕事にとてもやりがいを得ていると感じます。

心の傷はどんな高性能なエックス線をもってしても発見できるものではありません。患者さんが話される症状について、過去の類似ケースを検証しながら、情報をパズルのように組み合わせて診断を下す。それが適切であれば、患者さんは快方に向かうはずです。この仕事は当初は自ら選んだわけではなかったのですが、今ではとても好きな仕事ですし、やりがいがある職業だと思っています。

心の病を持つ人への接し方についてアドバイスはありますか?

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病気について正しい知識を持ち、ご本人のつらさに共感することが大切です。その一方で、その人の意見に巻き込まれすぎないことも大切です。もし相手の口から自死願望が出たときは、そう思った事情についてゆっくり耳を傾けます。サポートする側は、意外に多く話していることが多いので、3分でいいから口を挟まず相手の話を聞くことが大切です。そして、相手と程よい距離を持って、その人のすてきなところを見つけるようにしてください。また、決して自分だけでケアしようと思わずに、「誰か分担できる人はいないか」と考えてみることです。例えば、家族の誰かが心を病んだときは介護のヘルパーさんやケアマネジャー、会社の同僚であれば健康相談室や保健師といった存在に目を向けてみてください。

最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

私たちの仕事は、患者さんの今を診て、患者さんの未来に手を差し伸べる仕事です。先ほど申し上げたように、医師や臨床心理士が病気を治すというよりも、患者さんの病気の主人は患者さんだと考えています。ですから、患者さんご自身にカルテを見ていただくこともありますし、服用する薬の処方箋を確認してもらうようにしています。眠れない、食べられない、不安で仕方がない、落ち込んでいる、人間関係に苦しんでいる。どんなことでも一人で悩まずにご相談ください。

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